意地悪そうに笑う顔。

悪巧みを考えて、笑う顔。

きっと皆がよく見るのは、胡散臭い笑顔だろうけど。


「名無しサン。」

穏やかに微笑んで、柔らかく丸む目元。
その視線は恥ずかしくなるほど優しくて、思わず目を背けたくなるほど真っ直ぐで。


好きなのに直視出来ない。
見れば思わず目眩がしそうで。


（それは、私だけに見せてくれる表情だから、尚更）

顔がいいのも考えものだ。
こんなにも、優しく笑うだけでこの破壊力なのだから。

嗚呼。今日も貴方に目が眩む。



17.めまい



無邪気に笑う顔。

何かを思いついた時に笑う顔。

きっと皆がよく見るのは、愛想よく笑う彼女の笑顔だろう。


「名無しサン。」

名前を呼べば、照れくさそうに逸らされる視線。
未だに初々しいその仕草に、自然と笑みが零れてしまうのは生理現象だ。

あまり人に見せることがない、彼女の一面。
努力家で、照れ屋で、大人びていると思えばどこか子供っぽくて。
第三者から見ればボクが翻弄しているように見えるのだろうけど、意外と弄ばれているのはボクの方だったりする。…かもしれない。


「…な、何ですか。」

少し恥ずかしそうに見上げられ、視線があえばとろりと蕩けるような、はにかみ笑顔。

健康的な頬を僅かに染めて、ふにゃりと笑う名無しの笑顔は、きっとボクだけのもの。


嗚呼。めまいがしそうなくらい、今日も君に夢中なんだ。