short story
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コーヒーに、温めたホットミルクとコーヒーシュガーをティースプーン一杯。
それが彼女のお気に入り。
「熱っ」
淹れたてのコーヒー…もといカフェオレを、一口啜る。
が、相当熱かったのだろう。マグカップにつけられた柔らかそうな唇はすぐさま離された。
口元を手で覆い、形のいい眉は僅かに顰められている。
怪訝そうに細められた黒い双眸は、湯気が立ちのぼるカフェオレに向けられたまま逸らされることがなかった。
「あらら、ヤケドっスか?」
「……多分。」
口の中の薄皮が剥けたのか、モゴモゴと口の中を動かしている。
恐らく彼女の事だ。剥けかけた皮が気になって剥がしてしまおうとしているのだろう。
「大丈夫っスか?無理に弄ってたら口内炎になっちゃいますよ」
「平気ですよ、……ちょっと舌が痛いですけど」
んべ。と見せられる、柔らかそうで小さい肉色の舌。
(あぁ、確かに火傷しているっスね。かわいそうに)
労りの言葉は、瞬時に脳裏に浮かんだはずだった。
口から紡がれる、はずだった。
けれど、それよりも早く、つい桜色の唇に吸い込まれてしまう。
吸い寄せられて、しまった。
……いやぁ、だってほら。
美味しそうじゃないっスか、不可抗力っスよ。
目の前で。
目に入れても痛くない、可愛い恋人が。
これまた美味しそうな舌を出して無防備に晒してるだなんて。
深い深いキスを、要求されているように見えてしまった。
…………欲求不満なのか、って?
不満ではないけれど、万年発情しているのは…まぁ否定はしない。仕方ない。
ディープキスとは言えない――けれど啄むような可愛らしい接吻でもない。
一瞬だけ絡めた舌は相変わらず柔らかく、名無しから抗議の抵抗が飛んでくる前に、名残惜しく唇を離した。
「っな、何するんですか!」
いつも通り顔を真っ赤にさせて、今度は別の意味合いで口元を覆う彼女。
多少キスには慣れてきたとはいえ、こういう不意打ちにはまだまだ弱い。
慣れて欲しいような、暫くはこの反応を見ていたいような。少し、複雑な気分だ。
「いやぁ……ほら。唾つけとけば治る、みたいな?」
「口の中は自分の唾液でギットギトなんで間に合ってます!」
いや『ギットギト』はないだろう。これまたロマンの欠片もない言い方だ。
「だってぇ。深いのおねだりされてるように見えちゃったんっスもん」
「いい歳した成人男性が『もん』って言わないでください。っていうかそれは目の錯覚ですから!」
四番隊に視力検査でもしてもらいますか!?
そう吠えながら、今にも茹で上がりそうな顔でプリプリ怒る顔も可愛い……なんて言ったら火に油だろうか。
真っ赤になりながらも抗議する彼女をぼんやりと眺めながら、そんな日和ったことを考えるのであった。
ご注文はキスですか?
(いいえ。絶対それは気のせいです)
それが彼女のお気に入り。
「熱っ」
淹れたてのコーヒー…もといカフェオレを、一口啜る。
が、相当熱かったのだろう。マグカップにつけられた柔らかそうな唇はすぐさま離された。
口元を手で覆い、形のいい眉は僅かに顰められている。
怪訝そうに細められた黒い双眸は、湯気が立ちのぼるカフェオレに向けられたまま逸らされることがなかった。
「あらら、ヤケドっスか?」
「……多分。」
口の中の薄皮が剥けたのか、モゴモゴと口の中を動かしている。
恐らく彼女の事だ。剥けかけた皮が気になって剥がしてしまおうとしているのだろう。
「大丈夫っスか?無理に弄ってたら口内炎になっちゃいますよ」
「平気ですよ、……ちょっと舌が痛いですけど」
んべ。と見せられる、柔らかそうで小さい肉色の舌。
(あぁ、確かに火傷しているっスね。かわいそうに)
労りの言葉は、瞬時に脳裏に浮かんだはずだった。
口から紡がれる、はずだった。
けれど、それよりも早く、つい桜色の唇に吸い込まれてしまう。
吸い寄せられて、しまった。
……いやぁ、だってほら。
美味しそうじゃないっスか、不可抗力っスよ。
目の前で。
目に入れても痛くない、可愛い恋人が。
これまた美味しそうな舌を出して無防備に晒してるだなんて。
深い深いキスを、要求されているように見えてしまった。
…………欲求不満なのか、って?
不満ではないけれど、万年発情しているのは…まぁ否定はしない。仕方ない。
ディープキスとは言えない――けれど啄むような可愛らしい接吻でもない。
一瞬だけ絡めた舌は相変わらず柔らかく、名無しから抗議の抵抗が飛んでくる前に、名残惜しく唇を離した。
「っな、何するんですか!」
いつも通り顔を真っ赤にさせて、今度は別の意味合いで口元を覆う彼女。
多少キスには慣れてきたとはいえ、こういう不意打ちにはまだまだ弱い。
慣れて欲しいような、暫くはこの反応を見ていたいような。少し、複雑な気分だ。
「いやぁ……ほら。唾つけとけば治る、みたいな?」
「口の中は自分の唾液でギットギトなんで間に合ってます!」
いや『ギットギト』はないだろう。これまたロマンの欠片もない言い方だ。
「だってぇ。深いのおねだりされてるように見えちゃったんっスもん」
「いい歳した成人男性が『もん』って言わないでください。っていうかそれは目の錯覚ですから!」
四番隊に視力検査でもしてもらいますか!?
そう吠えながら、今にも茹で上がりそうな顔でプリプリ怒る顔も可愛い……なんて言ったら火に油だろうか。
真っ赤になりながらも抗議する彼女をぼんやりと眺めながら、そんな日和ったことを考えるのであった。
ご注文はキスですか?
(いいえ。絶対それは気のせいです)