short story
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時々、この人は面倒くさい。
「浦原さん、そろそろ出ないと間に合わないんじゃないですか?」
「んー…そうっスけどぉ」
洗濯物を畳む私の腰に(鬱陶しくも)纏わりついているのは、この商店の店主だ。
もっと言えば、尸魂界の技術開発局創設者にして初代局長。そして先代の護廷十三隊の十二番隊隊長である。
今現在、駄々を捏ねているのは本人その人なのだが……どうも動く気分にならないらしい。
『そういう時もあるよね』と言いたいのは山々だが、約束に遅刻をしたらチクチクネチネチ煩いマユリと会う予定なのだ。
仮にも私の現在の上司であり、浦原の元・部下である彼は時間に厳しい。
神経質な性格のマユリらしいと言えば、マユリらしい。
それがどうだ。仕事の付き合い上、相変わらず交流があるとはいえ、マユリは浦原を蛇蝎の如く嫌っている。
浦原が遅刻したとすれば、マユリのご機嫌は急降下。阿近の胃薬服薬量は増える未来が嫌でも視えた。
更にはこっちにも飛び火しかねない。『あんな愚かな男の手綱も握れないのかネ、名無し。』と。
「約束の時間に遅刻したらマユリさん、面倒でしょう?」
「んー…そうっスけどぉ」
「離れがたくって」と言い、腰に回した腕の力を込める浦原。
これではまるでおんぶお化け…もとい、おんぶ死神だ。
「八つ当たりされるのは阿近さんですよ?」
「名無しサンがちゅーしてくれたら準備するっス。」
「ん。」と催促するように目を瞑る目の前の男。
確かに周りには浦原商店のいつもの面々は誰もいない。
自分からキスするのには少し気恥しさ故に抵抗はあるが、逆に出来ない理由もない。
けど、なんだろう。
素直に言われるがまま言うことを聞けば、ホイホイと調子に乗りそうなのだ。目の前の浦原喜助という男は。
有り体に言えば、素直に要求をのむのは面白くない。
かといって阿近の胃痛も心配だ。
「……仕方ないですね。」
そろりと唇で柔らかく触れる。
石鹸の匂い。
少しカサカサした肌の感触。
さぁ、要望には応えた。これで動いてもらおうじゃないか。
我儘店主の働かせ方
期待に胸を踊らせらながら目を瞑る。
「仕方ないですね」と呆れたような彼女の声。
柄にもなくワクワクと待ち構えていれば、不意に触れた柔らかい感触。
……手の甲に、だが。
思わず目を開ければ、ボクの手を取り、手の甲に唇を落としている彼女の顔。
さらりと落ちた前髪。
伏し目がちの瞼を縁取る、黒い睫毛。
まるで古い外国映画のワンシーンのようだ。
そうしたらボクがお姫様役で、彼女が王子様役になってしまうけど。
『そうじゃなくて!』と抗議しようにも、言葉が出ない。
だってあまりにもそれは不意打ちで、流れるような仕草で、ついつい見惚れてしまう光景で。
「――はい。ちゅーしたから、早く出掛けてくださいね」
自然な流れでボクの腕を解き、畳み終えた洗濯物を抱えて名無しが立ち上がる。
してやったり、と言わんばかりの満面の笑み。
けれど少しだけ耳が赤くなっているのも見逃すはずもなくて。
まぁ、ボクの顔の方が熱くて熱くて、見れたものじゃないんだろうけど。
(……今のは反則っスよォ)
逆にドキドキさせられるなんて。
あぁ、本当に彼女には敵わない。
「浦原さん、そろそろ出ないと間に合わないんじゃないですか?」
「んー…そうっスけどぉ」
洗濯物を畳む私の腰に(鬱陶しくも)纏わりついているのは、この商店の店主だ。
もっと言えば、尸魂界の技術開発局創設者にして初代局長。そして先代の護廷十三隊の十二番隊隊長である。
今現在、駄々を捏ねているのは本人その人なのだが……どうも動く気分にならないらしい。
『そういう時もあるよね』と言いたいのは山々だが、約束に遅刻をしたらチクチクネチネチ煩いマユリと会う予定なのだ。
仮にも私の現在の上司であり、浦原の元・部下である彼は時間に厳しい。
神経質な性格のマユリらしいと言えば、マユリらしい。
それがどうだ。仕事の付き合い上、相変わらず交流があるとはいえ、マユリは浦原を蛇蝎の如く嫌っている。
浦原が遅刻したとすれば、マユリのご機嫌は急降下。阿近の胃薬服薬量は増える未来が嫌でも視えた。
更にはこっちにも飛び火しかねない。『あんな愚かな男の手綱も握れないのかネ、名無し。』と。
「約束の時間に遅刻したらマユリさん、面倒でしょう?」
「んー…そうっスけどぉ」
「離れがたくって」と言い、腰に回した腕の力を込める浦原。
これではまるでおんぶお化け…もとい、おんぶ死神だ。
「八つ当たりされるのは阿近さんですよ?」
「名無しサンがちゅーしてくれたら準備するっス。」
「ん。」と催促するように目を瞑る目の前の男。
確かに周りには浦原商店のいつもの面々は誰もいない。
自分からキスするのには少し気恥しさ故に抵抗はあるが、逆に出来ない理由もない。
けど、なんだろう。
素直に言われるがまま言うことを聞けば、ホイホイと調子に乗りそうなのだ。目の前の浦原喜助という男は。
有り体に言えば、素直に要求をのむのは面白くない。
かといって阿近の胃痛も心配だ。
「……仕方ないですね。」
そろりと唇で柔らかく触れる。
石鹸の匂い。
少しカサカサした肌の感触。
さぁ、要望には応えた。これで動いてもらおうじゃないか。
我儘店主の働かせ方
期待に胸を踊らせらながら目を瞑る。
「仕方ないですね」と呆れたような彼女の声。
柄にもなくワクワクと待ち構えていれば、不意に触れた柔らかい感触。
……手の甲に、だが。
思わず目を開ければ、ボクの手を取り、手の甲に唇を落としている彼女の顔。
さらりと落ちた前髪。
伏し目がちの瞼を縁取る、黒い睫毛。
まるで古い外国映画のワンシーンのようだ。
そうしたらボクがお姫様役で、彼女が王子様役になってしまうけど。
『そうじゃなくて!』と抗議しようにも、言葉が出ない。
だってあまりにもそれは不意打ちで、流れるような仕草で、ついつい見惚れてしまう光景で。
「――はい。ちゅーしたから、早く出掛けてくださいね」
自然な流れでボクの腕を解き、畳み終えた洗濯物を抱えて名無しが立ち上がる。
してやったり、と言わんばかりの満面の笑み。
けれど少しだけ耳が赤くなっているのも見逃すはずもなくて。
まぁ、ボクの顔の方が熱くて熱くて、見れたものじゃないんだろうけど。
(……今のは反則っスよォ)
逆にドキドキさせられるなんて。
あぁ、本当に彼女には敵わない。