「どしたんっスか？それ。」

近くのスーパーの買い物から帰ってきた名無し。
床に買い物袋を置いて、少し埃っぽいガラスの花瓶を綺麗に洗い、花を生けていた。

「顔見知りのおばあちゃんに分けてもらったんですよ。綺麗でしょ」

それは大輪の花に負けないくらい、いい笑顔。
日陰になっている台所でも分かるほどの、鮮やかな黄色が目に眩しかった。

「向日葵、っスか。」
「はい。庭で沢山咲いたらしくて」

確かに彼女には向日葵が良く似合う。
ぱっと華やぐような笑顔は、夏を象徴するこの花によく似ていた。

「知ってます？本数で花言葉が違うんですよ、向日葵って。」

実は以前、彼女が慌てて燃やした本をボクは後でこっそり買い直していた。
それとなくページを捲ってた時にチラリと向日葵のページは見た…気がする。
鮮やかな向日葵色に染まった花畑の写真が目について、たまたまページをめくる手を止めたのだ。

確か、

「999本の向日葵、ご用意しましょっか？」

そう言っていつも通り笑うと、目の前の彼女は照れくさそうに笑い返してくれる。

「飾るのに困っちゃうので、99本くらいでお願いします。」

気持ちだけ受け取っておきますね。

名無しはそう言って、向日葵のような笑顔ではにかんだ。



ずっと一緒にいよう



（あぁ、その返し方はズルいっスよ）