short story
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それはいつも通りの朝のはずだった。
ブルーデイ・ホリデイ
「名無しサン、降りて来ないっスねぇ」
鉄裁が作った味噌汁を啜りながら呟く。今日の具材はなめこだ。
「…店長。」
「いやいや、昨晩はしてないっスよ」
ウキウキと部屋に行ったら丁度伝令神機の司令が入った時だったらしい。
義骸を布団に横たわらせながら「あ、仕事いってきまーす」と軽い足取りで名無しが窓から出ていった。取り残されたボクの心境といったら。
霊圧遮断義骸に入っているにも関わらず、部屋から霊圧の気配がする。
もしかしたら霊力のガス抜きに天狼が出てきているかもしれない。
いや、それでも早起きの彼女が朝食の時間になっても出てこないのはおかしい。
もしかしたら風邪を引いているのかもしれないし、負傷している可能性も考えられる。
「ちょっとボク、様子見てきますね」
手早く朝食をかき込み、食卓に箸を置く。
食後のお茶も一口だけ飲んで足早に階段を上った。
北東の角部屋が彼女の寝室だ。
廊下の突き当りの扉をノックしてみるが、中から彼女の返事はない。
そっと扉を開ければ、こんもりと膨らんだ布団と、その周りを困ったようにウロウロする天狼の姿。
「どしたんっスか、名無しサン」
『血の匂いがする』
耳としっぽを垂らして天狼がクゥクゥ鳴いている。
布団からはウンウン苦しそうな唸り声が聞こえてくるばかり。
「名無しサン、大丈夫っスか?」
布団の上から摩ってやればもぞりと動く布の塊。
ボソリと呟いた彼女の一言は、
「………………………バファリンください…」
今にも死にそうな声で薬の要求をしてきた。
***
「大変っスねぇ、女の子は。」
「…今回は、むちゃくちゃ痛くて動けなかったんですよ…」
天狼は手伝えることがないと悟ったのか、一階で日向ぼっこしている。
朝食の味噌汁と白いご飯を猫まんまにしたものを少量食べて、名無しは青白い顔で薬を二錠白湯で飲んだ。
「あぁ、いつもより遅いですもんねぇ」
確かに彼女の月のものの予定は先週だったはず。
重い日、ということは昨晩から始まったのだろうか。初日と二日目は痛いと聞く。
「…あれ。なんで浦原さん知ってるんですか?」
「そりゃ恋人の生理予定日くらいは。」
「教えた覚えありませんけど。」
布団から顔をひょこりと出し、ジト目でこちらを見てくる視線は些か冷ややかだ。
「まぁまぁ。それより湯たんぽ作ったんっスけど、使います?」
「…頂きます…」
布に包まれた湯たんぽを渡せば、もぞりと抱え込む名無し。
どうやら本当に痛いらしい。眉間のシワが凄いことになっている。
「生理痛和らぐツボマッサージ、しましょっか?」
「でも、」
「まぁまぁ、遠慮なさらず」
手を取って親指と人差し指の間の合谷を押す。
万能のツボと言われているが、効果あるかどうかは知らない。多少気休めにはなるだろう。
「手があったかくなってきました…」
「眠くなってきちゃいました?」
「少し、」
薬の副作用もあるのだろう。目元がトロリと蕩けてきている。
「今日はお仕事代わりますから、ゆっくり休んでください」
「そういうわけには…」
「年中無休で働かれてるんっスから。ね。」
そう言いながら頭を撫でれば「はい…」と渋々返事が返ってきた。
そう考えたら、もしかしたら生理痛が痛い時も我慢して働いていたのかもしれない。
来月から労わるように気をつけよう。
「おやすみなさい、名無しサン」
柔らかく髪を梳いてやれば、ゆるゆると彼女は小さく笑った。
ブルーデイ・ホリデイ
「名無しサン、降りて来ないっスねぇ」
鉄裁が作った味噌汁を啜りながら呟く。今日の具材はなめこだ。
「…店長。」
「いやいや、昨晩はしてないっスよ」
ウキウキと部屋に行ったら丁度伝令神機の司令が入った時だったらしい。
義骸を布団に横たわらせながら「あ、仕事いってきまーす」と軽い足取りで名無しが窓から出ていった。取り残されたボクの心境といったら。
霊圧遮断義骸に入っているにも関わらず、部屋から霊圧の気配がする。
もしかしたら霊力のガス抜きに天狼が出てきているかもしれない。
いや、それでも早起きの彼女が朝食の時間になっても出てこないのはおかしい。
もしかしたら風邪を引いているのかもしれないし、負傷している可能性も考えられる。
「ちょっとボク、様子見てきますね」
手早く朝食をかき込み、食卓に箸を置く。
食後のお茶も一口だけ飲んで足早に階段を上った。
北東の角部屋が彼女の寝室だ。
廊下の突き当りの扉をノックしてみるが、中から彼女の返事はない。
そっと扉を開ければ、こんもりと膨らんだ布団と、その周りを困ったようにウロウロする天狼の姿。
「どしたんっスか、名無しサン」
『血の匂いがする』
耳としっぽを垂らして天狼がクゥクゥ鳴いている。
布団からはウンウン苦しそうな唸り声が聞こえてくるばかり。
「名無しサン、大丈夫っスか?」
布団の上から摩ってやればもぞりと動く布の塊。
ボソリと呟いた彼女の一言は、
「………………………バファリンください…」
今にも死にそうな声で薬の要求をしてきた。
***
「大変っスねぇ、女の子は。」
「…今回は、むちゃくちゃ痛くて動けなかったんですよ…」
天狼は手伝えることがないと悟ったのか、一階で日向ぼっこしている。
朝食の味噌汁と白いご飯を猫まんまにしたものを少量食べて、名無しは青白い顔で薬を二錠白湯で飲んだ。
「あぁ、いつもより遅いですもんねぇ」
確かに彼女の月のものの予定は先週だったはず。
重い日、ということは昨晩から始まったのだろうか。初日と二日目は痛いと聞く。
「…あれ。なんで浦原さん知ってるんですか?」
「そりゃ恋人の生理予定日くらいは。」
「教えた覚えありませんけど。」
布団から顔をひょこりと出し、ジト目でこちらを見てくる視線は些か冷ややかだ。
「まぁまぁ。それより湯たんぽ作ったんっスけど、使います?」
「…頂きます…」
布に包まれた湯たんぽを渡せば、もぞりと抱え込む名無し。
どうやら本当に痛いらしい。眉間のシワが凄いことになっている。
「生理痛和らぐツボマッサージ、しましょっか?」
「でも、」
「まぁまぁ、遠慮なさらず」
手を取って親指と人差し指の間の合谷を押す。
万能のツボと言われているが、効果あるかどうかは知らない。多少気休めにはなるだろう。
「手があったかくなってきました…」
「眠くなってきちゃいました?」
「少し、」
薬の副作用もあるのだろう。目元がトロリと蕩けてきている。
「今日はお仕事代わりますから、ゆっくり休んでください」
「そういうわけには…」
「年中無休で働かれてるんっスから。ね。」
そう言いながら頭を撫でれば「はい…」と渋々返事が返ってきた。
そう考えたら、もしかしたら生理痛が痛い時も我慢して働いていたのかもしれない。
来月から労わるように気をつけよう。
「おやすみなさい、名無しサン」
柔らかく髪を梳いてやれば、ゆるゆると彼女は小さく笑った。