for promise
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来たる12月30日。
いつも通り夕飯を食べて、いつも通り虚退治の仕事をした。
呼んでもないのに実体化した天狼に『集中しろ』と小言を言われてしまったが。
いや。このあとのことを考えたら集中なんて無理だ。
虚化した魂魄には悪いが、体に染み付いた事務作業のように退治してしまった。
もちろん怪我はない。
寒いので寄り道せず浦原商店へ帰れば、居間で年末の特番を見ているジン太と雨に「おかえり」と声を掛けられた。
ただいま・と返事をすれば、鉄裁に「お風呂空いておりますぞ」と促される。
ぼんやりしたままいつも通り風呂に入り、髪を乾かせば時刻は23時40分だった。
もうすぐ日付が変わる。
目の前にあるラッピングされたプレゼントと睨めっこしながら、名無しは頭を抱えた。
いや、物は用意した。浦原が欲しいものかどうかはさておき。
言葉に含まれた意味を理解できないほど、子供でもない。
確かに疎いといえば疎い。経験がないのだから。
そもそもハッキリとした好意を返事もしていないのに、この選択肢もどうなんだ。
失礼に当たらないだろうか。
「……………とりあえず、渡しに行こう」
まだこの時間帯なら起きているはず。
寝ていたら日を改めよう。
ラッピングされたプレゼントを抱えて、名無しは静かに自室を出ていった。
for promise#17
マユリから返ってきた回答書を読み終わり、ふと壁掛け時計を見上げればもうすぐ日付が変わる時間帯だった。
もう何歳になるのか数えるのも馬鹿らしくなる。
以前名無しが誕生日ケーキを作ろうとした時に何歳なのかと尋ねてきたが、実年齢を言ったらロウソクを立てるのを諦めていたのは面白かった。
不意に、控えめに響くノックの音。
何となしに返事をすれば、ドアの隙間から顔を出してくる人物。
「おやぁ。どしたんっスか、名無しサン」
「…あの、いや……えぇっと、」
珍しく歯切れが悪い。
視線があちこち彷徨って、挙動不審にも程がある。
隠しているつもりなのか、背中から見えているラッピングに思わず頬が綻んだ。
黙って手招きをすれば「あの、お邪魔します」と遠慮がちに言う彼女。
座椅子に座っていたボクの隣に、少し居心地悪そうに座り込んだ。
「浦原さん、その、お誕生日おめでとうございます。えぇっと、粗品ですが…」
テーブルの上にガサリと音を立てて置かれるのは、リボンで丁寧にラッピングされた包み。
「開けていいんっスか?」と尋ねれば、気恥ずかしそうに彼女はひとつ頷いた。
丁寧に開ければ、男性物のマフラーが入っている。
「その、欲しそうな物が検討つかなくて…」と申し訳なさそうに名無しが俯くのを見て、ボクは思わず苦笑した。
「なんで謝るんっスかぁ。名無しサンが一生懸命考えて選んでくださった物なら何でも嬉しいっスよ」
これは本心だ。
なんならこう、永久保存できるならしておきたいくらいだ。
まぁマフラーなら有難く使わせてもらうのだが、それでも何だか勿体無い気がした。
それでも彼女の表情は曇ったままだ。
何か、あるのだろうか?
「…その、リクエストが、」
ゴニョゴニョと口篭る彼女の頬がじわじわと赤くなる。
……あぁ、なるほど。
「えぇ〜、叶えてくれるんっスか?」
冗談半分で笑えば、一瞬の沈黙。
大きく息をひとつ吸って、おもむろに彼女が掴んだものは先程ボクがといたラッピング用のリボンだった。
首に巻かれた、少し不格好なちょうちょ結び。
面白いくらいに名無しの顔は真っ赤だった。
「へ………返品は、出来ませんし、面倒くさい性格ですし!それで、いいなら……その、」
彼女の言葉が続けられることはなかった。
というより、ボクが遮ってしまった。
「…あー、それ。どこで教えて貰ったんっスか。」
「そ、それ?」
「リボン。」
「………………リサさんと乱菊さん」
あ、なるほど。
一瞬で理解した。
そういえば先日女性死神協会で忘年会をしたと言っていた。
「いいんっスか?名無しサンから見たらボクなんて超歳上っスよ。」
「誕生日ケーキ作る時に教えてもらいましたから」
「研究大好きですし」
「よく知ってます」
「作っちゃあイケナイものとか作って皆さん振り回しましたし」
「ははは、よーく知ってます」
「返品するどころか、名無しサンが嫌いになっても多分ボクは手放さないでしょうし」
「の、望むところですよ」
「性欲凄いですし」
「え、それは人並みがいいです」
「えぇぇー…っていうか、名無しサン。人並みがどれくらいなんか知らないクセにィ」
「………………いや。絶対浦原さんが基準じゃないのは分かりますよ」
隣でジト目で見られるが、それすら可愛い。
こんな可愛い子に対して我慢しろ・というのはそれこそ生殺しだ。
よく今日まで我慢したものだ、と自分を褒め称えたくなった。
「リボンなだけに腹を括る、っスか?」
「あぁ、上手いこと言いますね。座布団一枚です」
そう言って彼女は一頻り笑った後、丁寧に床へ三指をついた。
「その、改めまして、よろしくお願いします」
はにかんだように笑う名無しを見て、ボクは至上の喜び・というものを初めて感じた。
いつも通り夕飯を食べて、いつも通り虚退治の仕事をした。
呼んでもないのに実体化した天狼に『集中しろ』と小言を言われてしまったが。
いや。このあとのことを考えたら集中なんて無理だ。
虚化した魂魄には悪いが、体に染み付いた事務作業のように退治してしまった。
もちろん怪我はない。
寒いので寄り道せず浦原商店へ帰れば、居間で年末の特番を見ているジン太と雨に「おかえり」と声を掛けられた。
ただいま・と返事をすれば、鉄裁に「お風呂空いておりますぞ」と促される。
ぼんやりしたままいつも通り風呂に入り、髪を乾かせば時刻は23時40分だった。
もうすぐ日付が変わる。
目の前にあるラッピングされたプレゼントと睨めっこしながら、名無しは頭を抱えた。
いや、物は用意した。浦原が欲しいものかどうかはさておき。
言葉に含まれた意味を理解できないほど、子供でもない。
確かに疎いといえば疎い。経験がないのだから。
そもそもハッキリとした好意を返事もしていないのに、この選択肢もどうなんだ。
失礼に当たらないだろうか。
「……………とりあえず、渡しに行こう」
まだこの時間帯なら起きているはず。
寝ていたら日を改めよう。
ラッピングされたプレゼントを抱えて、名無しは静かに自室を出ていった。
for promise#17
マユリから返ってきた回答書を読み終わり、ふと壁掛け時計を見上げればもうすぐ日付が変わる時間帯だった。
もう何歳になるのか数えるのも馬鹿らしくなる。
以前名無しが誕生日ケーキを作ろうとした時に何歳なのかと尋ねてきたが、実年齢を言ったらロウソクを立てるのを諦めていたのは面白かった。
不意に、控えめに響くノックの音。
何となしに返事をすれば、ドアの隙間から顔を出してくる人物。
「おやぁ。どしたんっスか、名無しサン」
「…あの、いや……えぇっと、」
珍しく歯切れが悪い。
視線があちこち彷徨って、挙動不審にも程がある。
隠しているつもりなのか、背中から見えているラッピングに思わず頬が綻んだ。
黙って手招きをすれば「あの、お邪魔します」と遠慮がちに言う彼女。
座椅子に座っていたボクの隣に、少し居心地悪そうに座り込んだ。
「浦原さん、その、お誕生日おめでとうございます。えぇっと、粗品ですが…」
テーブルの上にガサリと音を立てて置かれるのは、リボンで丁寧にラッピングされた包み。
「開けていいんっスか?」と尋ねれば、気恥ずかしそうに彼女はひとつ頷いた。
丁寧に開ければ、男性物のマフラーが入っている。
「その、欲しそうな物が検討つかなくて…」と申し訳なさそうに名無しが俯くのを見て、ボクは思わず苦笑した。
「なんで謝るんっスかぁ。名無しサンが一生懸命考えて選んでくださった物なら何でも嬉しいっスよ」
これは本心だ。
なんならこう、永久保存できるならしておきたいくらいだ。
まぁマフラーなら有難く使わせてもらうのだが、それでも何だか勿体無い気がした。
それでも彼女の表情は曇ったままだ。
何か、あるのだろうか?
「…その、リクエストが、」
ゴニョゴニョと口篭る彼女の頬がじわじわと赤くなる。
……あぁ、なるほど。
「えぇ〜、叶えてくれるんっスか?」
冗談半分で笑えば、一瞬の沈黙。
大きく息をひとつ吸って、おもむろに彼女が掴んだものは先程ボクがといたラッピング用のリボンだった。
首に巻かれた、少し不格好なちょうちょ結び。
面白いくらいに名無しの顔は真っ赤だった。
「へ………返品は、出来ませんし、面倒くさい性格ですし!それで、いいなら……その、」
彼女の言葉が続けられることはなかった。
というより、ボクが遮ってしまった。
「…あー、それ。どこで教えて貰ったんっスか。」
「そ、それ?」
「リボン。」
「………………リサさんと乱菊さん」
あ、なるほど。
一瞬で理解した。
そういえば先日女性死神協会で忘年会をしたと言っていた。
「いいんっスか?名無しサンから見たらボクなんて超歳上っスよ。」
「誕生日ケーキ作る時に教えてもらいましたから」
「研究大好きですし」
「よく知ってます」
「作っちゃあイケナイものとか作って皆さん振り回しましたし」
「ははは、よーく知ってます」
「返品するどころか、名無しサンが嫌いになっても多分ボクは手放さないでしょうし」
「の、望むところですよ」
「性欲凄いですし」
「え、それは人並みがいいです」
「えぇぇー…っていうか、名無しサン。人並みがどれくらいなんか知らないクセにィ」
「………………いや。絶対浦原さんが基準じゃないのは分かりますよ」
隣でジト目で見られるが、それすら可愛い。
こんな可愛い子に対して我慢しろ・というのはそれこそ生殺しだ。
よく今日まで我慢したものだ、と自分を褒め称えたくなった。
「リボンなだけに腹を括る、っスか?」
「あぁ、上手いこと言いますね。座布団一枚です」
そう言って彼女は一頻り笑った後、丁寧に床へ三指をついた。
「その、改めまして、よろしくお願いします」
はにかんだように笑う名無しを見て、ボクは至上の喜び・というものを初めて感じた。