夏色バケーション!
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「海、ですか?」
「そっス。夏なんで。尸魂界の隊長達も休暇で来られるとか」
これはずっと避けていた、夏の催し。
去年、一昨年と一護達に誘われていたのの、理由をつけて断っていたイベントだ。
「…………あの、もしかしてお返事」
「出しましたよ?参加で、って。」
あぁぁぁ〜〜〜やっぱそうですよね!
頭を抱えて蹲る名無し。
仕方ない、浦原は善意(と多少の下心)で返事をしてくれたのだろう。
――どうせいつかバレる話だ。今腹を割って話すべきだろう。
「あの、浦原さん。」
「なんっスか?」
「……………………私、実は泳げないんです。」
長い間を空け、そっと白状した事実。
目の前の無精髭を生やした店主は、仰いでいた団扇を落としながら「…へ?」と間抜けな声を上げるのであった。
夏休みのはじまり
幼い頃。
まだ優しかった頃の両親と海に行った時だった。
明るく、開放的な景色。
砂色の浅瀬の小波は透き通り、ざわざわと泡立つ波の音は心地がよかった。
新品の浮輪を持って、海へ入った時の事だった。
海底から、こちらを覗く『何か』。
目が合ったら最後。
穴のような影が足を掴んだのは、覚えている。
浮輪を掴んでいた手は滑り、海中へ引きずり込まれたのは一瞬だった。
――幸い、波に打ち上げられ死ななかったものの、楽しい海水浴は両親を酷く心配させるだけさせて終わってしまった。
勿論この頃には『お化けを見た』と言っても信じて貰えなくなっていたので、口を噤むしかなかったのだけど。
「――あとは川べりにいた、人間に似た何かに川に引きずり込まれたりとか…」
「そういうエピソード聞くと、まぁ名無しサンよく生きてたな…って思っちゃいますねぇ」
虚とは違う、自然界の摂理に深く関わる『人ならざるもの』。
妖、物の怪、魔物。
もちろん蓋を開ければ『虚』が原因……ということも無きにしも非ずなのだが、やはり一定数『説明できない何か』がいる、ということも事実なのだ。
元々そういう体質なのだろう。
だからこそ、霊とも虚とも言えぬ『霊王の欠片』になった存在も引き寄せたのだろうが。
「まぁ、その……お恥ずかしい話ですが大体ロクな目にあっていなくて。」
「そりゃそんなのばっかだと泳ぎたいとは思わないっスよね」
なるほど、と頷きながら浦原は麦茶を一口口に含んだ。
現世で過ごす、何度目かの夏。
花火や夏祭り…他の夏らしいことは今までしてきたというのに、海やプールではしゃぐ彼女を見たことがなかったのは、こういうことだったのか。
「今から断っときます?」
「あ、いえ…。今年はその、頑張ってみようかと…」
何を、と問われれば色々だろう。
恥ずかしそうに言葉を口篭る名無しを見て、思わず浦原は頬が緩みそうになった。
「……お、溺れかけたら、助けてくださいね」
「勿論。なんなら泳ぎ方、お教えしましょっか?」
珍しく彼女から助けを求める声に、思わず浦原は頬が綻んだ。
一通りそつなくこなす彼女にも、苦手なことがあると知れただけで嬉しくなるなんて――あぁ、我ながら重症だと思った。
「そっス。夏なんで。尸魂界の隊長達も休暇で来られるとか」
これはずっと避けていた、夏の催し。
去年、一昨年と一護達に誘われていたのの、理由をつけて断っていたイベントだ。
「…………あの、もしかしてお返事」
「出しましたよ?参加で、って。」
あぁぁぁ〜〜〜やっぱそうですよね!
頭を抱えて蹲る名無し。
仕方ない、浦原は善意(と多少の下心)で返事をしてくれたのだろう。
――どうせいつかバレる話だ。今腹を割って話すべきだろう。
「あの、浦原さん。」
「なんっスか?」
「……………………私、実は泳げないんです。」
長い間を空け、そっと白状した事実。
目の前の無精髭を生やした店主は、仰いでいた団扇を落としながら「…へ?」と間抜けな声を上げるのであった。
夏休みのはじまり
幼い頃。
まだ優しかった頃の両親と海に行った時だった。
明るく、開放的な景色。
砂色の浅瀬の小波は透き通り、ざわざわと泡立つ波の音は心地がよかった。
新品の浮輪を持って、海へ入った時の事だった。
海底から、こちらを覗く『何か』。
目が合ったら最後。
穴のような影が足を掴んだのは、覚えている。
浮輪を掴んでいた手は滑り、海中へ引きずり込まれたのは一瞬だった。
――幸い、波に打ち上げられ死ななかったものの、楽しい海水浴は両親を酷く心配させるだけさせて終わってしまった。
勿論この頃には『お化けを見た』と言っても信じて貰えなくなっていたので、口を噤むしかなかったのだけど。
「――あとは川べりにいた、人間に似た何かに川に引きずり込まれたりとか…」
「そういうエピソード聞くと、まぁ名無しサンよく生きてたな…って思っちゃいますねぇ」
虚とは違う、自然界の摂理に深く関わる『人ならざるもの』。
妖、物の怪、魔物。
もちろん蓋を開ければ『虚』が原因……ということも無きにしも非ずなのだが、やはり一定数『説明できない何か』がいる、ということも事実なのだ。
元々そういう体質なのだろう。
だからこそ、霊とも虚とも言えぬ『霊王の欠片』になった存在も引き寄せたのだろうが。
「まぁ、その……お恥ずかしい話ですが大体ロクな目にあっていなくて。」
「そりゃそんなのばっかだと泳ぎたいとは思わないっスよね」
なるほど、と頷きながら浦原は麦茶を一口口に含んだ。
現世で過ごす、何度目かの夏。
花火や夏祭り…他の夏らしいことは今までしてきたというのに、海やプールではしゃぐ彼女を見たことがなかったのは、こういうことだったのか。
「今から断っときます?」
「あ、いえ…。今年はその、頑張ってみようかと…」
何を、と問われれば色々だろう。
恥ずかしそうに言葉を口篭る名無しを見て、思わず浦原は頬が緩みそうになった。
「……お、溺れかけたら、助けてくださいね」
「勿論。なんなら泳ぎ方、お教えしましょっか?」
珍しく彼女から助けを求める声に、思わず浦原は頬が綻んだ。
一通りそつなくこなす彼女にも、苦手なことがあると知れただけで嬉しくなるなんて――あぁ、我ながら重症だと思った。