short story
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まるでどこかの天空の城でも隠れているんじゃないのか・と錯覚するような、大きな入道雲。
天高くせり上がった雲は、鮮やかな快晴の青に酷くはっきりと映えていた。
夏の朝。
まだ朝の7時頃だというのに蝉は元気よく鳴いている。
もう残暑見舞いが届く時期だというのに、残暑という言葉とは裏腹にまだまだ茹だるような暑さは続いていた。
寝間着の甚平を着たままボクは一階へ降りた。
まだ眠たい目をこすり、ふぁ・と欠伸をひとつ零す。
昨晩まで隣で寝ていたはずの彼女の姿が見つからず、こうやって探しに来たわけだが…さてさて、どこにいるのやら。
中庭で微かに聞こえる水音。
せせらぎと言うには些か雑な水流音が耳に届いた。
その音源へ向かって足を進めれば、ホースを片手に中庭で水撒きをしている名無しの姿があった。
シャワーホースを使うわけでもなく、ホースの先に親指を当て豪快に水を噴霧している。
普段所作が丁寧だというのに、こういうところは意外と雑なのだ。彼女は。
「名無しサン、おはようございます」
「あ。おはようございます、浦原さん」
赤い実を片手に、ホースを片手に持った名無しが元気な笑顔を浮かべる。
あぁ、朝から眩しい。そして可愛い。
左手に持っているのは…恐らく彼女が育てたトマトだろう。
昨日まで赤々と実っていたトマトがひとつ減っていた。
「美味しそうっスねぇ」
「食べますか?まだありますよ。」
小さな家庭菜園スペースとなっている浦原商店の中庭は、彼女のテリトリーだ。
勝手に荒らすことはジン太であっても許されない。
「じゃあ頂きます」と答えれば、毟るように収穫される真っ赤なトマト。
ホースの水で豪快に洗ったものを「はいどうぞ」と手渡しされた。
食べかけだったトマトを齧りながら、名無しは相変わらず中庭に水を撒いている。
ここ最近雨も降っていないからだろう。念入りに水やりを行っていた。
トマトの薄皮をかじる、名無しの白い歯。
酸味のある独特な水分が地面に滴るが、気にする様子は見られない。
本当にこういうところは豪快だ。
「美味しいっスか?」
「勿論。自分で育てたお野菜は美味しいですよ」
トマトの汁を赤い舌で舐めとり、子供みたいに無邪気に笑う名無し。
あぁ、ギャップ萌えといえばいいのだろうか。
彼女を中心とした、夏休みの一幕のような光景を目にして、ボクはなんだか目眩を覚えた。
眩しい眩しい、夏の景色。
それはどんなものよりも鮮やかに、瑞々しく。
夏色フォトグラフ
水滴がキラキラと光るトマトをひと齧りすれば、どこか甘酸っぱい 夏の味がした。
天高くせり上がった雲は、鮮やかな快晴の青に酷くはっきりと映えていた。
夏の朝。
まだ朝の7時頃だというのに蝉は元気よく鳴いている。
もう残暑見舞いが届く時期だというのに、残暑という言葉とは裏腹にまだまだ茹だるような暑さは続いていた。
寝間着の甚平を着たままボクは一階へ降りた。
まだ眠たい目をこすり、ふぁ・と欠伸をひとつ零す。
昨晩まで隣で寝ていたはずの彼女の姿が見つからず、こうやって探しに来たわけだが…さてさて、どこにいるのやら。
中庭で微かに聞こえる水音。
せせらぎと言うには些か雑な水流音が耳に届いた。
その音源へ向かって足を進めれば、ホースを片手に中庭で水撒きをしている名無しの姿があった。
シャワーホースを使うわけでもなく、ホースの先に親指を当て豪快に水を噴霧している。
普段所作が丁寧だというのに、こういうところは意外と雑なのだ。彼女は。
「名無しサン、おはようございます」
「あ。おはようございます、浦原さん」
赤い実を片手に、ホースを片手に持った名無しが元気な笑顔を浮かべる。
あぁ、朝から眩しい。そして可愛い。
左手に持っているのは…恐らく彼女が育てたトマトだろう。
昨日まで赤々と実っていたトマトがひとつ減っていた。
「美味しそうっスねぇ」
「食べますか?まだありますよ。」
小さな家庭菜園スペースとなっている浦原商店の中庭は、彼女のテリトリーだ。
勝手に荒らすことはジン太であっても許されない。
「じゃあ頂きます」と答えれば、毟るように収穫される真っ赤なトマト。
ホースの水で豪快に洗ったものを「はいどうぞ」と手渡しされた。
食べかけだったトマトを齧りながら、名無しは相変わらず中庭に水を撒いている。
ここ最近雨も降っていないからだろう。念入りに水やりを行っていた。
トマトの薄皮をかじる、名無しの白い歯。
酸味のある独特な水分が地面に滴るが、気にする様子は見られない。
本当にこういうところは豪快だ。
「美味しいっスか?」
「勿論。自分で育てたお野菜は美味しいですよ」
トマトの汁を赤い舌で舐めとり、子供みたいに無邪気に笑う名無し。
あぁ、ギャップ萌えといえばいいのだろうか。
彼女を中心とした、夏休みの一幕のような光景を目にして、ボクはなんだか目眩を覚えた。
眩しい眩しい、夏の景色。
それはどんなものよりも鮮やかに、瑞々しく。
夏色フォトグラフ
水滴がキラキラと光るトマトをひと齧りすれば、どこか甘酸っぱい 夏の味がした。