夏色バケーション!
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『じゃあ、そうと決まれば…水着買いに行きましょうか』
にこにこと機嫌のいい笑顔を浮かべて、浦原が手を叩いた。
《まさか浦原さんと二人でですか?》…なんて聞くのは愚問だろう。
レモネード・デート
黒いシャツに、クロップドパンツ。
それだけで人目をこれだけ引く人も珍しい。
『この人いつも作務衣と羽織、下駄ですよ』と言っても誰も信じてくれないだろう。
ショッピングモールでやたらと視線を感じながら、向かった先は――
「名無しサン、これはどうっスか?」
「もう少し、その、む……………胸まわり隠れてるやつが、いいです…」
「大丈夫ですよ、お客様!しっかりありますから!」
キャイキャイとはしゃぐ浦原と、若い女性店員。
しっかりあるって、ナニがだ。
「そっスよ。ちょっと平均よりも胸が豊かな人が周りに多いだけで、名無しサンだってボクがしっかり育て」
「言わなくていいです!」
自重という言葉を知らないのか、この人は。
水着ショップの店員さんに『彼氏さんも彼女さんの水着、選んであげてくださいね』と声を掛けられてから酷く上機嫌だ。
テンションが振り切っているといっても過言ではない。
平日の昼だからだろう。客足も疎らで、暇を持て余していた店員さんは(良くも悪くも)付きっきりだ。
ありがたい反面、ちょっと…いや、かなり恥ずかしい。
かといって目の前のスケベ代表と選ぶのは気が引けるのも事実だった。
「えぇ〜、若いんですしもっと大胆なヤツでもいいんじゃないです?」
「あの、どちらかというと陰キャなので、大胆なのはちょっと。」
前言撤回。店員さんも大概だ。
可愛い水着のラインナップの合間に、時々こう…乱菊が大変気に入りそうな水着を持って来る。
プロポーションに絶対の自信があるわけではないので、勿論丁重にお断りするが。
自分で選びたい。
しかしひっきりなしに持って来られれば、試着室から出ることも出来なかった。
「じゃあこれならどうっスか?」
浦原が試着室へ持ってきたのは、胸元が紺色のフリルになっているビキニだ。
漸く希望に沿うような水着を持ってきてもらえて、内心ほっと息をついた。
「じゃあこれ、試着してもいいですか…?」
「えぇ、どうぞどうぞ!」
愛想のいい店員がにこにこと満面の笑みで答える。
「試着したら見せてくださいっス。」
「嫌です。」
下心丸出しの笑顔で言うものだから、こっちも負けじといい笑顔で返した。
あからさまにしょんぼりしていたが、こういうのは無視に限る。…どうせ当日見るんだからいいじゃないか。
滑りのいいカーテンを引っ張る名無し。
ごそごそと布擦れの音を確かめて、浦原は店員さんに別の水着を手渡した。
「これも会計お願いします」
「はい、かしこまりました!彼氏さんお目が高い。これ今年の新作ですよ」
こそこそと、声を潜めたやりとりがあったことは…名無しの知る由もない。
***
「浦原さんのはすぐ決まりましたね。」
「まぁ男のなんて適当っスから」
そう言いながら笑うが、きっと彼は何を着ても似合うのだろう。
……背丈があるのは本当に羨ましい。
ダメ押しとばかりに顔もいいのだから、神はこの人に二物も三物も与えすぎている気がする。
休憩がてらカフェで寛ぎ、アイスコーヒーの氷をカラカラとストローで廻す浦原。
ガラスを叩く氷の音が、夏らしい音色で涼やかだった。
「………………あの、浦原さん。」
「なんっスか?」
「お忙しいのは重々承知で、一つお願いが。」
「名無しサンのお願いなら喜んで。」
「…………泳ぎ方を、教えて頂きたいんですけど………」
恥を偲んで頼み込めば、二つ返事で「いいっスよ」と了承された。
「海よりはプールの方が足がつくからいいっスよね?」
「えっと、そうですね。そっちの方がありがたいです。」
「プールなんて初めてっスねぇ。いやぁ、楽しみだ」
鼻歌でも歌い出しそうなくらい、上機嫌だ。
先程水着を選んでいる時もそうだったが、やはり今日は一際機嫌がいい。
「嬉しそうですね…あの、ご迷惑じゃなかったですか?」
「全然。名無しサンがボクを頼ってくれるのが嬉しいっスから。
…だって今まで出来なかった楽しい事を、楽しめるようになるためのお手伝いっスよ?楽しくないわけがないじゃないですか」
蕩けるような笑顔で、目の前の恋人は心底嬉しそうに笑う。
その理由が『私』というのが……恥ずかしくて、嬉しくて、照れくさくて。
頬が熱くなるのを感じて、しっかり冷えたレモネードを一気にストローで吸い込んだ。
…………頭がキーンって、なった。
にこにこと機嫌のいい笑顔を浮かべて、浦原が手を叩いた。
《まさか浦原さんと二人でですか?》…なんて聞くのは愚問だろう。
レモネード・デート
黒いシャツに、クロップドパンツ。
それだけで人目をこれだけ引く人も珍しい。
『この人いつも作務衣と羽織、下駄ですよ』と言っても誰も信じてくれないだろう。
ショッピングモールでやたらと視線を感じながら、向かった先は――
「名無しサン、これはどうっスか?」
「もう少し、その、む……………胸まわり隠れてるやつが、いいです…」
「大丈夫ですよ、お客様!しっかりありますから!」
キャイキャイとはしゃぐ浦原と、若い女性店員。
しっかりあるって、ナニがだ。
「そっスよ。ちょっと平均よりも胸が豊かな人が周りに多いだけで、名無しサンだってボクがしっかり育て」
「言わなくていいです!」
自重という言葉を知らないのか、この人は。
水着ショップの店員さんに『彼氏さんも彼女さんの水着、選んであげてくださいね』と声を掛けられてから酷く上機嫌だ。
テンションが振り切っているといっても過言ではない。
平日の昼だからだろう。客足も疎らで、暇を持て余していた店員さんは(良くも悪くも)付きっきりだ。
ありがたい反面、ちょっと…いや、かなり恥ずかしい。
かといって目の前のスケベ代表と選ぶのは気が引けるのも事実だった。
「えぇ〜、若いんですしもっと大胆なヤツでもいいんじゃないです?」
「あの、どちらかというと陰キャなので、大胆なのはちょっと。」
前言撤回。店員さんも大概だ。
可愛い水着のラインナップの合間に、時々こう…乱菊が大変気に入りそうな水着を持って来る。
プロポーションに絶対の自信があるわけではないので、勿論丁重にお断りするが。
自分で選びたい。
しかしひっきりなしに持って来られれば、試着室から出ることも出来なかった。
「じゃあこれならどうっスか?」
浦原が試着室へ持ってきたのは、胸元が紺色のフリルになっているビキニだ。
漸く希望に沿うような水着を持ってきてもらえて、内心ほっと息をついた。
「じゃあこれ、試着してもいいですか…?」
「えぇ、どうぞどうぞ!」
愛想のいい店員がにこにこと満面の笑みで答える。
「試着したら見せてくださいっス。」
「嫌です。」
下心丸出しの笑顔で言うものだから、こっちも負けじといい笑顔で返した。
あからさまにしょんぼりしていたが、こういうのは無視に限る。…どうせ当日見るんだからいいじゃないか。
滑りのいいカーテンを引っ張る名無し。
ごそごそと布擦れの音を確かめて、浦原は店員さんに別の水着を手渡した。
「これも会計お願いします」
「はい、かしこまりました!彼氏さんお目が高い。これ今年の新作ですよ」
こそこそと、声を潜めたやりとりがあったことは…名無しの知る由もない。
***
「浦原さんのはすぐ決まりましたね。」
「まぁ男のなんて適当っスから」
そう言いながら笑うが、きっと彼は何を着ても似合うのだろう。
……背丈があるのは本当に羨ましい。
ダメ押しとばかりに顔もいいのだから、神はこの人に二物も三物も与えすぎている気がする。
休憩がてらカフェで寛ぎ、アイスコーヒーの氷をカラカラとストローで廻す浦原。
ガラスを叩く氷の音が、夏らしい音色で涼やかだった。
「………………あの、浦原さん。」
「なんっスか?」
「お忙しいのは重々承知で、一つお願いが。」
「名無しサンのお願いなら喜んで。」
「…………泳ぎ方を、教えて頂きたいんですけど………」
恥を偲んで頼み込めば、二つ返事で「いいっスよ」と了承された。
「海よりはプールの方が足がつくからいいっスよね?」
「えっと、そうですね。そっちの方がありがたいです。」
「プールなんて初めてっスねぇ。いやぁ、楽しみだ」
鼻歌でも歌い出しそうなくらい、上機嫌だ。
先程水着を選んでいる時もそうだったが、やはり今日は一際機嫌がいい。
「嬉しそうですね…あの、ご迷惑じゃなかったですか?」
「全然。名無しサンがボクを頼ってくれるのが嬉しいっスから。
…だって今まで出来なかった楽しい事を、楽しめるようになるためのお手伝いっスよ?楽しくないわけがないじゃないですか」
蕩けるような笑顔で、目の前の恋人は心底嬉しそうに笑う。
その理由が『私』というのが……恥ずかしくて、嬉しくて、照れくさくて。
頬が熱くなるのを感じて、しっかり冷えたレモネードを一気にストローで吸い込んだ。
…………頭がキーンって、なった。