short story
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記録的大型台風と銘打たれたそれは、雨風を打ち付けるように窓を掻き鳴らす。
「落雷がなければよいのですが。」
「まー高さがないからウチには落ちないでしょうけどね」
落ちたらひとたまりもないだろう。
何せ築何年か数えるのもアホらしい、昔ながらの木造商店なのだから。
全焼…は、避けたいところだ。宿無しになってしまう。
雨は読書を、ジン太は手持ち無沙汰と言わんばかりにゴロリと横になってテレビを眺めている。
テレビの上部のテロップはずっと警報の文字が張り付いたままだ。
見慣れたバラエティ番組はどことなく味気ない上、時間の感覚を狂わせるには十分だった。
落雷の心配をする鉄裁を他所に、浦原は暇そうに頬杖をついている。
どうやら今日の研究はおやすみらしい。
万が一、停電でも起きた日には研究データが壊れてしまう恐れがあるためだろう。
地響きのような雷鳴がテレビ音の合間に鳴り響く。
『遠雷』というには近い、けれど肩を震わせる程でもない。
「…結構近くじゃないです?」
「いやぁ、まだ遠いっスかね。」
嫌そうに眉を寄せて、浦原の隣に座るのは名無しだ。
昨日から部屋干ししていた衣服を取り込み、鉄裁の手を借りながら丁寧に畳んでいる。
少し離れた隣の和室では、新たに部屋干しされた洗濯物に向かって時期外れな扇風機が延々と首を振っていた。
鉄裁と洗濯物を畳んでいるのだから、別に浦原の隣に座る必要性は全くと言っていいほど皆無だ。
けれど、浦原は気づいてしまった。
先程から少しずつ近づいてきている雷鳴に、僅かに名無しの表情が固くなっている事実に。
(なんというか、)
こんなこと言ったら怒られるのだろう。
『そんなわけないじゃないですか』と。
少し上擦った声で。
人一倍我慢強く、また強がりな彼女の事だ。
指摘すれば余計意固地になるのは目に見えている。
子供っぽいといえばそうなのだが、普段他のところが大人び過ぎているくらいだ。
これくらいが丁度いいのかもしれない。
(可愛いっスねぇ)
物音に驚く小動物を眺めている時の気持ちは、きっとこんな感情なのだろう。
無意識のうちに浦原の隣に座っているのも、これは自惚れでなければ『頼られている』と汲み取れる。
もしくは浦原の隣が『安全地帯』なのだ、と。
(これで怖がってしがみついてくれれば、シチュエーション的にはパーフェクトなんっスけど。)
当の本人がポーカーフェイスで戦々恐々しているというのに、不謹慎極まりない思考だ。
だからこそ彼をよく知る一部の死神達から『人でなし』『ドS』と酷評されていることに、本人は気づいているのだろうか?
そんな浦原が邪な考えをした数秒後。
脳天を突くような轟音と共に浦原商店のブレーカーが落ちたのは、きっと神様のちょっとした悪戯。
あらしのよるに
鉄裁がブレーカーを戻した瞬間、チカチカと点滅しながら明かりが戻る居間の蛍光灯。
それと同時に『誰か』が浦原の羽織を引っ張っていた感覚が、ふっとなくなる。
浦原の右隣には、名無し。
力いっぱい握っていたのか、シワになった羽織は右腕のあたり。
少し恥ずかしそうにそっぽを向く彼女の頬は赤い。
雷にかなりびっくりしたのか、表情はいつにも増してぎこちない上、バツが悪そうだった。
理由は皆まで言う必要ない。
(あー、可愛い)
なんともいえない複雑そうな表情も、明かりが戻った瞬間に離れるのも。
嗚呼、今日も彼女に首ったけ。
「落雷がなければよいのですが。」
「まー高さがないからウチには落ちないでしょうけどね」
落ちたらひとたまりもないだろう。
何せ築何年か数えるのもアホらしい、昔ながらの木造商店なのだから。
全焼…は、避けたいところだ。宿無しになってしまう。
雨は読書を、ジン太は手持ち無沙汰と言わんばかりにゴロリと横になってテレビを眺めている。
テレビの上部のテロップはずっと警報の文字が張り付いたままだ。
見慣れたバラエティ番組はどことなく味気ない上、時間の感覚を狂わせるには十分だった。
落雷の心配をする鉄裁を他所に、浦原は暇そうに頬杖をついている。
どうやら今日の研究はおやすみらしい。
万が一、停電でも起きた日には研究データが壊れてしまう恐れがあるためだろう。
地響きのような雷鳴がテレビ音の合間に鳴り響く。
『遠雷』というには近い、けれど肩を震わせる程でもない。
「…結構近くじゃないです?」
「いやぁ、まだ遠いっスかね。」
嫌そうに眉を寄せて、浦原の隣に座るのは名無しだ。
昨日から部屋干ししていた衣服を取り込み、鉄裁の手を借りながら丁寧に畳んでいる。
少し離れた隣の和室では、新たに部屋干しされた洗濯物に向かって時期外れな扇風機が延々と首を振っていた。
鉄裁と洗濯物を畳んでいるのだから、別に浦原の隣に座る必要性は全くと言っていいほど皆無だ。
けれど、浦原は気づいてしまった。
先程から少しずつ近づいてきている雷鳴に、僅かに名無しの表情が固くなっている事実に。
(なんというか、)
こんなこと言ったら怒られるのだろう。
『そんなわけないじゃないですか』と。
少し上擦った声で。
人一倍我慢強く、また強がりな彼女の事だ。
指摘すれば余計意固地になるのは目に見えている。
子供っぽいといえばそうなのだが、普段他のところが大人び過ぎているくらいだ。
これくらいが丁度いいのかもしれない。
(可愛いっスねぇ)
物音に驚く小動物を眺めている時の気持ちは、きっとこんな感情なのだろう。
無意識のうちに浦原の隣に座っているのも、これは自惚れでなければ『頼られている』と汲み取れる。
もしくは浦原の隣が『安全地帯』なのだ、と。
(これで怖がってしがみついてくれれば、シチュエーション的にはパーフェクトなんっスけど。)
当の本人がポーカーフェイスで戦々恐々しているというのに、不謹慎極まりない思考だ。
だからこそ彼をよく知る一部の死神達から『人でなし』『ドS』と酷評されていることに、本人は気づいているのだろうか?
そんな浦原が邪な考えをした数秒後。
脳天を突くような轟音と共に浦原商店のブレーカーが落ちたのは、きっと神様のちょっとした悪戯。
あらしのよるに
鉄裁がブレーカーを戻した瞬間、チカチカと点滅しながら明かりが戻る居間の蛍光灯。
それと同時に『誰か』が浦原の羽織を引っ張っていた感覚が、ふっとなくなる。
浦原の右隣には、名無し。
力いっぱい握っていたのか、シワになった羽織は右腕のあたり。
少し恥ずかしそうにそっぽを向く彼女の頬は赤い。
雷にかなりびっくりしたのか、表情はいつにも増してぎこちない上、バツが悪そうだった。
理由は皆まで言う必要ない。
(あー、可愛い)
なんともいえない複雑そうな表情も、明かりが戻った瞬間に離れるのも。
嗚呼、今日も彼女に首ったけ。