「一言、物申したい事があるんですけど。」

伝令神機を片手に、目の前の可愛い恋人は不満そうに言葉を零した。

彼女の伝令神機の画面には『ブレイズ ソウルソサエティ』…通称『ブレソル』が起動されている。


「なんスか？」
「これ。」


バレてしまった以上、もう隠す気はないらしい。
彼女の手によって育成・編成された、『パーフェクト浦原喜助』パーティー。
……低レアまできちんと育てているのはちょっと笑ってしまった。
勿論、ボクとしては嬉しくないわけがない。
むしろ照れ屋で恥ずかしがりで、そんな『ベタ』なことをしなさそうな名無しが、真剣に育成しているのが可愛すぎる。
ついその小さな頭をくしゃくしゃに撫で回したくなる衝動に駆られる程だ。
……実行した日には機嫌を損ねてしまうのだろうが。


そんな名無しの白い指先が指し示すのは、ボクのCG。
うんうん、とてもよく似ている。


「…………なんで実装日が新しくなるにつれ、胸元開いてるんですか？」


ポツリと呟かれた一言。


一瞬何のことを言っているのか分からなくて、小さく首を傾げそうになってしまった。


まじまじと観察してみれば、彼女の言っている事が理解出来た。

初期に実装された『浦原喜助』よりも、最近実装された『浦原喜助』の方がCGは似ている。
途中でCGのグラフィックが新しくなったのだろう。顔が精細になっていた。

……それと同時に作務衣の襟も開き気味になっている。
まぁ、実際それくらい開いているのだが。

「はー、言われてみれば。よく気が付きましたね。」

素直に感心したと同時に、芽生えたのは底意地悪い『ボク』。


「………そんなとこばっか見て、名無しサンったらえっちっスね？」


鏡を見なくても分かる。
きっととても――そう、名無し曰く『悪い顔』をしているのだろう。

なぜなら炬燵を囲んで隣に座る彼女の頬が、茹だったように真っ赤になっているから。
何年経ってもこういう手合いのからかいには耐性がつかないらしい。
それが可笑しくて、それ以上に可愛くて愛しくて仕方がなかった。


反論を絞り出そうと、金魚のようにぱくぱくと必死に空気を呑むが、一向に出てこないようだ。
仕舞いには「あー」とか「うー」とか唸りだし、頭を抱えて俯いてしまった。
……少しやりすぎてしまっただろうか？


「…………じゃ、……すか」


ぼそぼそと呟かれる言葉。
隣にいるのに聞き取れないということは、かなり小さな声だ。

耳まで真っ赤に染めてしまった名無しの顔を覗き込めば、観念したようにもう一度言葉を絞り出された。


「…………気になるに、決まってるじゃないですか…」



似すぎているのも考えもの



至極恥ずかしそうに、零した本音。

その横顔があまりにも可愛くて。
ついつい勢いのまま抱きついて、ふわふわの黒髪を舐めるように撫で回してしまった。


――とても怒られた。