short story
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夏から秋に、徐々に変化していくこの季節。
名無しの夕飯の買い出しに付き合った浦原の両手には買い物袋がぶら下がっていた。
重い荷物は彼が持ち、軽い買い物袋は名無しが持っている。
今日の夕飯は、どうやら鍋らしい。
ふわりと揺れる影
「もう夜は肌寒いですね」
少しずつ日が暮れるのが早くなってきた。
昼間は残暑がまだまだ残る気温であるにも関わらず、夜はすっかり秋の気配が立ち込めている。
「羽織貸しましょうか?」
「そしたら浦原さんが寒いじゃないですか」
「ボクは大丈夫っスよ。ほら」
買い物袋をアスファルトの上に置いて、羽織を脱いで名無しの肩へふわりと掛ける。
肩幅も裾も大きい羽織は、案の定ブカブカだ。肩にかけたままだとすぐにずり落ちてしまうだろう。
「じゃ、じゃあ…お借りします」と遠慮がちに袖を通す名無し。
袖は大いに余り、手の甲がやっと見えるくらいだ。裾も膝下くらいの丈で、明らかに浦原が着ている時とは別物のように見えた。
(か、可愛い…!)
彼シャツならぬ彼羽織だ。
全国の男が彼シャツに何かを見出す気持ちが理解出来た瞬間だった。
ふわふわと風に揺れる布に包まれた姿は、庇護欲を掻き立てるには十分すぎた。
「名無しサン、羽織の妖精みたいっスよ」
「なんですか、それ」
「見ます?撮ってあげますから」
伝令神機のカメラ機能で写真を撮れば、もう永久保存だ。
彼女に『今の格好がどんな状態になっているか見せるため』という名目で写真を堂々と撮れるなんて、我ながら策士だと思う。
「ほら」
「わ、黒い布が歩いてるみたいですね」
そう言ってクスクスと笑う名無し。
…今度自分と同じ作務衣と羽織を、名無しの丈に仕立て直して絶対に着せよう。可愛いに決まっている。
口には出さず、こっそりと心に誓う浦原だった。
名無しの夕飯の買い出しに付き合った浦原の両手には買い物袋がぶら下がっていた。
重い荷物は彼が持ち、軽い買い物袋は名無しが持っている。
今日の夕飯は、どうやら鍋らしい。
ふわりと揺れる影
「もう夜は肌寒いですね」
少しずつ日が暮れるのが早くなってきた。
昼間は残暑がまだまだ残る気温であるにも関わらず、夜はすっかり秋の気配が立ち込めている。
「羽織貸しましょうか?」
「そしたら浦原さんが寒いじゃないですか」
「ボクは大丈夫っスよ。ほら」
買い物袋をアスファルトの上に置いて、羽織を脱いで名無しの肩へふわりと掛ける。
肩幅も裾も大きい羽織は、案の定ブカブカだ。肩にかけたままだとすぐにずり落ちてしまうだろう。
「じゃ、じゃあ…お借りします」と遠慮がちに袖を通す名無し。
袖は大いに余り、手の甲がやっと見えるくらいだ。裾も膝下くらいの丈で、明らかに浦原が着ている時とは別物のように見えた。
(か、可愛い…!)
彼シャツならぬ彼羽織だ。
全国の男が彼シャツに何かを見出す気持ちが理解出来た瞬間だった。
ふわふわと風に揺れる布に包まれた姿は、庇護欲を掻き立てるには十分すぎた。
「名無しサン、羽織の妖精みたいっスよ」
「なんですか、それ」
「見ます?撮ってあげますから」
伝令神機のカメラ機能で写真を撮れば、もう永久保存だ。
彼女に『今の格好がどんな状態になっているか見せるため』という名目で写真を堂々と撮れるなんて、我ながら策士だと思う。
「ほら」
「わ、黒い布が歩いてるみたいですね」
そう言ってクスクスと笑う名無し。
…今度自分と同じ作務衣と羽織を、名無しの丈に仕立て直して絶対に着せよう。可愛いに決まっている。
口には出さず、こっそりと心に誓う浦原だった。