short story
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「浦原さんの指、ちょっとカサカサしてますね」
事の発端はその一言。
03.指先
「いやぁ、すみません。名無しサン」
「いえいえ、このくらいは。」
飾りっけのないハンドクリームを手に取り、丁寧に指先へ塗り込んでいく名無し。
固くなっていた皮膚を解すように、ささくれになりかけていた爪の付け根へ、丁寧に丁寧に。
薬品を触っている割には荒れていない方だと自負しているが、それでもやっぱりこの季節になると乾燥が目立つ。
それを目敏く見つけた彼女が取り出したのはハンドクリームだ。
格別可愛らしいパッケージでもなく、ましてや甘い匂いがするわけでもない。
シンプルで味気ない、まさに『スキンケア』といったパッケージのハンドクリームは、何となく彼女の性格を表しているようだった。
「劇薬とか扱ったりするんですから、ちゃんと手袋しなくちゃダメですよ?」
「分かってるんっスけど、つい素手で触っちゃうんっスよねぇ」
もちろん劇薬は手袋をしているが、常時手袋をしているわけではない。
刺激は少ないものだとしても、それは蓄積されてこうして肌荒れに繋がっているわけで。
「しかしよく見てますねぇ、名無しサン。」
「そりゃ浦原さんの手、好きですから」
息を吐くように紡がれるのは、素直な好意。
思わず面食らってしまってついつい彼女の顔を見つめてしまった。
「え。それは意外っス」
「そうですか?ほら、浦原さんの手は魔法の手みたいじゃないですか」
機嫌良く笑いながら名無しがはにかむ。
色んなものを発明したり、直したり。
不可能を可能にしてしまう魔法の手だ・と。
純粋な尊敬の念が込められた真っ直ぐな言葉に、ボクは思わず目眩がした。
「でもカサカサっスけどね」
「ふふっ、おかげで私がお手入れさせて貰えるんですけど」
触れる体温。
心地よい手触り。
どんなものより尊くて愛おしい、
(名無しサンの手こそ、魔法の指先っスけどね)
こんなにも、ボクはキミに夢中。
事の発端はその一言。
03.指先
「いやぁ、すみません。名無しサン」
「いえいえ、このくらいは。」
飾りっけのないハンドクリームを手に取り、丁寧に指先へ塗り込んでいく名無し。
固くなっていた皮膚を解すように、ささくれになりかけていた爪の付け根へ、丁寧に丁寧に。
薬品を触っている割には荒れていない方だと自負しているが、それでもやっぱりこの季節になると乾燥が目立つ。
それを目敏く見つけた彼女が取り出したのはハンドクリームだ。
格別可愛らしいパッケージでもなく、ましてや甘い匂いがするわけでもない。
シンプルで味気ない、まさに『スキンケア』といったパッケージのハンドクリームは、何となく彼女の性格を表しているようだった。
「劇薬とか扱ったりするんですから、ちゃんと手袋しなくちゃダメですよ?」
「分かってるんっスけど、つい素手で触っちゃうんっスよねぇ」
もちろん劇薬は手袋をしているが、常時手袋をしているわけではない。
刺激は少ないものだとしても、それは蓄積されてこうして肌荒れに繋がっているわけで。
「しかしよく見てますねぇ、名無しサン。」
「そりゃ浦原さんの手、好きですから」
息を吐くように紡がれるのは、素直な好意。
思わず面食らってしまってついつい彼女の顔を見つめてしまった。
「え。それは意外っス」
「そうですか?ほら、浦原さんの手は魔法の手みたいじゃないですか」
機嫌良く笑いながら名無しがはにかむ。
色んなものを発明したり、直したり。
不可能を可能にしてしまう魔法の手だ・と。
純粋な尊敬の念が込められた真っ直ぐな言葉に、ボクは思わず目眩がした。
「でもカサカサっスけどね」
「ふふっ、おかげで私がお手入れさせて貰えるんですけど」
触れる体温。
心地よい手触り。
どんなものより尊くて愛おしい、
(名無しサンの手こそ、魔法の指先っスけどね)
こんなにも、ボクはキミに夢中。