short story
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「屋台、ですか?」
「そうっス。ほら、ここ数年はバタバタしてたでしょう?出店出来ていなかったんっスよ」
出張!浦原商店繁盛記
周りがついていけない程のテンションの高さの父と、中学生になっても兄離れ出来ていない妹二人に連れられ黒崎一護は祭りに来ていた。
後でチャドや石田、井上や竜貴と合流する予定なのだが…
(集合場所が浦原商店の屋台ってどうなんだよ)
っていうか、屋台出していたのか。
確かにここ数年はバタバタしていてそれどころじゃなかっただろうが、初耳とはいえ何だか頭が痛くなってきた。
「お、黒崎サーン」
「げ、浦原さん。何やってんだよ」
「客寄せっスよぉ。ウチ、今年は出店してるんでぇ」
知ってる。
というか、チャドから聞いた。
浦原が持っているのは『最後尾はこちら!』という看板だ。
白いTシャツは浦原商店の制服なのか。
どこかで見た護廷十三隊のシンボルに似たデザインで、『浦』というマークが大きくプリントされていた。
前から思っていたが、著作権的に大丈夫なのだろうか。
(というか、この人Tシャツが死ぬほど似合わねーな)
いつもの胡散臭い作務衣と羽織の姿で見慣れているせいか、和服以外を着ている姿は違和感があった。
無精髭に、首から下げた紺色の手ぬぐい。
この格好はこの格好で胡散臭い雰囲気であることには間違いないのだが。
「店長。列が乱れてる、って名無しが言ってるぞ」
「あらら。はいはい〜。浦原商店屋台はこちらに並んで下さいね〜。
あ。黒崎サン。茶渡サン達なら黒崎サンの分の焼きそば買ってもうテントにいらっしゃいますよぉ」
赤髪の、相変わらず生意気そうなジン太がぶっきらぼうに浦原さんに声をかける。
どうやら名無しの小間使いのようだが…
(っていうかこの列、全部浦原商店の屋台の列かよ)
浦原が指差した方向は、浦原商店が出店している屋台の裏側に設営している仮設テントだ。
あれだ。運動会の本部でよく見るヤツだ。
ご丁寧に長机と椅子までレンタルされている。飲食スペース、といったところか。
だからこんな中心部から離れた場所に屋台を立てていたのか。
「いらっしゃい!何にされますか?」
聞きなれた少女の声。
頭には紺色の手拭いが巻かれ、紺色の浦原商店のエプロンを身につけている。
(…生き生きしてんなぁ。)
焼きそば用のコテを両手に持ち、快活な笑顔で接客する名無しはまさに商売人だ。
なんなら浦原さんよりもそれっぽく見える。
よく見れば並んでいる人には小さな紙コップで麦茶のサービスをしている。
これは雨がひとりひとり丁寧に配っていた。
ジン太は会計。鉄裁はセットで購入できるビールやソフトドリンクの販売。
名無しは言わずもがな調理担当だ。
明るい表情でハキハキと接客する様は、まさに彼女にとって天職なのかもしれない。
全て出来たてを提供しているあたり、並んでいる人数を把握しながら調理しているのだろう。
料理は手慣れているとは聞いていたが、ここまで屋台の回転数を落とさず捌いているところを見ると、もはやプロだ。
「おーい、黒崎くーん!」
浴衣を着た井上が中腰になって大きく手を振っている。
その周りには勿論石田達やウチの家族もいるのだが…
「オイ、見たことある奴らばっかじゃねーか。」
仕事しろよ・と呆れながら周りを見渡す。
隊長は勿論、副隊長や下手したら席官のヤツらまでいる。
いくら浦原商店が尸魂界と取引があって、いくらここが重霊地とはいえ、このメンバーは異様だ。
義骸をしっかり用意して来るあたり徹底されており、思わず閉口してしまう。
「そう言うな、一護。こんなものを配られたらな」
ウサギのお面を頭に被ったルキアが、ビラを一枚取り出した。
『なんと!名無しサンの作った特製焼きそばが食べられるのは空座町夏祭り・浦原商店屋台だけ!』
手作り感満載のチラシ。これを作ったのは間違いなく浦原さんだろう。
っていうか、どんだけアイツは護廷十三隊の胃袋掴んでるんだ。ある意味影の支配者じゃねーか。
「で、美味かったのか?」
「当たり前ではないか。」
「とっとと食わねーと冷めるぞ」
着崩した浴衣を纏った恋次がチャドの方を指差した。
おそらく俺の分だろう。
焼きそばパックに輪ゴムがかけられ、ご丁寧にペットボトルの緑茶までつけられている。
(っていうか白哉まで食ってる)
少し離れた席でツルツルと上品に焼きそばを食べている四大貴族。
アイツもこういうの食べたりするんだな。
乱菊さんや檜佐木さんもいる。
冬獅郎も連れて来られたのか。…っていう夏梨と話をしている。知り合いだったのか?
まさかの涅も。いくら名無しの上司と言えども、彼がこの場にいるのは些か不自然だった。
京楽さんは…っていうかビール開けすぎだろ。
副隊長さんが呆れているぞ。
他にも見知った面々が揃っており、今から何か事件が起きないか心配になってしまう程だ。
…本当に、何事も起こらなければいいのだが。
輪ゴムを外してトレーを開ければ、目玉焼きが乗った焼きそばが顔を出す。
なるほど、これは珍しい。
確かに長蛇の列が出来るのも納得だ。
肉や野菜の具もしっかり入っているし、なにより味付けがしっかりしていそうな色だ。
…これ利益出るのか?
目玉焼きの玉子を割って食べれば、
「あ。すげぇ美味ェ」
名無し特製の焼きそばは、屋台の焼きそばとは思えない程に美味しかった。
***
もうすぐ花火が打ち上がるというのに、客足は途絶えない。
くたびれた様子もなく接客する名無しの姿は、もう死神やめて食堂開いた方がしっくりしてしまうレベルだ。
「名無し。何か買ってきてやろうか?」
一瞬の一息ついた間に声をかければ、方々からリクエストが飛んでくる。
「じゃあアタシは焼き鳥で〜」
「私は…クレープ…。ブルーベリー味…」
「俺はたこ焼きな。」
「私は牛串でお願いしますぞ」
「じゃありんご飴がいいなぁ。」
浦原さん、雨、ジン太、鉄裁さん、名無しの順番だ。
っていうか、
「オイ!そんなに持てるわけねーだろ!」
何だかんだで買ってきてしまう俺は、我ながら損な性格だと思った。
そんな、夏の一幕。
「そうっス。ほら、ここ数年はバタバタしてたでしょう?出店出来ていなかったんっスよ」
出張!浦原商店繁盛記
周りがついていけない程のテンションの高さの父と、中学生になっても兄離れ出来ていない妹二人に連れられ黒崎一護は祭りに来ていた。
後でチャドや石田、井上や竜貴と合流する予定なのだが…
(集合場所が浦原商店の屋台ってどうなんだよ)
っていうか、屋台出していたのか。
確かにここ数年はバタバタしていてそれどころじゃなかっただろうが、初耳とはいえ何だか頭が痛くなってきた。
「お、黒崎サーン」
「げ、浦原さん。何やってんだよ」
「客寄せっスよぉ。ウチ、今年は出店してるんでぇ」
知ってる。
というか、チャドから聞いた。
浦原が持っているのは『最後尾はこちら!』という看板だ。
白いTシャツは浦原商店の制服なのか。
どこかで見た護廷十三隊のシンボルに似たデザインで、『浦』というマークが大きくプリントされていた。
前から思っていたが、著作権的に大丈夫なのだろうか。
(というか、この人Tシャツが死ぬほど似合わねーな)
いつもの胡散臭い作務衣と羽織の姿で見慣れているせいか、和服以外を着ている姿は違和感があった。
無精髭に、首から下げた紺色の手ぬぐい。
この格好はこの格好で胡散臭い雰囲気であることには間違いないのだが。
「店長。列が乱れてる、って名無しが言ってるぞ」
「あらら。はいはい〜。浦原商店屋台はこちらに並んで下さいね〜。
あ。黒崎サン。茶渡サン達なら黒崎サンの分の焼きそば買ってもうテントにいらっしゃいますよぉ」
赤髪の、相変わらず生意気そうなジン太がぶっきらぼうに浦原さんに声をかける。
どうやら名無しの小間使いのようだが…
(っていうかこの列、全部浦原商店の屋台の列かよ)
浦原が指差した方向は、浦原商店が出店している屋台の裏側に設営している仮設テントだ。
あれだ。運動会の本部でよく見るヤツだ。
ご丁寧に長机と椅子までレンタルされている。飲食スペース、といったところか。
だからこんな中心部から離れた場所に屋台を立てていたのか。
「いらっしゃい!何にされますか?」
聞きなれた少女の声。
頭には紺色の手拭いが巻かれ、紺色の浦原商店のエプロンを身につけている。
(…生き生きしてんなぁ。)
焼きそば用のコテを両手に持ち、快活な笑顔で接客する名無しはまさに商売人だ。
なんなら浦原さんよりもそれっぽく見える。
よく見れば並んでいる人には小さな紙コップで麦茶のサービスをしている。
これは雨がひとりひとり丁寧に配っていた。
ジン太は会計。鉄裁はセットで購入できるビールやソフトドリンクの販売。
名無しは言わずもがな調理担当だ。
明るい表情でハキハキと接客する様は、まさに彼女にとって天職なのかもしれない。
全て出来たてを提供しているあたり、並んでいる人数を把握しながら調理しているのだろう。
料理は手慣れているとは聞いていたが、ここまで屋台の回転数を落とさず捌いているところを見ると、もはやプロだ。
「おーい、黒崎くーん!」
浴衣を着た井上が中腰になって大きく手を振っている。
その周りには勿論石田達やウチの家族もいるのだが…
「オイ、見たことある奴らばっかじゃねーか。」
仕事しろよ・と呆れながら周りを見渡す。
隊長は勿論、副隊長や下手したら席官のヤツらまでいる。
いくら浦原商店が尸魂界と取引があって、いくらここが重霊地とはいえ、このメンバーは異様だ。
義骸をしっかり用意して来るあたり徹底されており、思わず閉口してしまう。
「そう言うな、一護。こんなものを配られたらな」
ウサギのお面を頭に被ったルキアが、ビラを一枚取り出した。
『なんと!名無しサンの作った特製焼きそばが食べられるのは空座町夏祭り・浦原商店屋台だけ!』
手作り感満載のチラシ。これを作ったのは間違いなく浦原さんだろう。
っていうか、どんだけアイツは護廷十三隊の胃袋掴んでるんだ。ある意味影の支配者じゃねーか。
「で、美味かったのか?」
「当たり前ではないか。」
「とっとと食わねーと冷めるぞ」
着崩した浴衣を纏った恋次がチャドの方を指差した。
おそらく俺の分だろう。
焼きそばパックに輪ゴムがかけられ、ご丁寧にペットボトルの緑茶までつけられている。
(っていうか白哉まで食ってる)
少し離れた席でツルツルと上品に焼きそばを食べている四大貴族。
アイツもこういうの食べたりするんだな。
乱菊さんや檜佐木さんもいる。
冬獅郎も連れて来られたのか。…っていう夏梨と話をしている。知り合いだったのか?
まさかの涅も。いくら名無しの上司と言えども、彼がこの場にいるのは些か不自然だった。
京楽さんは…っていうかビール開けすぎだろ。
副隊長さんが呆れているぞ。
他にも見知った面々が揃っており、今から何か事件が起きないか心配になってしまう程だ。
…本当に、何事も起こらなければいいのだが。
輪ゴムを外してトレーを開ければ、目玉焼きが乗った焼きそばが顔を出す。
なるほど、これは珍しい。
確かに長蛇の列が出来るのも納得だ。
肉や野菜の具もしっかり入っているし、なにより味付けがしっかりしていそうな色だ。
…これ利益出るのか?
目玉焼きの玉子を割って食べれば、
「あ。すげぇ美味ェ」
名無し特製の焼きそばは、屋台の焼きそばとは思えない程に美味しかった。
***
もうすぐ花火が打ち上がるというのに、客足は途絶えない。
くたびれた様子もなく接客する名無しの姿は、もう死神やめて食堂開いた方がしっくりしてしまうレベルだ。
「名無し。何か買ってきてやろうか?」
一瞬の一息ついた間に声をかければ、方々からリクエストが飛んでくる。
「じゃあアタシは焼き鳥で〜」
「私は…クレープ…。ブルーベリー味…」
「俺はたこ焼きな。」
「私は牛串でお願いしますぞ」
「じゃありんご飴がいいなぁ。」
浦原さん、雨、ジン太、鉄裁さん、名無しの順番だ。
っていうか、
「オイ!そんなに持てるわけねーだろ!」
何だかんだで買ってきてしまう俺は、我ながら損な性格だと思った。
そんな、夏の一幕。