short story
名前変換
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
『同棲してる彼女が「あ、この人とは本当に無理」と思った瞬間が要注意!不満を一切言わなくなり、家事などを完璧にこなすようになっちゃいます。
特に男性が「うまくやれてるなぁ」と呑気に考えていると、絶対に覆せない別れを告げられます!世の中の男性陣!家事分担はちゃーんと出来ていますか?』
(え。)
テレビで何となく流れてきた、とんでもないコラム。
『ちょっと怖い?女の本音♡』と題されたそれは、「ちょっと怖い」どころの騒ぎではないだろう。
思い当たる節は、ありすぎる。
というか自分からしたら常に『完璧』と太鼓判を押してもいいくらい、彼女の家事能力はかなり高い。
己が如何せん、生活能力が低いせいもあるのだろうけど。
身体を傾けて台所を見遣れば、ザァザァと水音が聞こえてくる。
食器がカチャリと小さく鳴っている様子からして、今は食器洗いをしているのだろうか。
「名無しサン、」
「どうかされました?あ、お茶ですか?洗い物終わったら用意しますね」
「いや、そうじゃなくて。…お手伝い、することないっスか?」
そろりと尋ねれば、鳩が豆鉄砲食らったような顔で見上げられる。
え、そんな意外そうな顔をしなくても。
「…………私がとっておいたお菓子を食べたとか?」
「いやいやいや、別にやましいことしてないっスから。」
即座に否定すれば『じゃあどうして?』と言わんばかりに首を小さく傾げてくる名無し。
そんな仕草も可愛い。…が、油断してはいない。
こう見えて不満が溜まりまくってるのかもしれないのだから。
「お手伝い…うーん…じゃあ、布巾で食器拭いてもらっていいですか?」
「お安い御用で。」
理路整然と並べられた食器を一枚手に取り、清潔な布巾で丁寧に水気を拭いていく。
普段彼女がしている家事のほんの一部だが…これで少しは負担が軽くなればいいのだけど。
「なにかボクに不満があれば言ってくださいね」
「え。藪から棒に何ですか。」
「まあまあ。」
「………………………じゃあセクハラを控えて貰えると、」
「あ、それはスキンシップっスから。」
「意見を求めておいて、それはないんじゃないですか!?」
***
「はぁ。家事を完璧にしていたら相手に不満がある、と。
…で、浦原さんが『心地いいな~上手くやれてるな~』と思っていたらヤバい、と。」
「そんなとこっス。」
「テレビのそんなコラムを真に受けるなんて珍しいですね」
洗いざらい白状すれば、彼女はお茶を片手にあっけらかんと笑った。
確かに珍しいかもしれない。
けれどあまりに心当たりがありすぎる…むしろ家事が完璧なのは出会った当初からだからこそ、思い当たる節がないとは断言できなかった。
というか、
「そりゃ名無しサンに嫌われたらボク生きていけないっスからぁ」
「またまた。」
これは本気なのだが、あえておちゃらけて本音を漏らせば目の前の彼女は苦笑いしながらお茶を啜った。
「そもそも家事は完璧…ではないんですけど、キチンと出来ているように見えているなら何よりです。」
頬杖をついて「手を抜けるところは手を抜いてるんですよ?」と悪戯っぽく名無しは笑うが、正直浦原が見破れる『手抜き』は見受けられられなかった。
謙遜なのか、はたまた事実なのか。見当すらつかない。
「よくあるじゃないっスか。『旦那が家事をしてくれない!離婚よ、離婚!』みたいな。」
「あーなるほど。ご家庭によるとは思いますけどね。でも家事は鉄裁さんもしてくだってますし、そもそも趣味みたいなものだからなぁ…」
趣味。
…確かに嫌な顔一つせず、テキパキとこなしてはいるが。
先日は『過炭酸ナトリウムで洗濯槽掃除したら凄かったです!』と子供みたいにはしゃいでいたが…。
「……って、なんっスか。ニヤニヤして…」
「ん?浦原さんもそういうとこ気にする可愛らしい面があったんだなぁ、って思って。」
クスクス笑う名無しの表情は春の陽射しのようにやわらかだ。
からかう様な言葉とは裏腹に、向けられる視線は酷く穏やかで。
それが何だか擽ったくて。けれど、
(たまには、悪くない)
御意見ラボラトリー
「それこそ浦原さんに嫌われたら、私生きていけないかもしれませんねー」
「万が一にもボクが名無しサンを嫌うなんてないっスよ、それは」
特に男性が「うまくやれてるなぁ」と呑気に考えていると、絶対に覆せない別れを告げられます!世の中の男性陣!家事分担はちゃーんと出来ていますか?』
(え。)
テレビで何となく流れてきた、とんでもないコラム。
『ちょっと怖い?女の本音♡』と題されたそれは、「ちょっと怖い」どころの騒ぎではないだろう。
思い当たる節は、ありすぎる。
というか自分からしたら常に『完璧』と太鼓判を押してもいいくらい、彼女の家事能力はかなり高い。
己が如何せん、生活能力が低いせいもあるのだろうけど。
身体を傾けて台所を見遣れば、ザァザァと水音が聞こえてくる。
食器がカチャリと小さく鳴っている様子からして、今は食器洗いをしているのだろうか。
「名無しサン、」
「どうかされました?あ、お茶ですか?洗い物終わったら用意しますね」
「いや、そうじゃなくて。…お手伝い、することないっスか?」
そろりと尋ねれば、鳩が豆鉄砲食らったような顔で見上げられる。
え、そんな意外そうな顔をしなくても。
「…………私がとっておいたお菓子を食べたとか?」
「いやいやいや、別にやましいことしてないっスから。」
即座に否定すれば『じゃあどうして?』と言わんばかりに首を小さく傾げてくる名無し。
そんな仕草も可愛い。…が、油断してはいない。
こう見えて不満が溜まりまくってるのかもしれないのだから。
「お手伝い…うーん…じゃあ、布巾で食器拭いてもらっていいですか?」
「お安い御用で。」
理路整然と並べられた食器を一枚手に取り、清潔な布巾で丁寧に水気を拭いていく。
普段彼女がしている家事のほんの一部だが…これで少しは負担が軽くなればいいのだけど。
「なにかボクに不満があれば言ってくださいね」
「え。藪から棒に何ですか。」
「まあまあ。」
「………………………じゃあセクハラを控えて貰えると、」
「あ、それはスキンシップっスから。」
「意見を求めておいて、それはないんじゃないですか!?」
***
「はぁ。家事を完璧にしていたら相手に不満がある、と。
…で、浦原さんが『心地いいな~上手くやれてるな~』と思っていたらヤバい、と。」
「そんなとこっス。」
「テレビのそんなコラムを真に受けるなんて珍しいですね」
洗いざらい白状すれば、彼女はお茶を片手にあっけらかんと笑った。
確かに珍しいかもしれない。
けれどあまりに心当たりがありすぎる…むしろ家事が完璧なのは出会った当初からだからこそ、思い当たる節がないとは断言できなかった。
というか、
「そりゃ名無しサンに嫌われたらボク生きていけないっスからぁ」
「またまた。」
これは本気なのだが、あえておちゃらけて本音を漏らせば目の前の彼女は苦笑いしながらお茶を啜った。
「そもそも家事は完璧…ではないんですけど、キチンと出来ているように見えているなら何よりです。」
頬杖をついて「手を抜けるところは手を抜いてるんですよ?」と悪戯っぽく名無しは笑うが、正直浦原が見破れる『手抜き』は見受けられられなかった。
謙遜なのか、はたまた事実なのか。見当すらつかない。
「よくあるじゃないっスか。『旦那が家事をしてくれない!離婚よ、離婚!』みたいな。」
「あーなるほど。ご家庭によるとは思いますけどね。でも家事は鉄裁さんもしてくだってますし、そもそも趣味みたいなものだからなぁ…」
趣味。
…確かに嫌な顔一つせず、テキパキとこなしてはいるが。
先日は『過炭酸ナトリウムで洗濯槽掃除したら凄かったです!』と子供みたいにはしゃいでいたが…。
「……って、なんっスか。ニヤニヤして…」
「ん?浦原さんもそういうとこ気にする可愛らしい面があったんだなぁ、って思って。」
クスクス笑う名無しの表情は春の陽射しのようにやわらかだ。
からかう様な言葉とは裏腹に、向けられる視線は酷く穏やかで。
それが何だか擽ったくて。けれど、
(たまには、悪くない)
御意見ラボラトリー
「それこそ浦原さんに嫌われたら、私生きていけないかもしれませんねー」
「万が一にもボクが名無しサンを嫌うなんてないっスよ、それは」