for promise
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『我慢するのをやめようかなぁ、と思いまして』
そんな宣言をされてから一週間が経った。
「う…浦原さん、近いです」
「いやぁ、だって寒いじゃないっスか」
「コタツ入るなら他のところ空いているでしょう!!」
for promise#14
街路樹の欅もすっかり落葉し、寒々しい枝を曇り空へ伸ばす季節になった。
浦原商店でも毎年恒例通り炬燵を出したのだが。
「もう、わざわざ隣に入って来なくてもいいじゃないですか」
「その方があったかいんっスもん」
頬が火照っているのは、コタツのせいじゃない。
ここ一週間、心拍数が上がりっぱなしだ。
原因は分かっている。
目の前でにこにこと機嫌よく笑っている店主のせいだ。
期末テストもひと段落ついた土曜日のこと。
マユリへの報告書を作っていると、暇を持て余した浦原がコタツに入ってきた・というわけだ。
こちらが戸惑ってしまう程に、彼からのスキンシップは遠慮なしだった。
もちろん、鉄裁や雨、ジン太がいるところではそこまでベタベタはしないが、二人になった途端これだ。
「もうすぐクリスマスっスねぇ」
「そうですね。今年は何を作るか考えておかなきゃ」
テレビではイルミネーションの特集番組がずっと流れている。
ことある事に流れてくるクリスマスソング。
色とりどりの飾り付けが施された街中は、歩いているだけでも浮き足立ってくる。
「えぇ〜、なんかこう恋人らしいことしないんっスか?」
「し、しません。クリスマスは家族と過ごすものですよ。
…っていうか、その…恋人じゃ、ない、ですし、」
ずきり、と少しだけ胸の奥が痛んだ。
僅かな罪悪感と持て余している恥ずかしさで、言葉尻が窄んでいく名無しの声。
今日で顔に火がついたような熱を持つのは何度目だろう。
ストレートな好意を受け止めきれず、ただただ戸惑うばかりだった。
(だって、こんな気持ち、)
嬉しさと、怖さが混じりあって、頭の中がグシャグシャになる。
あたたかく柔らかい、家族愛としての愛情は祖父母がまだ健在だった頃にも散々受けた。
もちろん、ここに来てからも。
けれど、
(人を好きになるのが、こんなにも怖いなんて)
愛が永遠なんて保証はない。
家族間での無償の愛ですら時には残酷な牙になる。
それは名無し自身、嫌というほど身に染みていた。
「ま、名無しサンが腹を括るのをボクはのんびり待ちますからぁ」
頬杖をつきながら目の前の男はにこにこと上機嫌で笑う。
奇特、だと思う。
こんなにも残酷な言葉を吐いているというのに、それに対して全く動じることがないのだから。
「…なんというか、浦原さん改めて思いますけど、気長ですね」
「そりゃあ百年以上前から好きな子相手っスから」
「………………へ?」
あまりに予想外な返答に思わず間抜けな声が出てしまう名無し。
百年以上前・ということは、尸魂界にいた頃からだ。
予想以上に前から好意を寄せられているという事実に、嬉しいやら恥ずかしいやら申し訳ないやら。
複雑な感情で、何だか胃が痛くなってくる。
「そりゃ名無しサンの色んなこと踏まえたら、中々家族から恋人へ昇格は大変だと思いますけど。まぁ手放す気は更々ないっスからいつまでも待てるというか」
そう、浦原は知っている。
ここに来るまでの彼女の『今まで』を。
肉親に捨てられた時も、幸福に溢れた穏やかな時も、別離の時も、霊王の片鱗たる『彼』と出会った時も、全部全部。
優しい彼のことだ。
きっとそれを様々な理由を踏まえて考えてくれた結果だろう。
(全部、私のため、)
そう自覚すると何とも言い表せない感情が、腹の底から間欠泉のように吹き出てくる。
有難い反面、やはり申し訳なさは拭いきれなかったが。
「まぁ今の状況も楽しいと言えば、楽しいっスけど」
「た、楽しい?」
「そっス。ほら、ボクから好きになった子は名無しサンが初めてですし。」
好きな子を口説き落とすのも、悪くないな。って。
とろりと目元を綻ばせて彼は笑う。
情報量が、多すぎる。
バクバクと音を立てる心臓は全力疾走した後かのように少し苦しかった。
幸福感と罪悪感が比例して胸の内を埋め尽くす。
あぁ一歩踏み出せない自分が、恨めしい。
「…待ってください、浦原さん。そろそろ心臓爆発しそうなんでちょっと黙ってください。」
「えー。」
クスクスと目の前で笑う、底意地の悪い男。
きっと浦原は恥ずかしがっている名無しを見ているだけでも楽しいのだろう。
(もう少しだけ。もう少しだけ、待ってください)
あぁ、この世に神様がいるならお願いしたいくらいだ。
どうかどうか、彼のために、私のために、一歩踏み出す勇気を。
そんな宣言をされてから一週間が経った。
「う…浦原さん、近いです」
「いやぁ、だって寒いじゃないっスか」
「コタツ入るなら他のところ空いているでしょう!!」
for promise#14
街路樹の欅もすっかり落葉し、寒々しい枝を曇り空へ伸ばす季節になった。
浦原商店でも毎年恒例通り炬燵を出したのだが。
「もう、わざわざ隣に入って来なくてもいいじゃないですか」
「その方があったかいんっスもん」
頬が火照っているのは、コタツのせいじゃない。
ここ一週間、心拍数が上がりっぱなしだ。
原因は分かっている。
目の前でにこにこと機嫌よく笑っている店主のせいだ。
期末テストもひと段落ついた土曜日のこと。
マユリへの報告書を作っていると、暇を持て余した浦原がコタツに入ってきた・というわけだ。
こちらが戸惑ってしまう程に、彼からのスキンシップは遠慮なしだった。
もちろん、鉄裁や雨、ジン太がいるところではそこまでベタベタはしないが、二人になった途端これだ。
「もうすぐクリスマスっスねぇ」
「そうですね。今年は何を作るか考えておかなきゃ」
テレビではイルミネーションの特集番組がずっと流れている。
ことある事に流れてくるクリスマスソング。
色とりどりの飾り付けが施された街中は、歩いているだけでも浮き足立ってくる。
「えぇ〜、なんかこう恋人らしいことしないんっスか?」
「し、しません。クリスマスは家族と過ごすものですよ。
…っていうか、その…恋人じゃ、ない、ですし、」
ずきり、と少しだけ胸の奥が痛んだ。
僅かな罪悪感と持て余している恥ずかしさで、言葉尻が窄んでいく名無しの声。
今日で顔に火がついたような熱を持つのは何度目だろう。
ストレートな好意を受け止めきれず、ただただ戸惑うばかりだった。
(だって、こんな気持ち、)
嬉しさと、怖さが混じりあって、頭の中がグシャグシャになる。
あたたかく柔らかい、家族愛としての愛情は祖父母がまだ健在だった頃にも散々受けた。
もちろん、ここに来てからも。
けれど、
(人を好きになるのが、こんなにも怖いなんて)
愛が永遠なんて保証はない。
家族間での無償の愛ですら時には残酷な牙になる。
それは名無し自身、嫌というほど身に染みていた。
「ま、名無しサンが腹を括るのをボクはのんびり待ちますからぁ」
頬杖をつきながら目の前の男はにこにこと上機嫌で笑う。
奇特、だと思う。
こんなにも残酷な言葉を吐いているというのに、それに対して全く動じることがないのだから。
「…なんというか、浦原さん改めて思いますけど、気長ですね」
「そりゃあ百年以上前から好きな子相手っスから」
「………………へ?」
あまりに予想外な返答に思わず間抜けな声が出てしまう名無し。
百年以上前・ということは、尸魂界にいた頃からだ。
予想以上に前から好意を寄せられているという事実に、嬉しいやら恥ずかしいやら申し訳ないやら。
複雑な感情で、何だか胃が痛くなってくる。
「そりゃ名無しサンの色んなこと踏まえたら、中々家族から恋人へ昇格は大変だと思いますけど。まぁ手放す気は更々ないっスからいつまでも待てるというか」
そう、浦原は知っている。
ここに来るまでの彼女の『今まで』を。
肉親に捨てられた時も、幸福に溢れた穏やかな時も、別離の時も、霊王の片鱗たる『彼』と出会った時も、全部全部。
優しい彼のことだ。
きっとそれを様々な理由を踏まえて考えてくれた結果だろう。
(全部、私のため、)
そう自覚すると何とも言い表せない感情が、腹の底から間欠泉のように吹き出てくる。
有難い反面、やはり申し訳なさは拭いきれなかったが。
「まぁ今の状況も楽しいと言えば、楽しいっスけど」
「た、楽しい?」
「そっス。ほら、ボクから好きになった子は名無しサンが初めてですし。」
好きな子を口説き落とすのも、悪くないな。って。
とろりと目元を綻ばせて彼は笑う。
情報量が、多すぎる。
バクバクと音を立てる心臓は全力疾走した後かのように少し苦しかった。
幸福感と罪悪感が比例して胸の内を埋め尽くす。
あぁ一歩踏み出せない自分が、恨めしい。
「…待ってください、浦原さん。そろそろ心臓爆発しそうなんでちょっと黙ってください。」
「えー。」
クスクスと目の前で笑う、底意地の悪い男。
きっと浦原は恥ずかしがっている名無しを見ているだけでも楽しいのだろう。
(もう少しだけ。もう少しだけ、待ってください)
あぁ、この世に神様がいるならお願いしたいくらいだ。
どうかどうか、彼のために、私のために、一歩踏み出す勇気を。