for promise
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白哉の一歩後ろを歩いていた恋次は、嫌な予感がして足を止めた。
大きな霊圧が、物凄い速さでこちらへ向かってくる。
それに気がついたのか、白哉も僅かに眉を顰めて立ち止まる。
「こっちに来ないでください!」
「名無しサンが逃げるのが駄目なんっスよぉ〜」
白哉と恋次の目の前を瞬歩で通り過ぎる、よく見知った二人。
今までにない程に顔を真っ赤にさせた名無しと、黒い羽織をはためかせて駆ける浦原だ。
突風のように二人が通り過ぎたせいか、数瞬遅れて白哉の隊長羽織がふわりと風に靡いた。
「…な、何なんだ…」
「知らぬ。」
呆れたように白哉は一息ついて、止めていた歩を再びゆっくりと進めた。
***
(あぁ、この感じ。久しぶりっスね)
瀞霊廷の中で、彼女を追いかける。
百年以上前にこんなことをした記憶があるが、その時名無しはまだ人間で浦原は隊長だった。
歴史は繰り返すというが、まさにその通りだ。
「なん、で、追いかけてくるんですか!」
「名無しサンが逃げるからっスよぉ」
昔と違う点と言えば、瀞霊廷が復興途中で、目の前の名無しが死覇装を着ている。
そして結構本気を出さないと捕まえるのが難しくなった、という点だろうか。
「どれ、本気出しましょっか」
元々隠密機動仕込みだ。
それに散々夜一に『鬼事』に付き合わされたのだ。
走ることに関して、それなりに自信がある。
伸ばした腕で彼女を捉えようとした瞬間。
「『開け』!」
斬魄刀を抜刀はしないものの、刀を握りしめて声をあげる名無し。
お得意の『すり抜け』は未だ健在のようだった。
指先を掠める死覇装の布。
瞬きをした次の瞬間、彼女は数十メートル先を全速力で走っていた。
瞬歩では浦原の方が上だ。が、彼女にはコレがある。
昔よりも、随分と捕まえにくくなったものだ。
「ちょっと名無しサン、それはズルいっスよぉ」
「さっき聞いたことを忘れてくださったら止まります!」
「いやいや、そりゃ無理な話っスよ」
これまたすごい条件を出してきたものだ。
到底無理な話だが。
忘れるなんて、とんでもない。
「仕方ないっスねぇ、追いついても逃げられるんじゃ。縛道の六十三『鎖条鎖縛』」
「う、わ!」
伸びてきた鎖を半身躱して避けるが、足首を絡めとった一本に思わず前のめる。
「はい、と。捕まえましたよぉ」
倒れそうになった身体を支えるように、両肩をガッチリ掴まれる名無し。
目の前には千歳緑の作務衣と黒い羽織。
(無理だ、死ぬ程恥ずかしい。顔が見れない)
大きな両手の平が肩を掴んでいて、ピクリとも身動きが出来ない。
視線を足元に落とせば自分の足元に絡みついた縛道の鎖と、浦原の下駄が視界に入った。
全速力で走ったからか、それともはたまた別の理由か。
心臓の音が酷く五月蝿い。
鼓動が全身に血を巡らせているのが嫌でもわかるくらいバクバクと音を立てている。
「ホント、昔に比べると捕まえるのが大変っスよぉ。こっちは名無しサンに比べて若くないんっスから手加減してください」
頭の上から気の抜けたような声が降ってくる。
何か。
何か言葉を、返さなければ。
そう思うのに声が竦んでしまって、言葉が出ない。
なんて、言葉をかければいいのだ。
「いやね、ボクも長年我慢してたんっスよ。ほら、名無しサンが尸魂界に来ちゃった辺りから色々ありましたし。
それからもずっと、今はその時じゃないって自分に言い聞かせて。」
平和な時なんて、殆ど無かった。
尸魂界を追放された後は名無しは長い眠りについてしまった。
目が覚めたら目が覚めたで、強くなるためにひたすら文字通り『死に物狂い』で鍛錬を重ねた。
そこからは破面や藍染との殺し合いになり、今度は一護の霊力が文字通り消えた。
それを取り戻すために浦原は奔走し、元に戻ったと思いきや次は滅却師との全面戦争になった。
そこで、彼女は死んだ。文字通り。
「すっごく後悔したんっス。あぁ、言うタイミングがなかったわけじゃないのに、どうして言えなかったんだ・って。」
懺悔のような後悔をポツリポツリと零す浦原。
ふぅ、と小さく息をついて、顔を見ずとも苦笑いしているような声が降りてきた。
「ボクのこと、嫌いになりました?」
「き、嫌いになるわけ、ないじゃないですか!」
困ったような声に、反射的に顔を上げてしまう名無し。
バチリと絡む視線。
頭一つ分以上ある高さから見下ろされてくる双眸は、酷く優しくて。
反射的に顔に熱が集まるのが分かった、けど目が逸らせなかった。
「じゃあ好きっスか?」
「す……っき、らいじゃ、ないです、けど、」
「えぇ〜さっきは好きって言ってたじゃないっスかぁ〜」
やっぱり盗み聞きしていたのか!
もうやだ、穴があったら入りたい。
頼むから誰かこの目の前の男の、数十分前の記憶だけスパーン!と消してほしい。
名無しは心底、そう願わずにはいられなかった。
「我慢をやめようかなぁ、と思いまして。」
ほら、ボクって元々人の顔色気にするの得意じゃないですし。
そう言いながらのほほんと笑う浦原を見て、何だか名無しは少しだけ嫌な予感がした。
「名無しサンは『ボクに嫌われたらどうしよう〜』ってのが怖いんっスよね?」
「う……さ、最初から盗み聞きしてたんですか!?」
「まぁまぁ」
まぁまぁじゃない!
「だから考えたんっスよ、走りながら。
それだったら名無しサンが不安になる余地がないくらい、ボクが好意伝えれば問題ないかなぁ、って」
………ん?
「えぇっと、それはつまり、」
「言葉より行動ってことっスよ。」
掠めるように触れる唇。
目を閉じる間すら与えられない、触れるだけの一瞬。
もうこれ以上、熱を上げないでほしい。
「好きっスよ、名無しサン。この世界で一番、どんなものより、どんな人よりも。」
for promise#13
誰かの『いちばん』になれる日が来るなんて、夢のまた夢だと思っていた。
涙がでそうなくらい、はずかしくて、うれしくて、
こみあげてくる感情に呑まれてしまいそうなんだ。
大きな霊圧が、物凄い速さでこちらへ向かってくる。
それに気がついたのか、白哉も僅かに眉を顰めて立ち止まる。
「こっちに来ないでください!」
「名無しサンが逃げるのが駄目なんっスよぉ〜」
白哉と恋次の目の前を瞬歩で通り過ぎる、よく見知った二人。
今までにない程に顔を真っ赤にさせた名無しと、黒い羽織をはためかせて駆ける浦原だ。
突風のように二人が通り過ぎたせいか、数瞬遅れて白哉の隊長羽織がふわりと風に靡いた。
「…な、何なんだ…」
「知らぬ。」
呆れたように白哉は一息ついて、止めていた歩を再びゆっくりと進めた。
***
(あぁ、この感じ。久しぶりっスね)
瀞霊廷の中で、彼女を追いかける。
百年以上前にこんなことをした記憶があるが、その時名無しはまだ人間で浦原は隊長だった。
歴史は繰り返すというが、まさにその通りだ。
「なん、で、追いかけてくるんですか!」
「名無しサンが逃げるからっスよぉ」
昔と違う点と言えば、瀞霊廷が復興途中で、目の前の名無しが死覇装を着ている。
そして結構本気を出さないと捕まえるのが難しくなった、という点だろうか。
「どれ、本気出しましょっか」
元々隠密機動仕込みだ。
それに散々夜一に『鬼事』に付き合わされたのだ。
走ることに関して、それなりに自信がある。
伸ばした腕で彼女を捉えようとした瞬間。
「『開け』!」
斬魄刀を抜刀はしないものの、刀を握りしめて声をあげる名無し。
お得意の『すり抜け』は未だ健在のようだった。
指先を掠める死覇装の布。
瞬きをした次の瞬間、彼女は数十メートル先を全速力で走っていた。
瞬歩では浦原の方が上だ。が、彼女にはコレがある。
昔よりも、随分と捕まえにくくなったものだ。
「ちょっと名無しサン、それはズルいっスよぉ」
「さっき聞いたことを忘れてくださったら止まります!」
「いやいや、そりゃ無理な話っスよ」
これまたすごい条件を出してきたものだ。
到底無理な話だが。
忘れるなんて、とんでもない。
「仕方ないっスねぇ、追いついても逃げられるんじゃ。縛道の六十三『鎖条鎖縛』」
「う、わ!」
伸びてきた鎖を半身躱して避けるが、足首を絡めとった一本に思わず前のめる。
「はい、と。捕まえましたよぉ」
倒れそうになった身体を支えるように、両肩をガッチリ掴まれる名無し。
目の前には千歳緑の作務衣と黒い羽織。
(無理だ、死ぬ程恥ずかしい。顔が見れない)
大きな両手の平が肩を掴んでいて、ピクリとも身動きが出来ない。
視線を足元に落とせば自分の足元に絡みついた縛道の鎖と、浦原の下駄が視界に入った。
全速力で走ったからか、それともはたまた別の理由か。
心臓の音が酷く五月蝿い。
鼓動が全身に血を巡らせているのが嫌でもわかるくらいバクバクと音を立てている。
「ホント、昔に比べると捕まえるのが大変っスよぉ。こっちは名無しサンに比べて若くないんっスから手加減してください」
頭の上から気の抜けたような声が降ってくる。
何か。
何か言葉を、返さなければ。
そう思うのに声が竦んでしまって、言葉が出ない。
なんて、言葉をかければいいのだ。
「いやね、ボクも長年我慢してたんっスよ。ほら、名無しサンが尸魂界に来ちゃった辺りから色々ありましたし。
それからもずっと、今はその時じゃないって自分に言い聞かせて。」
平和な時なんて、殆ど無かった。
尸魂界を追放された後は名無しは長い眠りについてしまった。
目が覚めたら目が覚めたで、強くなるためにひたすら文字通り『死に物狂い』で鍛錬を重ねた。
そこからは破面や藍染との殺し合いになり、今度は一護の霊力が文字通り消えた。
それを取り戻すために浦原は奔走し、元に戻ったと思いきや次は滅却師との全面戦争になった。
そこで、彼女は死んだ。文字通り。
「すっごく後悔したんっス。あぁ、言うタイミングがなかったわけじゃないのに、どうして言えなかったんだ・って。」
懺悔のような後悔をポツリポツリと零す浦原。
ふぅ、と小さく息をついて、顔を見ずとも苦笑いしているような声が降りてきた。
「ボクのこと、嫌いになりました?」
「き、嫌いになるわけ、ないじゃないですか!」
困ったような声に、反射的に顔を上げてしまう名無し。
バチリと絡む視線。
頭一つ分以上ある高さから見下ろされてくる双眸は、酷く優しくて。
反射的に顔に熱が集まるのが分かった、けど目が逸らせなかった。
「じゃあ好きっスか?」
「す……っき、らいじゃ、ないです、けど、」
「えぇ〜さっきは好きって言ってたじゃないっスかぁ〜」
やっぱり盗み聞きしていたのか!
もうやだ、穴があったら入りたい。
頼むから誰かこの目の前の男の、数十分前の記憶だけスパーン!と消してほしい。
名無しは心底、そう願わずにはいられなかった。
「我慢をやめようかなぁ、と思いまして。」
ほら、ボクって元々人の顔色気にするの得意じゃないですし。
そう言いながらのほほんと笑う浦原を見て、何だか名無しは少しだけ嫌な予感がした。
「名無しサンは『ボクに嫌われたらどうしよう〜』ってのが怖いんっスよね?」
「う……さ、最初から盗み聞きしてたんですか!?」
「まぁまぁ」
まぁまぁじゃない!
「だから考えたんっスよ、走りながら。
それだったら名無しサンが不安になる余地がないくらい、ボクが好意伝えれば問題ないかなぁ、って」
………ん?
「えぇっと、それはつまり、」
「言葉より行動ってことっスよ。」
掠めるように触れる唇。
目を閉じる間すら与えられない、触れるだけの一瞬。
もうこれ以上、熱を上げないでほしい。
「好きっスよ、名無しサン。この世界で一番、どんなものより、どんな人よりも。」
for promise#13
誰かの『いちばん』になれる日が来るなんて、夢のまた夢だと思っていた。
涙がでそうなくらい、はずかしくて、うれしくて、
こみあげてくる感情に呑まれてしまいそうなんだ。