short story
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浦原商店の中庭に生えている木も、秋になってはらはらと落葉し始めていた。
その中で異彩を放つのは、甘い匂い、金茶の星屑に似た花。
秋の風物詩である、金木犀。
風が吹けばハラハラと粉のように落ちる、小さく可憐な花。
『エアコンはもういりませんね』と機嫌よく言いながら名無しが窓を開け放っているものだから、商店内は甘い香りがほんのり漂っていた。
クチナシほど甘ったるい匂いでもなく、沈丁花のようにしっとりとした香りでもない。
程よく花らしい、秋をどこか感じさせるような匂いが、ボクは嫌いじゃなかった。
中庭で機嫌よく掃き掃除をしている名無し。
浦原商店エプロンをつけたまま、薄手の長袖Tシャツと…これまた色気のない、良くいえば動きやすい格好で働いていた。
「精が出るっスねぇ、名無しサン。」
「あ。浦原さん。機械いじりは一段落ついたんですか?」
「えぇ、まぁ。」
新しい義骸弄りも一段落つき、こうして外の空気を吸いに来た。もとい、彼女に会いたくなって。
「お茶でも入れましょうか?」
「そっスねぇ…あ。名無しサン、髪に金木犀が乗っかってますよぉ」
「え。どこですか?」
はたはたと手で払ってはいるが、髪に絡まっているのか中々落ちない。
思わず苦笑いを零して手招きすれば、竹箒を片手に縁側へ走り寄ってきた。
取ってくれ・と言わんばかりに頭を差し出してくる名無しは、なんと言うか。やっぱり可愛い。
こういう小さな甘えも昔はなかったというのに、なんだか感慨深い気持ちに浸ってしまいそうになる。
「じっとしてくださいねぇ」
「はーい。」
縁側でボクが立っているせいもあるが、いつもより身長差が大きく開いていた。
おかげで彼女の旋毛がよく見える。見飽きたといえば、見飽きているのだけど。
指先で摘んでは地面に落とす。
金木犀の下にあった枯葉も集めていたからだろう。
思った以上に、鮮やかなオレンジの小花が黒髪に飾られていた。
「名無しサン、取れたっスよぉ」
「ありがとうございます!」
ふにゃりと笑いながら、ボクを無遠慮に見上げる彼女。
うん。今日もやっぱり可愛い。
いつもより高い位置から、腰を屈めて。
掠めるように唇を奪えばふわりと香る金木犀の香り。
「ん。どういたしまして」
「な、なななっ、不意打ちは、よくないです!」
紅葉のように顔を赤らめ、細い腕で顔を隠す名無し。
…あぁ、もう一度しておけばよかった。やっぱり足りない。
「えー、ご褒美っスよ。」
おかわりが欲しいと言えば、彼女は応じてくれるのか。はたまた照れ隠しで怒ってしまうのだろうか。
ささやかな楽しみを胸中に秘めて、ボクはおかわり要求を名無しに告げた。
キンモクセイ・シャワー
結局おかわりは一度で済まず、ついつい名無しが息切れしてしまう程に深追いしてしまい…
「う、浦原さん、焼き芋なし!絶対にあげません!」
「えっ!?それは酷いっスよ、名無しサン!!」
集めた枯葉で開催される、焼き芋パーティーから除外されそうになるのは…はたまた別の話。
その中で異彩を放つのは、甘い匂い、金茶の星屑に似た花。
秋の風物詩である、金木犀。
風が吹けばハラハラと粉のように落ちる、小さく可憐な花。
『エアコンはもういりませんね』と機嫌よく言いながら名無しが窓を開け放っているものだから、商店内は甘い香りがほんのり漂っていた。
クチナシほど甘ったるい匂いでもなく、沈丁花のようにしっとりとした香りでもない。
程よく花らしい、秋をどこか感じさせるような匂いが、ボクは嫌いじゃなかった。
中庭で機嫌よく掃き掃除をしている名無し。
浦原商店エプロンをつけたまま、薄手の長袖Tシャツと…これまた色気のない、良くいえば動きやすい格好で働いていた。
「精が出るっスねぇ、名無しサン。」
「あ。浦原さん。機械いじりは一段落ついたんですか?」
「えぇ、まぁ。」
新しい義骸弄りも一段落つき、こうして外の空気を吸いに来た。もとい、彼女に会いたくなって。
「お茶でも入れましょうか?」
「そっスねぇ…あ。名無しサン、髪に金木犀が乗っかってますよぉ」
「え。どこですか?」
はたはたと手で払ってはいるが、髪に絡まっているのか中々落ちない。
思わず苦笑いを零して手招きすれば、竹箒を片手に縁側へ走り寄ってきた。
取ってくれ・と言わんばかりに頭を差し出してくる名無しは、なんと言うか。やっぱり可愛い。
こういう小さな甘えも昔はなかったというのに、なんだか感慨深い気持ちに浸ってしまいそうになる。
「じっとしてくださいねぇ」
「はーい。」
縁側でボクが立っているせいもあるが、いつもより身長差が大きく開いていた。
おかげで彼女の旋毛がよく見える。見飽きたといえば、見飽きているのだけど。
指先で摘んでは地面に落とす。
金木犀の下にあった枯葉も集めていたからだろう。
思った以上に、鮮やかなオレンジの小花が黒髪に飾られていた。
「名無しサン、取れたっスよぉ」
「ありがとうございます!」
ふにゃりと笑いながら、ボクを無遠慮に見上げる彼女。
うん。今日もやっぱり可愛い。
いつもより高い位置から、腰を屈めて。
掠めるように唇を奪えばふわりと香る金木犀の香り。
「ん。どういたしまして」
「な、なななっ、不意打ちは、よくないです!」
紅葉のように顔を赤らめ、細い腕で顔を隠す名無し。
…あぁ、もう一度しておけばよかった。やっぱり足りない。
「えー、ご褒美っスよ。」
おかわりが欲しいと言えば、彼女は応じてくれるのか。はたまた照れ隠しで怒ってしまうのだろうか。
ささやかな楽しみを胸中に秘めて、ボクはおかわり要求を名無しに告げた。
キンモクセイ・シャワー
結局おかわりは一度で済まず、ついつい名無しが息切れしてしまう程に深追いしてしまい…
「う、浦原さん、焼き芋なし!絶対にあげません!」
「えっ!?それは酷いっスよ、名無しサン!!」
集めた枯葉で開催される、焼き芋パーティーから除外されそうになるのは…はたまた別の話。