for promise
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文化祭も終わり、冬の気配が北風にのってやってくるこの季節。
温かい飲み物を買いに購買へ、俺と井上と名無しは向かった。
俺はカフェオレを、井上はお汁粉を。名無しは温かいココアのボタンを押した。
ゴトン・と自販機から飲み物が出てくると、寒かったのか名無しはおもむろにプルタブを立ち上げる。
「今日保健室に行ったら浦原先生に手当してもらっちゃった!」
「いいなぁ〜。今日もすれ違ったけど、カッコよかったぁ」
自販機の前のベンチで楽しそうに話をしている女の子ふたり。
見覚えがないから、恐らく二年生か一年生だろう。
それからどこがカッコいいだの、笑顔が素敵だの、まるでアイドルにはしゃぐファンのようだった。
「浦原さん、モテモテだな」
「みたいね。別に、どうでもいいけど、」
ココアを一口飲みながら、名無しが彼女達から視線を逸らす。
「でも一年の子がこの間告白したらしいよ、先生に!」
「えぇ〜、ウソ!どうだったの?」
「『好きな子いるんっスよ』って!きっと年下よ!」
(それ絶対コイツだろ)
その予想は、ほぼ確信に近い。
名無しの方へ視線を向ければ、そこに彼女はいなかった。
井上と一緒に購買の窓口におり、間食用のパンを買っていた。
きっと先程の会話は聞こえていないだろう。
(…っていうか、あの二人付き合ってんのか?)
俺の素朴な疑問は、言葉にされることはなかった。
***
家庭科の授業中。
考え事をしながら湯切りをしていると、飛び散った熱湯で火傷をしてしまった。
料理は得意分野のはずなのに。あぁ、情けない。
それもこれも、あの人が悪い。
『ちゃんと手当してもらいなさいよ』と竜貴に念を押され、今、私は保健室の目の前に立っている。
流水で冷やしはしたが、完全な水ぶくれになっていた。正直、ヒリヒリして痛い。そして痒い。
観念したように小さく溜息をついて、名無しは扉をノックした。
***
「はいはい〜…おやぁ。珍しいっスね、ここにわざわざ来るなんて。」
にこにこと上機嫌で浦原が笑っている。
特に急ぎの用事もないのか、のんびりの缶コーヒーを片手に学校の仕事をしていた。
「好きできたわけじゃないです」
「またまたそんなこと言って。あらら、水ぶくれになっちゃってるっスねぇ」
目敏く怪我に気がつくと、動物を呼ぶように手招きをされる。
診察用の椅子に座れ・ということだろうか。
「珍しいっスね、怪我なんて。考え事でもしてたんっスか?」
「してません。」
ピシャリと言えば、無遠慮に顔を覗き込まれる。
時々、この目が嫌いだった。
砂上の城のように脆い強がりが、あっさりと見破られてしまう。
「名無しサン。」
そっと耳元で小さく名前を囁かれる。
擽ったいやら恥ずかしいやら、慌てて後ろへ飛び退けば椅子からグラりと身体が落ちそうになった。
「おぉっと。危ない危ない。」
咄嗟に腕を掴まれたおかげで尻餅は回避できた。
が、掴まれた部分が、熱い。
なんなら頬から耳まで火傷してしまったかのように熱を持っている。
「…ズルいですよ」
「ん?」
何のことやら・と言わんばかりに、にこにことそれはもう意地の悪い笑みを浮かべる浦原。
こういうところは、本当に性格が悪い。
火傷の手当を適切に処置されている間、観念したようにポツリと口を開いた。
「…よかったじゃないですか、現役女子高生にモテモテで。」
「いやぁ。こんなにモテるのはちょっと予想外でしたねぇ」
呑気に笑いながら浦原が破顔する。
満更でもない様子に、胸の中のモヤモヤが更に広がったような…気がした。
「ご要望通りの学園ラブコメですよ。良かったですね」
「やだなァ、ボクがラブコメしたい相手は一人っスよ」
ぶっきらぼうに言葉を投げかければ、倍返しになって返ってくる。
嫌味すらも逆手に取ってくる賢さは、時々恨めしい。
「もしかして、嫉妬しちゃってました?」
「し、してません!」
ふにゃりと嬉しそうに笑う浦原に対して、不覚ながら顔に熱が再び集まる。
何なんだ、風邪でも引かせたいのか。目の前の男は。
「て、手当!ありがとうございました、もう授業に戻りますから!」
「あ、ちょっと待ってくださいっス」
「何ですか、」
for promise#11
振り返れば、掠めるように触れる『何か』。
顔が、近い。
一瞬何が触れたのか理解出来ず、ぽかんと目を丸くしてしまった。
柔らかい感触。
それは間違いなく、
理解した途端、今までになく火が吹いたかのように熱くなる頬。
あたまの、思考回路が、馬鹿になる。
これは、マズい。
「は、」
「は?」
「はじめて、だったのに…っ、」
狼狽える脳味噌。
まて、今、私は何をされた。
状況が把握出来ず、真っ赤な顔のまま私は保健室を飛び出した。
温かい飲み物を買いに購買へ、俺と井上と名無しは向かった。
俺はカフェオレを、井上はお汁粉を。名無しは温かいココアのボタンを押した。
ゴトン・と自販機から飲み物が出てくると、寒かったのか名無しはおもむろにプルタブを立ち上げる。
「今日保健室に行ったら浦原先生に手当してもらっちゃった!」
「いいなぁ〜。今日もすれ違ったけど、カッコよかったぁ」
自販機の前のベンチで楽しそうに話をしている女の子ふたり。
見覚えがないから、恐らく二年生か一年生だろう。
それからどこがカッコいいだの、笑顔が素敵だの、まるでアイドルにはしゃぐファンのようだった。
「浦原さん、モテモテだな」
「みたいね。別に、どうでもいいけど、」
ココアを一口飲みながら、名無しが彼女達から視線を逸らす。
「でも一年の子がこの間告白したらしいよ、先生に!」
「えぇ〜、ウソ!どうだったの?」
「『好きな子いるんっスよ』って!きっと年下よ!」
(それ絶対コイツだろ)
その予想は、ほぼ確信に近い。
名無しの方へ視線を向ければ、そこに彼女はいなかった。
井上と一緒に購買の窓口におり、間食用のパンを買っていた。
きっと先程の会話は聞こえていないだろう。
(…っていうか、あの二人付き合ってんのか?)
俺の素朴な疑問は、言葉にされることはなかった。
***
家庭科の授業中。
考え事をしながら湯切りをしていると、飛び散った熱湯で火傷をしてしまった。
料理は得意分野のはずなのに。あぁ、情けない。
それもこれも、あの人が悪い。
『ちゃんと手当してもらいなさいよ』と竜貴に念を押され、今、私は保健室の目の前に立っている。
流水で冷やしはしたが、完全な水ぶくれになっていた。正直、ヒリヒリして痛い。そして痒い。
観念したように小さく溜息をついて、名無しは扉をノックした。
***
「はいはい〜…おやぁ。珍しいっスね、ここにわざわざ来るなんて。」
にこにこと上機嫌で浦原が笑っている。
特に急ぎの用事もないのか、のんびりの缶コーヒーを片手に学校の仕事をしていた。
「好きできたわけじゃないです」
「またまたそんなこと言って。あらら、水ぶくれになっちゃってるっスねぇ」
目敏く怪我に気がつくと、動物を呼ぶように手招きをされる。
診察用の椅子に座れ・ということだろうか。
「珍しいっスね、怪我なんて。考え事でもしてたんっスか?」
「してません。」
ピシャリと言えば、無遠慮に顔を覗き込まれる。
時々、この目が嫌いだった。
砂上の城のように脆い強がりが、あっさりと見破られてしまう。
「名無しサン。」
そっと耳元で小さく名前を囁かれる。
擽ったいやら恥ずかしいやら、慌てて後ろへ飛び退けば椅子からグラりと身体が落ちそうになった。
「おぉっと。危ない危ない。」
咄嗟に腕を掴まれたおかげで尻餅は回避できた。
が、掴まれた部分が、熱い。
なんなら頬から耳まで火傷してしまったかのように熱を持っている。
「…ズルいですよ」
「ん?」
何のことやら・と言わんばかりに、にこにことそれはもう意地の悪い笑みを浮かべる浦原。
こういうところは、本当に性格が悪い。
火傷の手当を適切に処置されている間、観念したようにポツリと口を開いた。
「…よかったじゃないですか、現役女子高生にモテモテで。」
「いやぁ。こんなにモテるのはちょっと予想外でしたねぇ」
呑気に笑いながら浦原が破顔する。
満更でもない様子に、胸の中のモヤモヤが更に広がったような…気がした。
「ご要望通りの学園ラブコメですよ。良かったですね」
「やだなァ、ボクがラブコメしたい相手は一人っスよ」
ぶっきらぼうに言葉を投げかければ、倍返しになって返ってくる。
嫌味すらも逆手に取ってくる賢さは、時々恨めしい。
「もしかして、嫉妬しちゃってました?」
「し、してません!」
ふにゃりと嬉しそうに笑う浦原に対して、不覚ながら顔に熱が再び集まる。
何なんだ、風邪でも引かせたいのか。目の前の男は。
「て、手当!ありがとうございました、もう授業に戻りますから!」
「あ、ちょっと待ってくださいっス」
「何ですか、」
for promise#11
振り返れば、掠めるように触れる『何か』。
顔が、近い。
一瞬何が触れたのか理解出来ず、ぽかんと目を丸くしてしまった。
柔らかい感触。
それは間違いなく、
理解した途端、今までになく火が吹いたかのように熱くなる頬。
あたまの、思考回路が、馬鹿になる。
これは、マズい。
「は、」
「は?」
「はじめて、だったのに…っ、」
狼狽える脳味噌。
まて、今、私は何をされた。
状況が把握出来ず、真っ赤な顔のまま私は保健室を飛び出した。