short story
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「幸せの形って、どんな形なんっスかね。」
トングを片手に持った私に向かって、突然彼はこう言った。
「なんですか、藪から棒に。」
「唐突にこんなこと訊いたら、哲学的に見えるでしょ?」
なんなんだ、本当に。賢く見られたいのだろうか。
そんな頓珍漢な事を言わなくとも実際頭が良いのは身をもって知っているというのに。
「大体は……丸かったり、ふわふわした形だったり…そんなイメージをするんじゃないですかね?」
「ということは名無しサンはそうじゃないんっスか?」
他人事のように答えれば、目敏い彼は隣にしゃがみながら顔を覗き込んできた。
「そうですね……」と適当に相槌を打ちながら、使い込んだトングを枯葉に差し込む。
熾火で燻る煙火は、煙たいような香ばしいような匂いだった。
ゴロリと出てきた、アルミホイルの塊。
ミトンで丁寧に銀紙を剥げば赤紫色の丸々太ったサツマイモが姿を現す。
力を込めて真っ二つに割れば、腹の虫が今にも鳴ってしまいそうな、ほのかな湯気が秋の空気に立ち上った。
「熱いですよ。」と一言ことわり、何枚かのキッチンペーパーで包んで渡す。
待ってましたと言わんばかりに、隣で焼き芋が仕上がるのを待っていた浦原は子供のように破顔した。
「さっきの質問ですけど、」
身から浮いた分厚い皮を指先で捲りながら口を開く。
「私の幸せの形は、半分に割った焼き芋の形、ですかね。」
蜜色の炭水化物にかぶりつけば、ホクホクとした食感。
時折じゅわっとした甘い蜜が溢れれば、思わず頬が綻んだ。
しあわせのかたち
『半分に割った』
その意味を理解した瞬間、ボクは頬がだらしなく緩んでしまう。
「ボクでよければいつでも御同伴いたしますよ。」
「それはそれは。」
黒い瞳を満足そうに細めながら、名無しが百点満点の笑顔を綻ばせた。
それはなんでもない、秋の一幕。
トングを片手に持った私に向かって、突然彼はこう言った。
「なんですか、藪から棒に。」
「唐突にこんなこと訊いたら、哲学的に見えるでしょ?」
なんなんだ、本当に。賢く見られたいのだろうか。
そんな頓珍漢な事を言わなくとも実際頭が良いのは身をもって知っているというのに。
「大体は……丸かったり、ふわふわした形だったり…そんなイメージをするんじゃないですかね?」
「ということは名無しサンはそうじゃないんっスか?」
他人事のように答えれば、目敏い彼は隣にしゃがみながら顔を覗き込んできた。
「そうですね……」と適当に相槌を打ちながら、使い込んだトングを枯葉に差し込む。
熾火で燻る煙火は、煙たいような香ばしいような匂いだった。
ゴロリと出てきた、アルミホイルの塊。
ミトンで丁寧に銀紙を剥げば赤紫色の丸々太ったサツマイモが姿を現す。
力を込めて真っ二つに割れば、腹の虫が今にも鳴ってしまいそうな、ほのかな湯気が秋の空気に立ち上った。
「熱いですよ。」と一言ことわり、何枚かのキッチンペーパーで包んで渡す。
待ってましたと言わんばかりに、隣で焼き芋が仕上がるのを待っていた浦原は子供のように破顔した。
「さっきの質問ですけど、」
身から浮いた分厚い皮を指先で捲りながら口を開く。
「私の幸せの形は、半分に割った焼き芋の形、ですかね。」
蜜色の炭水化物にかぶりつけば、ホクホクとした食感。
時折じゅわっとした甘い蜜が溢れれば、思わず頬が綻んだ。
しあわせのかたち
『半分に割った』
その意味を理解した瞬間、ボクは頬がだらしなく緩んでしまう。
「ボクでよければいつでも御同伴いたしますよ。」
「それはそれは。」
黒い瞳を満足そうに細めながら、名無しが百点満点の笑顔を綻ばせた。
それはなんでもない、秋の一幕。