short story
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梅雨。
轟々とけたたましい音を立てながら台風による前線で雨嵐が吹き荒ぶ。
台風の暴風圏内に入っていようが、虚は関係ない。連日の大雨で暇を持て余していた名無しの伝令神機が鳴ったのは30分程前。
そろそろ帰ってくる頃合だ。
浦原は大きなバスタオルを持って店の土間で待っていた。
ガラッ
ピシャッ!
引き戸が開けられた瞬間、横殴りに吹き付ける雨が一瞬店の床のコンクリートを濡らす。
戸は一瞬にして閉められたが、店を出た時とは打って変わって濡れ鼠になった名無しが雨水を滴らせて帰ったきた。
明るい灰色の床はあっという間に蝋色に濃くなり、小さな水溜りが出来てしまった。
「わー、名無しサン。災難っスね」
「本当に。服は重いし、髪はくしゃくしゃのベチャベチャですし、もう何でこんな日に限って虚が出てくるんですか」
「彼らは年中無休っスからねぇ」
お疲れ様っス。
そう言いながら厚手のバスタオルで包めば、不機嫌そうな目元が僅かに緩む。
いくら今は死神の霊体と言えども、このまま義骸に入るのは忍びない。
すぐそこに彼女の義骸は用意してあるが、せめて水気を拭いてから、という浦原なりの気遣いだ。
まぁ彼のこんな無けなしの気遣いは、ほんの僅かな親しい人物達にしか向けられないのだが。
「鉄裁サンがあったかい柚子茶を準備してくださってますから、後で貰ってくるといいっスよ」
「はぁい」
抱き締めるような形で髪を拭いてやれば、聞き分けのいい子供のように彼女は返事を返す。
だいぶ不愉快な水気が取れたのだろう、いつも通りの機嫌に戻ったきた。
柔らかいタオルに包まれて大人しく拭かれている姿は、風呂上がりの子供か小型犬のようだ。
「…犬だったら…柴犬、っスかねぇ」
「?、なんの話です?」
「いや、こっちの話っスよ」
雨ですっかり冷えた頬を指先で撫でれば、彼女は小さく首を傾げた。
台風とタオルと濡れ鼠と
たまには、こんな雨の日も悪くない。
轟々とけたたましい音を立てながら台風による前線で雨嵐が吹き荒ぶ。
台風の暴風圏内に入っていようが、虚は関係ない。連日の大雨で暇を持て余していた名無しの伝令神機が鳴ったのは30分程前。
そろそろ帰ってくる頃合だ。
浦原は大きなバスタオルを持って店の土間で待っていた。
ガラッ
ピシャッ!
引き戸が開けられた瞬間、横殴りに吹き付ける雨が一瞬店の床のコンクリートを濡らす。
戸は一瞬にして閉められたが、店を出た時とは打って変わって濡れ鼠になった名無しが雨水を滴らせて帰ったきた。
明るい灰色の床はあっという間に蝋色に濃くなり、小さな水溜りが出来てしまった。
「わー、名無しサン。災難っスね」
「本当に。服は重いし、髪はくしゃくしゃのベチャベチャですし、もう何でこんな日に限って虚が出てくるんですか」
「彼らは年中無休っスからねぇ」
お疲れ様っス。
そう言いながら厚手のバスタオルで包めば、不機嫌そうな目元が僅かに緩む。
いくら今は死神の霊体と言えども、このまま義骸に入るのは忍びない。
すぐそこに彼女の義骸は用意してあるが、せめて水気を拭いてから、という浦原なりの気遣いだ。
まぁ彼のこんな無けなしの気遣いは、ほんの僅かな親しい人物達にしか向けられないのだが。
「鉄裁サンがあったかい柚子茶を準備してくださってますから、後で貰ってくるといいっスよ」
「はぁい」
抱き締めるような形で髪を拭いてやれば、聞き分けのいい子供のように彼女は返事を返す。
だいぶ不愉快な水気が取れたのだろう、いつも通りの機嫌に戻ったきた。
柔らかいタオルに包まれて大人しく拭かれている姿は、風呂上がりの子供か小型犬のようだ。
「…犬だったら…柴犬、っスかねぇ」
「?、なんの話です?」
「いや、こっちの話っスよ」
雨ですっかり冷えた頬を指先で撫でれば、彼女は小さく首を傾げた。
台風とタオルと濡れ鼠と
たまには、こんな雨の日も悪くない。