for promise
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少女は再び降り立つ。
交わした約束を、守るために。
for promise#01
「じゃあ、また来るよ」
日番谷は流魂街にある祖母の家から出る。
刻々と夜の気配が空を覆っていく夕暮れ時。
部下の乱菊は仕事を……恐らくしてないだろう。
滅却師との戦争が終わって、ひと月が経った。
建物という建物が瓦解した瀞霊廷は、現在復興作業で慌しい。
流魂街はあまり被害がなかったようで日番谷は胸を撫で下ろした。
瀞霊廷での騒ぎは祖母の耳にも届いていたらしく、日番谷の顔を見た途端に祖母の表情が泣きそうになったのは少し堪えた。
多くの死神も、命を落とした。
尊い犠牲を丁寧に供養できるのは、いつになることやら。
「…誰だ」
瀞霊廷へ繋がる白道門の前で立ち止まる。
後ろからついてきている気配の数は、ひとり。
「いやぁ、知ってる霊圧だったから、つい」
聞き覚えのある声。
まさか。
彼女は、世界のために散った命のひとつだ。
ここにいるはずがない。
「あの、死神になるための学校って、どうやって入学したらいいのか教えていただきたいですんですけど…」
雑木林が黒い塊となって、朱を流したような夕焼けを引き立たせる。
逆光が眩しい黄昏を背負い、彼女が曖昧に笑った。
とんでもない女が、尸魂界にやってきた。
***
「ほぁー。これが制服なんですね」
赤い袴が可愛らしい。
くるりと回ると裾が柔らかく空気を孕んで舞った。
「こんなご時世に死神になろうってヤツは減ったからな。歓迎されるだろうよ」
「ありがとうございます、日番谷くん」
「日番谷隊長、だ」
「えー、私まだ死神じゃないですもん」
「じゃあ近いうちに隊長って呼ぶようになるだろうな」
入学手続きを済ませてやれば、編入という形で歓迎されたようだった。
目の前の少年隊長には暫く頭が上がらない。
「あんな戦いを見てよく死神になろうと思ったな」
「なりますよ。なってみせます。だって、あの人も死神ですもん」
「…動機が不純だな」
「いいじゃないですか、別に。
やっと同じ時間を歩めるんですよ。その為だったらなんだってします」
人間だった頃は、きっと私の方が先に死ぬ。そう思っていた。
それは寿命でも事故でもなく、まるで人柱のような死に方だったが悔いはなかった。
こうやってあの人が生きている世界を守れたのだから、本望だ。むしろ誇らしく思う。
「約束、しましたから。ほら、死神になったら現世に行けますし」
「まぁな」
「立派な死神になって、会いに行くんです。
…だから、あの人には内緒ですよ。どうせなら驚かしたいじゃないですか」
悪戯っぽい笑顔で、彼女は笑う。
「早く教えた方が喜ぶんじゃねーか?」
「大丈夫です。ぱぱっと卒業して、すぐ会いに行きますから」
「出来るのか?」
「違いますよ、できる出来ないの問題じゃなくて『する』んですよ」
「…そうだな、お前はそういうヤツだったよ」
肩を竦めて、半ば呆れたように答える日番谷。
「とっとと卒業しちまえ、名無し」
「任せて下さい。あの市丸の最短記録を塗り替えてやりますから!」
自信満々に笑う名無し。
霊王の右足を引き連れて、異世界からやって来た人間の少女は
今日から死神見習いになる。
交わした約束を、守るために。
for promise#01
「じゃあ、また来るよ」
日番谷は流魂街にある祖母の家から出る。
刻々と夜の気配が空を覆っていく夕暮れ時。
部下の乱菊は仕事を……恐らくしてないだろう。
滅却師との戦争が終わって、ひと月が経った。
建物という建物が瓦解した瀞霊廷は、現在復興作業で慌しい。
流魂街はあまり被害がなかったようで日番谷は胸を撫で下ろした。
瀞霊廷での騒ぎは祖母の耳にも届いていたらしく、日番谷の顔を見た途端に祖母の表情が泣きそうになったのは少し堪えた。
多くの死神も、命を落とした。
尊い犠牲を丁寧に供養できるのは、いつになることやら。
「…誰だ」
瀞霊廷へ繋がる白道門の前で立ち止まる。
後ろからついてきている気配の数は、ひとり。
「いやぁ、知ってる霊圧だったから、つい」
聞き覚えのある声。
まさか。
彼女は、世界のために散った命のひとつだ。
ここにいるはずがない。
「あの、死神になるための学校って、どうやって入学したらいいのか教えていただきたいですんですけど…」
雑木林が黒い塊となって、朱を流したような夕焼けを引き立たせる。
逆光が眩しい黄昏を背負い、彼女が曖昧に笑った。
とんでもない女が、尸魂界にやってきた。
***
「ほぁー。これが制服なんですね」
赤い袴が可愛らしい。
くるりと回ると裾が柔らかく空気を孕んで舞った。
「こんなご時世に死神になろうってヤツは減ったからな。歓迎されるだろうよ」
「ありがとうございます、日番谷くん」
「日番谷隊長、だ」
「えー、私まだ死神じゃないですもん」
「じゃあ近いうちに隊長って呼ぶようになるだろうな」
入学手続きを済ませてやれば、編入という形で歓迎されたようだった。
目の前の少年隊長には暫く頭が上がらない。
「あんな戦いを見てよく死神になろうと思ったな」
「なりますよ。なってみせます。だって、あの人も死神ですもん」
「…動機が不純だな」
「いいじゃないですか、別に。
やっと同じ時間を歩めるんですよ。その為だったらなんだってします」
人間だった頃は、きっと私の方が先に死ぬ。そう思っていた。
それは寿命でも事故でもなく、まるで人柱のような死に方だったが悔いはなかった。
こうやってあの人が生きている世界を守れたのだから、本望だ。むしろ誇らしく思う。
「約束、しましたから。ほら、死神になったら現世に行けますし」
「まぁな」
「立派な死神になって、会いに行くんです。
…だから、あの人には内緒ですよ。どうせなら驚かしたいじゃないですか」
悪戯っぽい笑顔で、彼女は笑う。
「早く教えた方が喜ぶんじゃねーか?」
「大丈夫です。ぱぱっと卒業して、すぐ会いに行きますから」
「出来るのか?」
「違いますよ、できる出来ないの問題じゃなくて『する』んですよ」
「…そうだな、お前はそういうヤツだったよ」
肩を竦めて、半ば呆れたように答える日番谷。
「とっとと卒業しちまえ、名無し」
「任せて下さい。あの市丸の最短記録を塗り替えてやりますから!」
自信満々に笑う名無し。
霊王の右足を引き連れて、異世界からやって来た人間の少女は
今日から死神見習いになる。
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