short story
名前変換
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
それなりにお酒は強い・とは聞いていた。
あまり彼がお酒を飲んでいる場面に出くわしたことがないから、この目で確かめたわけではないけど。
とある日。尸魂界で無礼講のどんちゃん騒ぎの酒の席が開かれる運びになった。
まぁ総隊長が呑兵衛の酒好きなのだから、それはそれは酒の席は賑やかになることだろう。
昔の馴染みとして浦原も呼ばれたらしく、穿界門を通って尸魂界へ向かったのは確か夕方の16時頃の話。
名無しは何回か読んだことのある小説のページをのんびり捲りながら時計を見遣る。
短針は二時を回り、長針はもうすぐ半を指し示す頃合だ。
別に起きて待っていろ・だなんて一言も言われていないし、そんな義務もない。
けれど何となく先に寝ているのも何だか億劫で、ついつい紅茶を片手に待ってしまっている。
「…にしては結構飲んでるなぁ」
居酒屋はそろそろ店仕舞いする頃合いだ。
…解散してもおかしくないが……。
ガタン、ゴトン。
商店のレジ周りから聞こえてくる、不審な音。
もちろん戸締りはキチンとしている。
とすれば、音の発生源は決まっていた。
居間から引戸をそろりと開ければ、井戸から這い上がってきたコーデリアの如く――いや、どちらかというとゾンビ映画だろうか。
兎にも角にも畳を除けて地下室から這い出てきたのは、まごうこと無く浦原商店の店長その人だった。
「うわ…」
近付かなくても分かる。
かなり、酒臭い。
「あー、名無しサンだぁ。ただいま帰りましたァ」
上機嫌で床に伏せたまま、いつもよりも当社比1.5倍のゆるゆるとした笑顔を浮かべる浦原。
頬は紅潮しており、見るだけで分かる。…かなり、酔っていた。
「浦原さん…どれだけ飲んだんですか…」
「両手両足の指じゃ足りない程っスかねぇ」
受け答えはハッキリしているが、どうやらまともに歩けないらしい。
断界をよく抜けれたなぁ、と感心しそうになったが、なるほど。珍しく地獄蝶が舞っているところを見ると一応正規ルートで帰ってきたらしい。
「無茶苦茶お酒臭いですよ、もう…」
「いやぁ、楽しくてつい。」
肩を貸せば予想以上に重い体に、思わず名無しまで千鳥足になってしまいそうだ。
座布団を何枚か重ねて枕代わりにし、身体を横たわらせればうつらうつらと船をあっという間に漕ぎ出す浦原。
この様子では恐らく自室に戻るのは困難だろう。布団を後から持って降りることにしようか。
「浦原さん、ポカリ飲みますか?」
「んー…口移しっスかぁ?」
「しません。」
酔っていてもこの調子なのだからタチが悪い。
ピシャリと断り、冷蔵庫から取り出した経口飲料水のキャップを開ける。
少し身体を起こしてペットボトルを渡せば、喉が渇いていたのか三分の一程飲み干してしまった。
夕飯の買い物時に『念の為』と買っておいたが、どうやら正解だったようだ。
「あとは明日、まだお酒が残っているようだったらハイチオールCでも飲みましょう。買っておきましたから」
「至れり尽くせりっスねぇ」
座布団へ機嫌よく顔を埋めながら浦原がふわふわと笑う。
いつもの胡散臭さは微塵もなく、まるでマタタビを与えた猫のようだった。
「そりゃあ、まぁ、普通そうじゃないですか」
「名無しサンのそーゆーとこ、好きっスよ」
とろりと目元を蕩かせて、愛おしそうに目を細める浦原。
気恥ずかしいような、照れくさいような。何とも言えない居心地の悪さに、思わず名無しは視線を逸らした。
「褒めても何も出ませんよ…」
「えー。あ、でも自慢は散々しましたからいいんっスー」
「………自慢?」
「そっス。ご飯も美味しいしー、優しいしー、可愛いしー、頑張り屋さんでぇ、可愛いしー」
今同じこと二回言ったなぁ・と、浦原の惚気を他人事のように聞きながら名無しは苦笑いを浮かべる。
これを聞かされた隊長格の面々に会うことを考えたら、少し頭が痛くなってくる話だが。
機嫌よくふわふわ喋る恋人の話を、寝るまでもう少しだけ付き合うことにしよう。
使っていたブランケットを、半分酩酊している恋人にかけてやれば「そういうとこっスよぉ」とふわふわ笑うのだった。
午前三時、ご機嫌麗しゅう。
「夜は物凄くえっちですしぃー」
「ちょっと待った。それ言ったんですか!?」
「勿論っスー。そりゃー惚気っスからぁ」
「…………………浦原さん、暫くお酒禁止です」
「えっ」
あまり彼がお酒を飲んでいる場面に出くわしたことがないから、この目で確かめたわけではないけど。
とある日。尸魂界で無礼講のどんちゃん騒ぎの酒の席が開かれる運びになった。
まぁ総隊長が呑兵衛の酒好きなのだから、それはそれは酒の席は賑やかになることだろう。
昔の馴染みとして浦原も呼ばれたらしく、穿界門を通って尸魂界へ向かったのは確か夕方の16時頃の話。
名無しは何回か読んだことのある小説のページをのんびり捲りながら時計を見遣る。
短針は二時を回り、長針はもうすぐ半を指し示す頃合だ。
別に起きて待っていろ・だなんて一言も言われていないし、そんな義務もない。
けれど何となく先に寝ているのも何だか億劫で、ついつい紅茶を片手に待ってしまっている。
「…にしては結構飲んでるなぁ」
居酒屋はそろそろ店仕舞いする頃合いだ。
…解散してもおかしくないが……。
ガタン、ゴトン。
商店のレジ周りから聞こえてくる、不審な音。
もちろん戸締りはキチンとしている。
とすれば、音の発生源は決まっていた。
居間から引戸をそろりと開ければ、井戸から這い上がってきたコーデリアの如く――いや、どちらかというとゾンビ映画だろうか。
兎にも角にも畳を除けて地下室から這い出てきたのは、まごうこと無く浦原商店の店長その人だった。
「うわ…」
近付かなくても分かる。
かなり、酒臭い。
「あー、名無しサンだぁ。ただいま帰りましたァ」
上機嫌で床に伏せたまま、いつもよりも当社比1.5倍のゆるゆるとした笑顔を浮かべる浦原。
頬は紅潮しており、見るだけで分かる。…かなり、酔っていた。
「浦原さん…どれだけ飲んだんですか…」
「両手両足の指じゃ足りない程っスかねぇ」
受け答えはハッキリしているが、どうやらまともに歩けないらしい。
断界をよく抜けれたなぁ、と感心しそうになったが、なるほど。珍しく地獄蝶が舞っているところを見ると一応正規ルートで帰ってきたらしい。
「無茶苦茶お酒臭いですよ、もう…」
「いやぁ、楽しくてつい。」
肩を貸せば予想以上に重い体に、思わず名無しまで千鳥足になってしまいそうだ。
座布団を何枚か重ねて枕代わりにし、身体を横たわらせればうつらうつらと船をあっという間に漕ぎ出す浦原。
この様子では恐らく自室に戻るのは困難だろう。布団を後から持って降りることにしようか。
「浦原さん、ポカリ飲みますか?」
「んー…口移しっスかぁ?」
「しません。」
酔っていてもこの調子なのだからタチが悪い。
ピシャリと断り、冷蔵庫から取り出した経口飲料水のキャップを開ける。
少し身体を起こしてペットボトルを渡せば、喉が渇いていたのか三分の一程飲み干してしまった。
夕飯の買い物時に『念の為』と買っておいたが、どうやら正解だったようだ。
「あとは明日、まだお酒が残っているようだったらハイチオールCでも飲みましょう。買っておきましたから」
「至れり尽くせりっスねぇ」
座布団へ機嫌よく顔を埋めながら浦原がふわふわと笑う。
いつもの胡散臭さは微塵もなく、まるでマタタビを与えた猫のようだった。
「そりゃあ、まぁ、普通そうじゃないですか」
「名無しサンのそーゆーとこ、好きっスよ」
とろりと目元を蕩かせて、愛おしそうに目を細める浦原。
気恥ずかしいような、照れくさいような。何とも言えない居心地の悪さに、思わず名無しは視線を逸らした。
「褒めても何も出ませんよ…」
「えー。あ、でも自慢は散々しましたからいいんっスー」
「………自慢?」
「そっス。ご飯も美味しいしー、優しいしー、可愛いしー、頑張り屋さんでぇ、可愛いしー」
今同じこと二回言ったなぁ・と、浦原の惚気を他人事のように聞きながら名無しは苦笑いを浮かべる。
これを聞かされた隊長格の面々に会うことを考えたら、少し頭が痛くなってくる話だが。
機嫌よくふわふわ喋る恋人の話を、寝るまでもう少しだけ付き合うことにしよう。
使っていたブランケットを、半分酩酊している恋人にかけてやれば「そういうとこっスよぉ」とふわふわ笑うのだった。
午前三時、ご機嫌麗しゅう。
「夜は物凄くえっちですしぃー」
「ちょっと待った。それ言ったんですか!?」
「勿論っスー。そりゃー惚気っスからぁ」
「…………………浦原さん、暫くお酒禁止です」
「えっ」