short story
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新年になり、方々から挨拶が交わされる。
勿論、浦原商店もそれは例外ではない。
「名無し…あけましておめでとう…」
「あけおめ。」
雑煮を用意していると台所へ顔を出してくる雨とジン太。
年越しの番組を見ていたからか、まだ少し眠そうだった。
「あけましておめでとう。はい、これお年玉。」
エプロンのポケットから取り出した、二人分のポチ袋。
まさか名無しから貰えるのは予想外だったのだろう。珍しく二人は顔を見合わせてポチ袋と彼女の顔を見比べた。
「…いいの?」
「うん。ほら、死神のお仕事始めたし。」
「じゃあ日本円じゃねーんじゃないのか?」
「ちゃんと換金はしてるよー。無駄遣いしないようにね」
そう言い含めると元気よく首を縦に振る雨とジン太。まだまだ年齢は中学生くらいなのだから、お年玉を貰って嬉しくないわけがない。
「さて。寝坊助店長でも起こしにいこうかな…」
笑う門には福来る。#お年玉
早朝までいた部屋へ戻れば、布団にくるまって浦原は相変わらず眠りこけていた。
もう数えるのも面倒になった歳を昨日重ねたばかりだというのに、寝顔だけはどこかあどけない。
ほんのり残る性交の後の匂いに顔が火照りそうになるが、ここは咳払いをひとつ。
締め切られたカーテンを開け、少し立て付けの悪い窓を全開にする。
冬の澄み切った空気が部屋の中に入り込み、こもった空気が撫でるように入れ替わった。
「浦原さん、おはようございます。お雑煮出来ていますよ?」
こんもり丸くなった布団の中でヌクヌクと眠る浦原の体を揺すれば、いつも以上に眠たげな眼がゆっくり開かれた。
「…名無しサン、姫始めの続きっスか?」
「しません。」
ピシャリと断ると同時に、頬へ熱がじわりと宿る。
昨晩散々したというのに、まだすると言うのか。この男は。
「冗談っスよぉ…」と言いながら、もそもそと布団を被ったまま起き上がる浦原。
外跳ね気味の髪は寝癖がついており、好き放題方々へ向かっている。
「改めまして、あけましておめでとうございます。さ、いつも通り来客もあるでしょう?髭を剃って、髪を整えて、顔を洗ってきてください」
一見そのように見えないが、彼はかなりの有名人でそれなりに権力だって持っている。
新年の挨拶に訪れる客は少なくはない。
いつものヨレヨレの格好では、流石に新年から締まるわけがなくて。
「あぁ、そうだ。名無しサン。」
棚の引き出しから取り出したのは、真っ赤なポチ袋。
イノシシのイラストが描かれた小さな封筒はとても可愛らしいものだった。
「はい。お年玉っス」
「え。私、もう働き始めましたけど、」
「それはそれ。これはこれっス。どうひっくり返っても未成年なんっスから、素直に受け取るのが花っスよ」
その未成年に散々手を出しているのはどこの誰だ。
喉まで出かかった言葉をぐっと呑み込み、思わず困ったように笑う名無し。
「じゃ、じゃあ、その、頂きます。」
「はい。それでパーッと新年デートでお買い物しましょ。」
嬉しそうに目尻を下げる浦原を見て、断れるはずがなくて。
毎年貰っていたお年玉は貯金していたが、今年くらいはパーッと使ってもいいかもしれない。
「新年のご挨拶とか落ち着いたら、ですけどね」
「えー。福袋なくなっちゃうっスよぉ」
不満そうな言葉とは裏腹に柔らかく破顔する浦原を見て、ついついつられて名無しも笑う。
いつもの朝。
冬の澄み渡るような爽やかな空気。
違うのは、また一年新たな年になったことだけ。
「名無しサン。今年も改めまして、よろしくお願いしますっス。」
「こちらこそ。よろしくお願いします」
ぺこりと頭を下げ、目が合えば自然と緩む表情筋。
あぁ。今年もいい年になりそうだ。
勿論、浦原商店もそれは例外ではない。
「名無し…あけましておめでとう…」
「あけおめ。」
雑煮を用意していると台所へ顔を出してくる雨とジン太。
年越しの番組を見ていたからか、まだ少し眠そうだった。
「あけましておめでとう。はい、これお年玉。」
エプロンのポケットから取り出した、二人分のポチ袋。
まさか名無しから貰えるのは予想外だったのだろう。珍しく二人は顔を見合わせてポチ袋と彼女の顔を見比べた。
「…いいの?」
「うん。ほら、死神のお仕事始めたし。」
「じゃあ日本円じゃねーんじゃないのか?」
「ちゃんと換金はしてるよー。無駄遣いしないようにね」
そう言い含めると元気よく首を縦に振る雨とジン太。まだまだ年齢は中学生くらいなのだから、お年玉を貰って嬉しくないわけがない。
「さて。寝坊助店長でも起こしにいこうかな…」
笑う門には福来る。#お年玉
早朝までいた部屋へ戻れば、布団にくるまって浦原は相変わらず眠りこけていた。
もう数えるのも面倒になった歳を昨日重ねたばかりだというのに、寝顔だけはどこかあどけない。
ほんのり残る性交の後の匂いに顔が火照りそうになるが、ここは咳払いをひとつ。
締め切られたカーテンを開け、少し立て付けの悪い窓を全開にする。
冬の澄み切った空気が部屋の中に入り込み、こもった空気が撫でるように入れ替わった。
「浦原さん、おはようございます。お雑煮出来ていますよ?」
こんもり丸くなった布団の中でヌクヌクと眠る浦原の体を揺すれば、いつも以上に眠たげな眼がゆっくり開かれた。
「…名無しサン、姫始めの続きっスか?」
「しません。」
ピシャリと断ると同時に、頬へ熱がじわりと宿る。
昨晩散々したというのに、まだすると言うのか。この男は。
「冗談っスよぉ…」と言いながら、もそもそと布団を被ったまま起き上がる浦原。
外跳ね気味の髪は寝癖がついており、好き放題方々へ向かっている。
「改めまして、あけましておめでとうございます。さ、いつも通り来客もあるでしょう?髭を剃って、髪を整えて、顔を洗ってきてください」
一見そのように見えないが、彼はかなりの有名人でそれなりに権力だって持っている。
新年の挨拶に訪れる客は少なくはない。
いつものヨレヨレの格好では、流石に新年から締まるわけがなくて。
「あぁ、そうだ。名無しサン。」
棚の引き出しから取り出したのは、真っ赤なポチ袋。
イノシシのイラストが描かれた小さな封筒はとても可愛らしいものだった。
「はい。お年玉っス」
「え。私、もう働き始めましたけど、」
「それはそれ。これはこれっス。どうひっくり返っても未成年なんっスから、素直に受け取るのが花っスよ」
その未成年に散々手を出しているのはどこの誰だ。
喉まで出かかった言葉をぐっと呑み込み、思わず困ったように笑う名無し。
「じゃ、じゃあ、その、頂きます。」
「はい。それでパーッと新年デートでお買い物しましょ。」
嬉しそうに目尻を下げる浦原を見て、断れるはずがなくて。
毎年貰っていたお年玉は貯金していたが、今年くらいはパーッと使ってもいいかもしれない。
「新年のご挨拶とか落ち着いたら、ですけどね」
「えー。福袋なくなっちゃうっスよぉ」
不満そうな言葉とは裏腹に柔らかく破顔する浦原を見て、ついついつられて名無しも笑う。
いつもの朝。
冬の澄み渡るような爽やかな空気。
違うのは、また一年新たな年になったことだけ。
「名無しサン。今年も改めまして、よろしくお願いしますっス。」
「こちらこそ。よろしくお願いします」
ぺこりと頭を下げ、目が合えば自然と緩む表情筋。
あぁ。今年もいい年になりそうだ。