short story
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またやってしまった。
以前、布団を干しっぱなしで学校に出かけ、何組かその日の夜に使えなくなった事件があった。
今回は死神業をしている時にやらかしてしまった。今日のお天気お姉さんは嘘つきだ。
おかげで約一年前程と同じシチュエーション、同じような川の字になって全員と眠ることになった。
去年と違うのは、名無しが死神になっていること。
浦原と晴れて恋人同士になり、体の関係もあるということ。
ちなみに今回も雨に言われた。
弟と妹を楽しみにしている、と。
丑三つ時攻防戦
寝静まった夜中の二時。
夕立から本格的な雨に変わったのだろう、瓦を弾く雨音は止まない。
(眠れない)
四人分の寝息が居間を包んでる。
せめてもの抵抗で浦原に対して背中を向けて横になったが、背中越しに触れる体温は微睡むくらい心地いい。
目の前にはすぅすぅと可憐な寝息を立てる雨。
なにが弟か妹、だ。
全く、中学校で何を習っているんだ。最近の性教育はこんなに露骨に教えているのだろうか。
「学校に訴えてみます?」
「いやでも最近の若者の性が乱れてるから早めにそういう教育始まってるのかもしれないし
って、起きてるんですか」
「いやぁ。名無しサン、眠れないのかと思って」
肩越しに振り返れば、淡い橙色に光るナツメ球の下でヘラヘラと笑っている浦原。
肘枕をついてこちらを楽しそうに眺めていた。
「身の危険を感じているからですかね?」
「おや。それは大変だ。ボクがしっかりボディーガードしましょっか?」
「えええ…誰が原因だと思ってるんですか…」
「さぁ?」
帽子を脱いだ彼は、百年前と何も変わっていない。強いて言うなら無精髭が生えたくらいか。
ほんの少しだけ、昔を思い出した。
「しかし雨の夜は5月でも冷えますねぇ」
「う、わっ」
もぞもぞと布団の下で身体を抱き寄せられる。
背中越しに感じる体温がより近くなり、彼の右腕は私の頭の下に滑り込まされた。
いわゆる、腕枕だ。
フリーになっていた左腕はガッチリと腰に回され、離れようにも離れられない。
「あの、」
「ん?」
「…当たってますけど」
「当ててるんスよ」
何が、とは敢えて言わない。
私の尻に彼の下腹部が当たっている。
主張しているソレに対して抗議してみるが、無駄に終わった。うん、知ってた。
「顔。赤いっスよ、名無しサン」
「…気のせいです」
「雨、弟か妹が欲しいって言ってましたねぇ」
「いや、ジン太と言う弟がいるじゃないですか」
「ジン太も下に弟か妹がいたら落ち着いてくれるんっスかね?」
「ちょっと、何勝手に家族計画立てて…っもが、」
不意に浦原の大きな手で口を塞がれる。
少し豆が出来ている掌からは、いつも使っているハンドソープの匂いがした。
白々しく「しー」と言う、後ろの男が少しだけ疎ましい。声を荒らげてしまったのは誰のせいだと思ってるんだ。
「ダメっスよ、名無しサン。皆サン起きちゃいますから」
「…むぐ、」
身体を抱き抱えられ、片手で口を塞がれていると変な気分になる。まるでこれは人質のようだ。
何だか癪で、どうにかして一泡吹かせたい。
そうだ。掌を舐めたら気持ち悪くて手を離すのではないだろうか。
噛むのは…やめよう。予想以上に痛かったら、少しだけ罪悪感がわく。
そうと決まれば。
ぺろっ
「……」
「…名無しサン」
「ふが、」
「誘ってるんスか?」
そうきたか!違う、断じて違う!
やはりちょっと痛く噛む方がよかったかもしれない!
むぐむぐと声をあげるも、くぐもった情けない声になるだけだった。
「まぁまぁ、そう言わず」
左手がするりと寝間着の裾から入ってくる。
少しだけ冷たい指先が脇腹を滑り、思わず身を固くした。
まさか、こんなところで。
「もう少しご飯食べた方がいいんじゃいいんじゃないんスか?ボクはもう少し柔らかい方が好みなんっスけどね」
「んむっ、むぐ…っ」
余計なお世話だ!と言いたいけれど、あまり大きな声も出せない。
誰かが起きたら、この状況を見られるということと同義だった。
そうこうしているうちに下着の上から胸を掴まれる。
胸と下着の間に指を滑り込ませれば、触って欲しくない場所はすぐ近くだった。
指先で捏ねられれば、弱い電流が流れたように思わず体が跳ねる。
浦原の長い指が勝手知ったるかのように触れば、それは呆気なかった。
「ほら、もうたってきた」
「んぐ、ふぁ…」
口を塞いでいた手を離し、代わりに指を二本程口内に入れられる。
生き物のように口の中を荒らす二本の指と、下着の中をまさぐる指先。
触られてもない下半身が疼くのが嫌でもわかった。
「ら、めれす、ってふぁ…っ」
「何言ってるか聞こえないっスよ、名無し」
こういう時だけさん付けじゃないのは、ずるい。
コソコソと小声で話をするのももうそろそろ限界だ。
流されそうになる理性を食い止めるように、好き勝手する浦原の腕を軽く叩く。
意外と筋肉のついた男の腕は、残念ながらノーダメージだろうが抵抗の意は示せたようだった。
「ぷはっ…き、今日は、ダメですってば」
「じゃあ明日はいいってことです?」
……。
今のは、完全に言葉のあやだ。
「明日も、」
「じゃあ明後日」
身体の関係になっているのは、これが初めてじゃない。
けれど、ねちっこいのだ。目の前の男は。
他の男性と経験はないが胸を張って言えることがひとつ。浦原は、多分かなり絶倫だ。
付き合わされるこっちの身にもなって欲しい。
「いつもボクからじゃないですかぁ。たまには名無しサンから誘って欲しいっス」
「ぐ…」
そう言われると、断りにくいのを知ってて言うんだ。この浦原という男は。
100%確信犯なのがタチが悪い。
こっちがそう言われると断れないのも知った上で、だ。
「……………じゃあ明日」
「約束っスよ。よぉし、色々準備を」
「しなくていいです」
準備って、なんの準備だ。
スルスルと服の中に入っていた手は、条件に納得したのかすんなり出て行った。
ホッとしたのも束の間、ぐいっと身体を正面に向けさせられる。
ばちりと目が合えば、そこには嬉しそうな色を浮かべたスケベ店主の顔。
「ん、むっ」
掠めるように触れる、柔らかい唇の感触。
唇から鼻先、瞼の上から、額、頬。
啄むように次々と落ちてくる唇。
無精髭が時々触れるのが、少しだけくすぐったかった。
「ん…、今日はもう何もしないっスよ」
「…した後に、言われても」
最後に、一矢報いたい。
両手で浦原の頬をおもむろに包んで、先程至るところに触れてきた無遠慮な唇に、名無しからキスを送る。
一瞬触れただけですぐさま離すと、ぽかんとした顔の浦原。
途端に、仕掛けたはずのこっちが恥ずかしくなってきた。
「〜〜っ、おやすみ、なさい」
肌蹴た彼の胸板に顔を埋め、赤くなった顔を隠した。
彼女は気づいていない。
自分の心臓が早鐘を打つように鳴り響いているように、目の前の男の心臓がバクバクと音を立てていることに。
(…今のは、反則っス)
彼女がこの情けない顔を見なくてよかった、という安堵感と、落ち着いてきた情欲が再びわいてきて、浦原が落ち着いて眠れたのは彼此一時間ほど経った後のことだった。
以前、布団を干しっぱなしで学校に出かけ、何組かその日の夜に使えなくなった事件があった。
今回は死神業をしている時にやらかしてしまった。今日のお天気お姉さんは嘘つきだ。
おかげで約一年前程と同じシチュエーション、同じような川の字になって全員と眠ることになった。
去年と違うのは、名無しが死神になっていること。
浦原と晴れて恋人同士になり、体の関係もあるということ。
ちなみに今回も雨に言われた。
弟と妹を楽しみにしている、と。
丑三つ時攻防戦
寝静まった夜中の二時。
夕立から本格的な雨に変わったのだろう、瓦を弾く雨音は止まない。
(眠れない)
四人分の寝息が居間を包んでる。
せめてもの抵抗で浦原に対して背中を向けて横になったが、背中越しに触れる体温は微睡むくらい心地いい。
目の前にはすぅすぅと可憐な寝息を立てる雨。
なにが弟か妹、だ。
全く、中学校で何を習っているんだ。最近の性教育はこんなに露骨に教えているのだろうか。
「学校に訴えてみます?」
「いやでも最近の若者の性が乱れてるから早めにそういう教育始まってるのかもしれないし
って、起きてるんですか」
「いやぁ。名無しサン、眠れないのかと思って」
肩越しに振り返れば、淡い橙色に光るナツメ球の下でヘラヘラと笑っている浦原。
肘枕をついてこちらを楽しそうに眺めていた。
「身の危険を感じているからですかね?」
「おや。それは大変だ。ボクがしっかりボディーガードしましょっか?」
「えええ…誰が原因だと思ってるんですか…」
「さぁ?」
帽子を脱いだ彼は、百年前と何も変わっていない。強いて言うなら無精髭が生えたくらいか。
ほんの少しだけ、昔を思い出した。
「しかし雨の夜は5月でも冷えますねぇ」
「う、わっ」
もぞもぞと布団の下で身体を抱き寄せられる。
背中越しに感じる体温がより近くなり、彼の右腕は私の頭の下に滑り込まされた。
いわゆる、腕枕だ。
フリーになっていた左腕はガッチリと腰に回され、離れようにも離れられない。
「あの、」
「ん?」
「…当たってますけど」
「当ててるんスよ」
何が、とは敢えて言わない。
私の尻に彼の下腹部が当たっている。
主張しているソレに対して抗議してみるが、無駄に終わった。うん、知ってた。
「顔。赤いっスよ、名無しサン」
「…気のせいです」
「雨、弟か妹が欲しいって言ってましたねぇ」
「いや、ジン太と言う弟がいるじゃないですか」
「ジン太も下に弟か妹がいたら落ち着いてくれるんっスかね?」
「ちょっと、何勝手に家族計画立てて…っもが、」
不意に浦原の大きな手で口を塞がれる。
少し豆が出来ている掌からは、いつも使っているハンドソープの匂いがした。
白々しく「しー」と言う、後ろの男が少しだけ疎ましい。声を荒らげてしまったのは誰のせいだと思ってるんだ。
「ダメっスよ、名無しサン。皆サン起きちゃいますから」
「…むぐ、」
身体を抱き抱えられ、片手で口を塞がれていると変な気分になる。まるでこれは人質のようだ。
何だか癪で、どうにかして一泡吹かせたい。
そうだ。掌を舐めたら気持ち悪くて手を離すのではないだろうか。
噛むのは…やめよう。予想以上に痛かったら、少しだけ罪悪感がわく。
そうと決まれば。
ぺろっ
「……」
「…名無しサン」
「ふが、」
「誘ってるんスか?」
そうきたか!違う、断じて違う!
やはりちょっと痛く噛む方がよかったかもしれない!
むぐむぐと声をあげるも、くぐもった情けない声になるだけだった。
「まぁまぁ、そう言わず」
左手がするりと寝間着の裾から入ってくる。
少しだけ冷たい指先が脇腹を滑り、思わず身を固くした。
まさか、こんなところで。
「もう少しご飯食べた方がいいんじゃいいんじゃないんスか?ボクはもう少し柔らかい方が好みなんっスけどね」
「んむっ、むぐ…っ」
余計なお世話だ!と言いたいけれど、あまり大きな声も出せない。
誰かが起きたら、この状況を見られるということと同義だった。
そうこうしているうちに下着の上から胸を掴まれる。
胸と下着の間に指を滑り込ませれば、触って欲しくない場所はすぐ近くだった。
指先で捏ねられれば、弱い電流が流れたように思わず体が跳ねる。
浦原の長い指が勝手知ったるかのように触れば、それは呆気なかった。
「ほら、もうたってきた」
「んぐ、ふぁ…」
口を塞いでいた手を離し、代わりに指を二本程口内に入れられる。
生き物のように口の中を荒らす二本の指と、下着の中をまさぐる指先。
触られてもない下半身が疼くのが嫌でもわかった。
「ら、めれす、ってふぁ…っ」
「何言ってるか聞こえないっスよ、名無し」
こういう時だけさん付けじゃないのは、ずるい。
コソコソと小声で話をするのももうそろそろ限界だ。
流されそうになる理性を食い止めるように、好き勝手する浦原の腕を軽く叩く。
意外と筋肉のついた男の腕は、残念ながらノーダメージだろうが抵抗の意は示せたようだった。
「ぷはっ…き、今日は、ダメですってば」
「じゃあ明日はいいってことです?」
……。
今のは、完全に言葉のあやだ。
「明日も、」
「じゃあ明後日」
身体の関係になっているのは、これが初めてじゃない。
けれど、ねちっこいのだ。目の前の男は。
他の男性と経験はないが胸を張って言えることがひとつ。浦原は、多分かなり絶倫だ。
付き合わされるこっちの身にもなって欲しい。
「いつもボクからじゃないですかぁ。たまには名無しサンから誘って欲しいっス」
「ぐ…」
そう言われると、断りにくいのを知ってて言うんだ。この浦原という男は。
100%確信犯なのがタチが悪い。
こっちがそう言われると断れないのも知った上で、だ。
「……………じゃあ明日」
「約束っスよ。よぉし、色々準備を」
「しなくていいです」
準備って、なんの準備だ。
スルスルと服の中に入っていた手は、条件に納得したのかすんなり出て行った。
ホッとしたのも束の間、ぐいっと身体を正面に向けさせられる。
ばちりと目が合えば、そこには嬉しそうな色を浮かべたスケベ店主の顔。
「ん、むっ」
掠めるように触れる、柔らかい唇の感触。
唇から鼻先、瞼の上から、額、頬。
啄むように次々と落ちてくる唇。
無精髭が時々触れるのが、少しだけくすぐったかった。
「ん…、今日はもう何もしないっスよ」
「…した後に、言われても」
最後に、一矢報いたい。
両手で浦原の頬をおもむろに包んで、先程至るところに触れてきた無遠慮な唇に、名無しからキスを送る。
一瞬触れただけですぐさま離すと、ぽかんとした顔の浦原。
途端に、仕掛けたはずのこっちが恥ずかしくなってきた。
「〜〜っ、おやすみ、なさい」
肌蹴た彼の胸板に顔を埋め、赤くなった顔を隠した。
彼女は気づいていない。
自分の心臓が早鐘を打つように鳴り響いているように、目の前の男の心臓がバクバクと音を立てていることに。
(…今のは、反則っス)
彼女がこの情けない顔を見なくてよかった、という安堵感と、落ち着いてきた情欲が再びわいてきて、浦原が落ち着いて眠れたのは彼此一時間ほど経った後のことだった。