short story
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「夜一サン、もういいじゃないっスか。」
「いやじゃ。今日は儂のための日じゃぞ」
煩い・と言わんばかりに月色の眼をスっと細める夜一の視線の先に、少しばかり不機嫌な浦原が胡座をかいていた。
「お誕生日はもう過ぎたでしょう?」
「莫迦者。そのくらい承知しておるわ。
…あ、名無し。もう少し下じゃ。」
「夜一さん、撫でられるの意外とお好きですね…」
ゴロリと喉を鳴らし、白く柔らかい太股に背中を擦り付ける。
そう。まるで猫のように……というか、見たままその通り、猫である。
「あぁもう!名無しサンの膝枕は!ボクのっスよ!」
吾輩は猫になりたい。
「さすがにずっと撫でていると疲れますね」
名無しの膝枕を思う存分堪能した夜一は、また自由気ままにどこかへふらりと出掛けて行った。
優雅な足取りで、機嫌よく尻尾をゆらりと揺らしながら。
「何が猫の日っスか…ただの語呂合わせっスよ…」
むぅと拗ねたように口先を尖らせる、いい歳こいた男が約一名。
視線の先は商店街で貰った、シンプルな白黒印刷の壁掛けカレンダーだ。
2月22日。
猫の鳴き声に掛けているのだろう、どうやら今日は猫の日らしい。
(いい夫婦の日とか言ってた人がそれを言うのか…)
以前それで浦原ははしゃぎ、夜は散々な目に遭った名無しは、すっかり温くなってしまった緑茶で喉を潤した。
どうせ指摘したところで目の前の男は『それはそれ。これはこれ』と言い放つのだろうから。
揚げ足取りのような文句は、ぐっとお茶で流してしまおう。
「第一、名無しサンの膝はボクの特等席っスよ。」
「いつからそんな法律が出来たんですか。」
そんな盟約を交わした覚えもなければ、宣言された覚えもない。
名無しは呆れたように僅かに眉を寄せ、子供のように拗ねる恋人をじとりと見遣った。
まぁ浦原が拗ねるのは無理もない。
我が物顔で一時間程、彼女の膝を占領されれば文句の一つ二つ言いたくもなる。
それが例え、旧知の仲だとしても。
同じ釜の飯を食べた仲だとしても、だ。
「…………名無しサン。」
「何ですか?」
「…………にゃー。」
可愛らしい声を作ろうと努力するつもりもないのだろう。
いつもの少し掠れたような地声で、これまた似せるつもりも毛頭ない猫の鳴き声らしき声が聞こえた。
勿論、それを発するは元・護廷十三隊隊長だ。
「…………あの、浦原さん。恥も外聞もないんですか?」
「ボクは今は猫っスから。…にゃー」
取ってつけたような語尾は、やる気の欠片も無い。
先程まで夜一が陣取っていた膝の上に、今度はこれまた大きな成人男性――いや、本人曰く『猫』が頭を無遠慮に乗せてきた。
好き勝手はねた、柔らかい金髪。
実際に猫に変化できるのなら、さぞかしブラッシングの手間がかかる猫だろう。
それも、とびきり甘えっ子の。
「猫なら、甘え放題の日なんっスよね?」
ゴロリと体勢を変えながら、浦原が無遠慮に名無しを見上げる。
鷲色の瞳は楽しそうに細められ、太い腕は離さまいとしっかり細い腰へ回されていた。
これはもう、観念しろ…ということだろう。
「…全くもう。大きな猫ですね」
諦めたように小さく息を吐いて、柔らかい髪をやわやわと撫でる。
それがとても御満悦なのだろう。浦原は満足そうに目元を蕩かせて柔らかい太股にそっと顔を埋めた。
「よその猫ちゃんに嫉妬したんですか?」
「そうっス、にゃー」
あまりに似合わない猫語の語尾に、顔を見合わせて吹き出したのはほぼ同時だった。
無条件で甘えられるのなら、猫にも犬でもなろうじゃないか。
ここの特等席は、誰にも譲るつもりはないのだから。
「いやじゃ。今日は儂のための日じゃぞ」
煩い・と言わんばかりに月色の眼をスっと細める夜一の視線の先に、少しばかり不機嫌な浦原が胡座をかいていた。
「お誕生日はもう過ぎたでしょう?」
「莫迦者。そのくらい承知しておるわ。
…あ、名無し。もう少し下じゃ。」
「夜一さん、撫でられるの意外とお好きですね…」
ゴロリと喉を鳴らし、白く柔らかい太股に背中を擦り付ける。
そう。まるで猫のように……というか、見たままその通り、猫である。
「あぁもう!名無しサンの膝枕は!ボクのっスよ!」
吾輩は猫になりたい。
「さすがにずっと撫でていると疲れますね」
名無しの膝枕を思う存分堪能した夜一は、また自由気ままにどこかへふらりと出掛けて行った。
優雅な足取りで、機嫌よく尻尾をゆらりと揺らしながら。
「何が猫の日っスか…ただの語呂合わせっスよ…」
むぅと拗ねたように口先を尖らせる、いい歳こいた男が約一名。
視線の先は商店街で貰った、シンプルな白黒印刷の壁掛けカレンダーだ。
2月22日。
猫の鳴き声に掛けているのだろう、どうやら今日は猫の日らしい。
(いい夫婦の日とか言ってた人がそれを言うのか…)
以前それで浦原ははしゃぎ、夜は散々な目に遭った名無しは、すっかり温くなってしまった緑茶で喉を潤した。
どうせ指摘したところで目の前の男は『それはそれ。これはこれ』と言い放つのだろうから。
揚げ足取りのような文句は、ぐっとお茶で流してしまおう。
「第一、名無しサンの膝はボクの特等席っスよ。」
「いつからそんな法律が出来たんですか。」
そんな盟約を交わした覚えもなければ、宣言された覚えもない。
名無しは呆れたように僅かに眉を寄せ、子供のように拗ねる恋人をじとりと見遣った。
まぁ浦原が拗ねるのは無理もない。
我が物顔で一時間程、彼女の膝を占領されれば文句の一つ二つ言いたくもなる。
それが例え、旧知の仲だとしても。
同じ釜の飯を食べた仲だとしても、だ。
「…………名無しサン。」
「何ですか?」
「…………にゃー。」
可愛らしい声を作ろうと努力するつもりもないのだろう。
いつもの少し掠れたような地声で、これまた似せるつもりも毛頭ない猫の鳴き声らしき声が聞こえた。
勿論、それを発するは元・護廷十三隊隊長だ。
「…………あの、浦原さん。恥も外聞もないんですか?」
「ボクは今は猫っスから。…にゃー」
取ってつけたような語尾は、やる気の欠片も無い。
先程まで夜一が陣取っていた膝の上に、今度はこれまた大きな成人男性――いや、本人曰く『猫』が頭を無遠慮に乗せてきた。
好き勝手はねた、柔らかい金髪。
実際に猫に変化できるのなら、さぞかしブラッシングの手間がかかる猫だろう。
それも、とびきり甘えっ子の。
「猫なら、甘え放題の日なんっスよね?」
ゴロリと体勢を変えながら、浦原が無遠慮に名無しを見上げる。
鷲色の瞳は楽しそうに細められ、太い腕は離さまいとしっかり細い腰へ回されていた。
これはもう、観念しろ…ということだろう。
「…全くもう。大きな猫ですね」
諦めたように小さく息を吐いて、柔らかい髪をやわやわと撫でる。
それがとても御満悦なのだろう。浦原は満足そうに目元を蕩かせて柔らかい太股にそっと顔を埋めた。
「よその猫ちゃんに嫉妬したんですか?」
「そうっス、にゃー」
あまりに似合わない猫語の語尾に、顔を見合わせて吹き出したのはほぼ同時だった。
無条件で甘えられるのなら、猫にも犬でもなろうじゃないか。
ここの特等席は、誰にも譲るつもりはないのだから。