short story
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十五夜の夜。
月にはうさぎが住んでいる・と信じていたのは、いつ頃までだっただろうか。
雲ひとつない、ぽっかりと浮かんだ淡い金色。
月のクレーターを『うさぎのようだ』と例えた最初の人は、さぞかし詩人だったのだろう。
夜中に伝令神機が鳴り響き、現場に呼び出される。
すっかり手に馴染んだ斬魄刀を振るえば、討伐はあっという間に片付いた。
枯葉が散らばった浦原商店の中庭へ降り立てば、出掛けた時にはなかったはずの人影がひとつ。
「あれ?浦原さん、起きていたんですか?」
「たまたまっスよぉ。おかえりなさい、名無しサン。お疲れ様っス」
「ふふっ、ただいま帰りました。」
彼の言う『たまたま』はこんな高確率ではないはず。
元々浦原の眠りは浅い上、夜中に起きていることなんてしょっちゅうだ。
誰の目にもつかないような、『いってきます』を言うこともなければ、『ただいま』とも本来言うはずがない時間でも、彼は必ずと言っていい程迎えてくれる。
伝令神機を持っているのだから虚の出現は知っていて当然なのだが、それでも毎度のように出迎えてくれるのは…照れくさいような、少しだけ申し訳ないような。
複雑な心境であることは確かなのだが、頬は否が応でも緩んでしまう。
「浦原さん、浦原さん。」
「はい?」
「月が、綺麗ですね」
かの夏目漱石が創り出した、最高の口説き文句。
今日は十五夜だ。普段言えない一言も、今なら許されるだろう。
拝啓、十五夜ミッドナイト
「――あぁ。月が綺麗っスね。」
ゆるゆると笑う彼の笑顔が、いつも以上に優しく見えたのは、
きっと、月光のせい。
月にはうさぎが住んでいる・と信じていたのは、いつ頃までだっただろうか。
雲ひとつない、ぽっかりと浮かんだ淡い金色。
月のクレーターを『うさぎのようだ』と例えた最初の人は、さぞかし詩人だったのだろう。
夜中に伝令神機が鳴り響き、現場に呼び出される。
すっかり手に馴染んだ斬魄刀を振るえば、討伐はあっという間に片付いた。
枯葉が散らばった浦原商店の中庭へ降り立てば、出掛けた時にはなかったはずの人影がひとつ。
「あれ?浦原さん、起きていたんですか?」
「たまたまっスよぉ。おかえりなさい、名無しサン。お疲れ様っス」
「ふふっ、ただいま帰りました。」
彼の言う『たまたま』はこんな高確率ではないはず。
元々浦原の眠りは浅い上、夜中に起きていることなんてしょっちゅうだ。
誰の目にもつかないような、『いってきます』を言うこともなければ、『ただいま』とも本来言うはずがない時間でも、彼は必ずと言っていい程迎えてくれる。
伝令神機を持っているのだから虚の出現は知っていて当然なのだが、それでも毎度のように出迎えてくれるのは…照れくさいような、少しだけ申し訳ないような。
複雑な心境であることは確かなのだが、頬は否が応でも緩んでしまう。
「浦原さん、浦原さん。」
「はい?」
「月が、綺麗ですね」
かの夏目漱石が創り出した、最高の口説き文句。
今日は十五夜だ。普段言えない一言も、今なら許されるだろう。
拝啓、十五夜ミッドナイト
「――あぁ。月が綺麗っスね。」
ゆるゆると笑う彼の笑顔が、いつも以上に優しく見えたのは、
きっと、月光のせい。