short story
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ふわりと息を吐き出せば、溶けるように宙に消える靄。
あたたかい、濡れた息。
冬の痛いくらいに乾いた空気をほのかに湿らせる。
「春が待ち遠しいっスねぇ」
羽織の中の袖口に手を入れて、浦原が商店の入口から顔を出す。
寒そうな足元は相変わらず裸足に下駄だ。
霜焼けにならないのだろうか・と名無しは小さく首を傾げるばかりだった。
「そうですね。冬も嫌いじゃないですけど、やっぱり過ごしやすい方がいいですし」
箒を動かせば、粉々になった枯葉の欠片や砂埃が丁寧に集められる。
普段の格好だからだろう、のこのこと外に出てきた浦原が小さく身震いする。やはり作務衣に羽織だけだと寒かったらしい。
「春になったらどっか行きたいっスね」
「いいですね、お弁当とか持って。」
首元に巻いていたマフラーを解き、名無しはそっと浦原の首に掛けた。
彼女の優しさか、それとも与えられた温もり故か。浦原は目元を緩ませて「ありがとうございます」と破顔する。
はにかんだように笑う口元から、名無しと同じように白い吐息を零して。
「ベタっスけどお花見とか。」
「いいですね。温かいお茶もたっぷり用意して、」
「「もちろん、お花見団子も用意して。」」
図らずも一字一句重なった言葉に、思わずお互い顔を見合わせて笑ってしまう。
くすくすと鈴が転がるように笑えば、冬の空気にふわふわと白い湯気が立ち上った。
13.吐息
あぁ。本当に春が待ち遠しい。
あたたかい、濡れた息。
冬の痛いくらいに乾いた空気をほのかに湿らせる。
「春が待ち遠しいっスねぇ」
羽織の中の袖口に手を入れて、浦原が商店の入口から顔を出す。
寒そうな足元は相変わらず裸足に下駄だ。
霜焼けにならないのだろうか・と名無しは小さく首を傾げるばかりだった。
「そうですね。冬も嫌いじゃないですけど、やっぱり過ごしやすい方がいいですし」
箒を動かせば、粉々になった枯葉の欠片や砂埃が丁寧に集められる。
普段の格好だからだろう、のこのこと外に出てきた浦原が小さく身震いする。やはり作務衣に羽織だけだと寒かったらしい。
「春になったらどっか行きたいっスね」
「いいですね、お弁当とか持って。」
首元に巻いていたマフラーを解き、名無しはそっと浦原の首に掛けた。
彼女の優しさか、それとも与えられた温もり故か。浦原は目元を緩ませて「ありがとうございます」と破顔する。
はにかんだように笑う口元から、名無しと同じように白い吐息を零して。
「ベタっスけどお花見とか。」
「いいですね。温かいお茶もたっぷり用意して、」
「「もちろん、お花見団子も用意して。」」
図らずも一字一句重なった言葉に、思わずお互い顔を見合わせて笑ってしまう。
くすくすと鈴が転がるように笑えば、冬の空気にふわふわと白い湯気が立ち上った。
13.吐息
あぁ。本当に春が待ち遠しい。