PINK PORTION
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今思えば、あれがいけなかったのだ。
軽率な自分を心の底から呪った。
PINK PORTION#01
何だろう、これは。
ジャム瓶に入れられた、蜂蜜のような液体。
とろりとした中の液体はイチゴジャムを煮詰めたような色だった。
昨晩鉄裁が作ったのだろうか?
固く閉じられたビンの蓋を開ければ、ふわりと甘い匂いが鼻腔を擽った。
興味本位でビンのふちについた液体を小指でなぞり、恐る恐る舌先に運んだ。
――甘い。途轍もなく、甘い。
脳髄まで痺れてしまうような甘味に思わず眉を顰めてしまう。
子供用の風邪薬のシロップを煮詰めたような、しかし人体に害はなさそうな味だ。
(…水を飲んでおこう)
口の中に残る甘味は少し味が濃すぎる。
そっと首を傾げながら、名無しは自室に戻って行ったのだった。
***
感じたのは違和感だった。
後で処理しておこうと思った、失敗作の薬。
尸魂界に行く前に、とりあえず台所に置いたのだが…
位置が、動いている。
誰かが触ったのか。
いや、毒ではないから正直死人が出るようなことはない。ないのだが。
アルミ製の蓋を開ければ、ふわりと香る甘い匂い。
濃厚な匂いのそれは、使うとしても希釈して使うものだ。
まぁ浦原が使うとしたら、一人しかいないのだが…
(雨とジン太は学校。鉄裁サンは町内会の日帰り旅行に出席。ってことは、)
思えば、台所に置いたのは少し軽率だったかもしれない。
しかも空いていたジャム瓶を使ったのだ。
もしかしたら彼女が『口にしている』かもしれない。
トントンと少し早めの足取りで階段を駆け上がり、彼女の私室のドアを叩く。
「名無しサン?起きてるんっスか?」
昨晩虚退治に追われ、徹夜明けだった名無し。
昼過ぎくらいまでには起きていると思っていたが…まだ寝ているのだろうか。
耳をすませば僅かに聞こえてくる布擦れの音。
呻きのような、くぐもった声が扉越しに聞こえてきた。
「名無しサン?」
ドアを開ければ、こんもりと丸くなった布団。
そこから亀のようにのそりと顔を出すのは、愛しの恋人だ。
が、いつもと様子が違う。
頬は赤く上気し、目元はとろりと蕩けている。
浦原の予想は当たらずとも遠からず・どころか、おそらく大当たりだろう。
「うら、はらさん、」
「名無しサン。もしかしてこれ食べました?」
布団の傍に座り込み、たぷりととろみのついた液体を目の前で揺らす。
甘い香を漂わせるその赤い液体は、恐らく見覚えのあるものだろう。
「…食べた、というか、舐めたというか、」
浦原はその答えを聞いて、喜べばいいのか自分の失態を責めればいいのか、途方もなく複雑な気持ちになった。
まぁ、実験の副産物で出来たといえば聞こえはいいが、つまるところ、
「すみません、これ失敗作の薬なんっス」
「……し、しぬん、ですか?無茶苦茶、さっきから身体が、あつくて、」
はくはくと息を繰り返し、名無しが不安そうに見上げてくる。
まぁそう思うのも無理はない。普段からロクなものを作っていないのだから。
「いやいや、死にはしませんよぉ。
……ただ、ちょっと、そのぉ…使えるかなぁ~って思って取っておいたものなので、害があるというか、ないというか、」
浦原が半笑いで瓶を揺らしながら、歯切れ悪く彼女の質問に答える。
それはまるで今から怒られるのを分かっている子供が、自分の悪事を親に告白する時のような態度で。
…子供にしては些か質が悪く、やりすぎた代物が出来上がっているのだから、最高に始末におえないのだが。
「まぁ、有り体に言えば媚薬ができちゃいまして。」
これが漫画ならば、てへ☆と効果音がつくだろう。
ついやっちゃったんだ、と言わんばかりにいい笑顔で答える浦原。
それに対して、顔が赤いのに青くした名無しはあんぐりと口を開けるしかなかった。
そう。
この時ほど約一時間前の名無し自身を、全力で殴りたくなるような衝動に駆られたことは、後にも先にもないだろう。
軽率な自分を心の底から呪った。
PINK PORTION#01
何だろう、これは。
ジャム瓶に入れられた、蜂蜜のような液体。
とろりとした中の液体はイチゴジャムを煮詰めたような色だった。
昨晩鉄裁が作ったのだろうか?
固く閉じられたビンの蓋を開ければ、ふわりと甘い匂いが鼻腔を擽った。
興味本位でビンのふちについた液体を小指でなぞり、恐る恐る舌先に運んだ。
――甘い。途轍もなく、甘い。
脳髄まで痺れてしまうような甘味に思わず眉を顰めてしまう。
子供用の風邪薬のシロップを煮詰めたような、しかし人体に害はなさそうな味だ。
(…水を飲んでおこう)
口の中に残る甘味は少し味が濃すぎる。
そっと首を傾げながら、名無しは自室に戻って行ったのだった。
***
感じたのは違和感だった。
後で処理しておこうと思った、失敗作の薬。
尸魂界に行く前に、とりあえず台所に置いたのだが…
位置が、動いている。
誰かが触ったのか。
いや、毒ではないから正直死人が出るようなことはない。ないのだが。
アルミ製の蓋を開ければ、ふわりと香る甘い匂い。
濃厚な匂いのそれは、使うとしても希釈して使うものだ。
まぁ浦原が使うとしたら、一人しかいないのだが…
(雨とジン太は学校。鉄裁サンは町内会の日帰り旅行に出席。ってことは、)
思えば、台所に置いたのは少し軽率だったかもしれない。
しかも空いていたジャム瓶を使ったのだ。
もしかしたら彼女が『口にしている』かもしれない。
トントンと少し早めの足取りで階段を駆け上がり、彼女の私室のドアを叩く。
「名無しサン?起きてるんっスか?」
昨晩虚退治に追われ、徹夜明けだった名無し。
昼過ぎくらいまでには起きていると思っていたが…まだ寝ているのだろうか。
耳をすませば僅かに聞こえてくる布擦れの音。
呻きのような、くぐもった声が扉越しに聞こえてきた。
「名無しサン?」
ドアを開ければ、こんもりと丸くなった布団。
そこから亀のようにのそりと顔を出すのは、愛しの恋人だ。
が、いつもと様子が違う。
頬は赤く上気し、目元はとろりと蕩けている。
浦原の予想は当たらずとも遠からず・どころか、おそらく大当たりだろう。
「うら、はらさん、」
「名無しサン。もしかしてこれ食べました?」
布団の傍に座り込み、たぷりととろみのついた液体を目の前で揺らす。
甘い香を漂わせるその赤い液体は、恐らく見覚えのあるものだろう。
「…食べた、というか、舐めたというか、」
浦原はその答えを聞いて、喜べばいいのか自分の失態を責めればいいのか、途方もなく複雑な気持ちになった。
まぁ、実験の副産物で出来たといえば聞こえはいいが、つまるところ、
「すみません、これ失敗作の薬なんっス」
「……し、しぬん、ですか?無茶苦茶、さっきから身体が、あつくて、」
はくはくと息を繰り返し、名無しが不安そうに見上げてくる。
まぁそう思うのも無理はない。普段からロクなものを作っていないのだから。
「いやいや、死にはしませんよぉ。
……ただ、ちょっと、そのぉ…使えるかなぁ~って思って取っておいたものなので、害があるというか、ないというか、」
浦原が半笑いで瓶を揺らしながら、歯切れ悪く彼女の質問に答える。
それはまるで今から怒られるのを分かっている子供が、自分の悪事を親に告白する時のような態度で。
…子供にしては些か質が悪く、やりすぎた代物が出来上がっているのだから、最高に始末におえないのだが。
「まぁ、有り体に言えば媚薬ができちゃいまして。」
これが漫画ならば、てへ☆と効果音がつくだろう。
ついやっちゃったんだ、と言わんばかりにいい笑顔で答える浦原。
それに対して、顔が赤いのに青くした名無しはあんぐりと口を開けるしかなかった。
そう。
この時ほど約一時間前の名無し自身を、全力で殴りたくなるような衝動に駆られたことは、後にも先にもないだろう。