for promise
名前変換
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
冬休み。
粉雪がちらつく、灰色の空の下。
コタツで寛いでいたら、徹夜明けの浦原がフラっと・それこそ幽霊のようにやってきた。
「浦原さん、あったかいお茶でも飲まれますか?」
「んんー…それより充電…」
急須にいれたばかりのお茶を見せるが、いつもの徹夜明けにも増して眠そうな彼は名無しの真後ろに座り込んだ。
背中に寄りかかる成人男性の体重。
暖を取るように腹部周りに手を回され、完全に身動きができなくなった。
「…あの。浦原さん、これじゃあ動けないんですけど」
「…………すぅ…」
抗議するより早く、名無しの背中から寝息が聞こえてくる。
わざとか・と一瞬疑うが、どうやら本当に寝ているらしい。
諦めたように小さく息をついて、なんとか拘束を解いて抜け出す。
コタツにもたれ掛かるように眠る体勢になった浦原を…さて、どうしてやろうか。
このままコタツで寝かせていれば風邪を引く。
かと言って、浦原商店一の力持ちである鉄裁は仕入れに出かけているし。
本日何度目かの息をついて、諦めたように二階から持って降りてきたのは名無し自身の布団一式。
居間だから多少人の出入りはあるだろうが、このままコタツで寝かせているよりはマシだろう。
「ぐ……重い…」
思わずくぐもった声が出てしまう程には浦原の身体は重かった。
おおよそ70kgくらいの体重はあるのだ。それに加えて背丈もある。
すぐ側に布団を敷いて寝かせるのも一苦労だった。
(あぁ、筋トレしないといけないな)
少々寝苦しそうな格好ではあるが、なんとか布団の中で寝かせることに成功した。
というか、これだけ身体を動かしても起きないのは少し異常事態だ。どれだけ眠かったんだろう。
「…無理は体に毒ですよ。」
冬用布団を肩まで掛ければ少しは寒さも和らぐだろう。
問題はいつ頃くらいに彼が目が覚めるか。
だが、暫くは彼女自身、布団を使うことはなさそうだ。
けたたましいアラーム音を放つ伝令神機を手に取れば、新しい司令が飛んできた。
空座町……ではないが、近隣町の担当である死神からの要請だ。
「巨大虚が三体。あらら…。
はいはい、今から行きますよ」
悟魂手甲で義骸を脱げば、畳の上へ無造作に倒れ込む仮の身体。
するりと窓から抜け出して振り向けば、布団で泥のように眠る浦原の姿。
それがなんだか珍しすぎる光景で、思わず笑みが零れた。
「いってきます」
***
どれくらい、寝ただろう。
ふわふわと浮上する意識の反面、身体は鉛のように重たい。
暫く根を詰めて研究室に篭っていたせいか、久しぶりの徹夜は体に堪えていた。
起きている、けど起きられない。
曖昧な状態がしばらく続いていると、物音が不意に聞こえた。
「うぅ…寒いし疲れたぁ…」
ザリ、と聞こえてきたのは草鞋が擦れる音。
それと名無しの独り言。
(あぁ、仕事してきたんっスかね、)
まだ半覚醒くらいの頭でぼんやりと考える。
冬の空気を連れてきたのか、彼女が横を通ったあとは僅かにひんやりとした空気が頬を掠めた。
「浦原さん…は、まだ寝てるかぁ」
肩までそっと布団を掛け直される感覚。
それと同時にふわりと香ってくる名無しの匂い。
冷えた指先が眠った子供を慈しむように、そっと髪を繰り返し撫でる。
それがあまりにも気持ちが良くて、浮きかけていた意識が徐々に微睡んでいく。
とけていく思考を止めたのは、不意に唇に触れた感触。
一瞬だけ、掠めるように。
指先とは違う生暖かい体温の、柔らかな『何か』。
「…………………この間の、仕返しです」
ボソボソと呟く声は、部屋が無音でなければ聞こえなかっただろう。
逃げるように遠ざかっていく足音に耳を傾けながら、ゆっくりと重い瞼をボクは上げた。
――どうしよう。これは、嬉しい予想外だ。
だってまさか、そんな。
彼女からなんて。
あぁ、どうしよう。頬が熱い。
女性からの口付けで頬を染めるなんて、初めての経験だった。
(これは、生殺しでは)
濡れた角砂糖のように、ほろりほろりと崩されていく理性。
我慢の限界まで、あと少し。
for promise#15
寝かされていた布団が名無しの物で、
あまりの嬉しさと、肺いっぱいに彼女の匂いを吸い込んで浦原が悶絶するのは、
あともう数秒後の話。
粉雪がちらつく、灰色の空の下。
コタツで寛いでいたら、徹夜明けの浦原がフラっと・それこそ幽霊のようにやってきた。
「浦原さん、あったかいお茶でも飲まれますか?」
「んんー…それより充電…」
急須にいれたばかりのお茶を見せるが、いつもの徹夜明けにも増して眠そうな彼は名無しの真後ろに座り込んだ。
背中に寄りかかる成人男性の体重。
暖を取るように腹部周りに手を回され、完全に身動きができなくなった。
「…あの。浦原さん、これじゃあ動けないんですけど」
「…………すぅ…」
抗議するより早く、名無しの背中から寝息が聞こえてくる。
わざとか・と一瞬疑うが、どうやら本当に寝ているらしい。
諦めたように小さく息をついて、なんとか拘束を解いて抜け出す。
コタツにもたれ掛かるように眠る体勢になった浦原を…さて、どうしてやろうか。
このままコタツで寝かせていれば風邪を引く。
かと言って、浦原商店一の力持ちである鉄裁は仕入れに出かけているし。
本日何度目かの息をついて、諦めたように二階から持って降りてきたのは名無し自身の布団一式。
居間だから多少人の出入りはあるだろうが、このままコタツで寝かせているよりはマシだろう。
「ぐ……重い…」
思わずくぐもった声が出てしまう程には浦原の身体は重かった。
おおよそ70kgくらいの体重はあるのだ。それに加えて背丈もある。
すぐ側に布団を敷いて寝かせるのも一苦労だった。
(あぁ、筋トレしないといけないな)
少々寝苦しそうな格好ではあるが、なんとか布団の中で寝かせることに成功した。
というか、これだけ身体を動かしても起きないのは少し異常事態だ。どれだけ眠かったんだろう。
「…無理は体に毒ですよ。」
冬用布団を肩まで掛ければ少しは寒さも和らぐだろう。
問題はいつ頃くらいに彼が目が覚めるか。
だが、暫くは彼女自身、布団を使うことはなさそうだ。
けたたましいアラーム音を放つ伝令神機を手に取れば、新しい司令が飛んできた。
空座町……ではないが、近隣町の担当である死神からの要請だ。
「巨大虚が三体。あらら…。
はいはい、今から行きますよ」
悟魂手甲で義骸を脱げば、畳の上へ無造作に倒れ込む仮の身体。
するりと窓から抜け出して振り向けば、布団で泥のように眠る浦原の姿。
それがなんだか珍しすぎる光景で、思わず笑みが零れた。
「いってきます」
***
どれくらい、寝ただろう。
ふわふわと浮上する意識の反面、身体は鉛のように重たい。
暫く根を詰めて研究室に篭っていたせいか、久しぶりの徹夜は体に堪えていた。
起きている、けど起きられない。
曖昧な状態がしばらく続いていると、物音が不意に聞こえた。
「うぅ…寒いし疲れたぁ…」
ザリ、と聞こえてきたのは草鞋が擦れる音。
それと名無しの独り言。
(あぁ、仕事してきたんっスかね、)
まだ半覚醒くらいの頭でぼんやりと考える。
冬の空気を連れてきたのか、彼女が横を通ったあとは僅かにひんやりとした空気が頬を掠めた。
「浦原さん…は、まだ寝てるかぁ」
肩までそっと布団を掛け直される感覚。
それと同時にふわりと香ってくる名無しの匂い。
冷えた指先が眠った子供を慈しむように、そっと髪を繰り返し撫でる。
それがあまりにも気持ちが良くて、浮きかけていた意識が徐々に微睡んでいく。
とけていく思考を止めたのは、不意に唇に触れた感触。
一瞬だけ、掠めるように。
指先とは違う生暖かい体温の、柔らかな『何か』。
「…………………この間の、仕返しです」
ボソボソと呟く声は、部屋が無音でなければ聞こえなかっただろう。
逃げるように遠ざかっていく足音に耳を傾けながら、ゆっくりと重い瞼をボクは上げた。
――どうしよう。これは、嬉しい予想外だ。
だってまさか、そんな。
彼女からなんて。
あぁ、どうしよう。頬が熱い。
女性からの口付けで頬を染めるなんて、初めての経験だった。
(これは、生殺しでは)
濡れた角砂糖のように、ほろりほろりと崩されていく理性。
我慢の限界まで、あと少し。
for promise#15
寝かされていた布団が名無しの物で、
あまりの嬉しさと、肺いっぱいに彼女の匂いを吸い込んで浦原が悶絶するのは、
あともう数秒後の話。