short story
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レコードを選んでいたら、つい時間がかかってしまった。
選ぶのに夢中になっていたせいでもあるが、レジが混んでいたのも悪い…と、思う。いや、絶対そうだ。
名無しには少し悪いことをした。
レジの長蛇の列を見て、店の外で待っていると言っていた彼女を探すべく辺りを見回した。
「美術館はえっと、ここをまっすぐ行って、大通りを左に曲って…」
「難しいな、案内してくれないか?お嬢さん」
「えっと…連れの人に相談してみてもいいですか?」
少し離れた場所で名無しがやや小柄な背を一生懸命伸ばし、身振り手振りで道案内をしていた。
話しかけているのは俺と同い年か、少し年上くらいの白人だった。
「名無し。」
「あ、ダンテさん。おかえりなさい。あの、すぐそこの大通りにある美術館にこの人を案内したいんですけどいいですか?」
俺を見つけた途端、ぱあっと表情が明るくなる名無し。
悪意0・善意100の笑顔を浮かべている名無しに比べ、彼女に無謀にも話しかけてきた男は連れが俺だとは思わなかったのだろう。ヒクついた笑顔を張り付かせたまま、名無しの肩に置いていた手をそろりと離した。
っていうか誰の許可を得て触ってんだ、お前。
むかっ腹にきた俺は、悪魔にすら見せない…それはそれは完璧な営業スマイルを浮かべて言い放った。
「You are so shit.Google Is your friend.」
そう言い放つと「Sorry!」と言いながら男は走って人混みに消えていった。
「…グーグルはお友達…しか聞き取れなかったんですけど、どういう意味ですか?」
「ん?アレだよ、ニホンゴで言うところの『ググれカス』って意味だ」
最初の行は彼女が理解する必要はない。聞き取れないように早口で言ったのだから。
あれはナンパだろ、気をつけろ。
わざわざ見た目が欧米人っぽくないお前に、道尋ねるのは有り得ないだろ?
色々言いたいことはあるが、長らく待たせてしまった自分の失態だ。
喉まで出かかった言葉をぐっと飲み込んで、小さく溜息を吐いた。
「知らない人について行くな、って教わらなかったのか?」
「失礼ですね。だからダンテさん来てから相談したじゃないですか」
本当に、コイツは。
いや。善意の塊こそが彼女の魅力だ。
悪魔に向ける過敏な警戒心を少しは人間の男にも向けてもらいたいのは本音だが。
荷物を持った老婆がいれば、荷物を持った上で手を引いて、事務所とは逆方向だろうが家まで送り届けるような女だ。
それで俺が迷惑を被ることはないが、如何せん心配ではある。被りそうになる場合は今回のように必ず俺に確認を取るあたり、ある程度親切のボーダーラインは作っているようだ。
しかし世の中には他人の善意を利用して、騙したり奪ったりする人間はごまんといる。
まぁ、それに関しては俺が露払いすればいい話か。
誰にでもスキだらけ
「ホント、隙だらけだな」
「何ですか突然…」
「少しは警戒しないと、」
白昼堂々、彼女の耳に軽いリップ音を落とす。
本当は唇にしたいが、流石にそれは怒られそうなので控えた。事務所に帰ってからだな。
「こんな風にさっきの男にもキスされるぞ」
耳を押さえて真っ赤な顔で俺を見上げてくる名無し。…そんな顔するなよ、煽ってるのか?
「…以後気をつけます」と恥ずかしそうに言う彼女だが、まぁ期待しないようにしておこう。
性根に染み込んだお人好し体質は中々頑固だからだ。
恋人の俺が気をつければいい話か。簡単なことだ。
title by確かに恋だった
選ぶのに夢中になっていたせいでもあるが、レジが混んでいたのも悪い…と、思う。いや、絶対そうだ。
名無しには少し悪いことをした。
レジの長蛇の列を見て、店の外で待っていると言っていた彼女を探すべく辺りを見回した。
「美術館はえっと、ここをまっすぐ行って、大通りを左に曲って…」
「難しいな、案内してくれないか?お嬢さん」
「えっと…連れの人に相談してみてもいいですか?」
少し離れた場所で名無しがやや小柄な背を一生懸命伸ばし、身振り手振りで道案内をしていた。
話しかけているのは俺と同い年か、少し年上くらいの白人だった。
「名無し。」
「あ、ダンテさん。おかえりなさい。あの、すぐそこの大通りにある美術館にこの人を案内したいんですけどいいですか?」
俺を見つけた途端、ぱあっと表情が明るくなる名無し。
悪意0・善意100の笑顔を浮かべている名無しに比べ、彼女に無謀にも話しかけてきた男は連れが俺だとは思わなかったのだろう。ヒクついた笑顔を張り付かせたまま、名無しの肩に置いていた手をそろりと離した。
っていうか誰の許可を得て触ってんだ、お前。
むかっ腹にきた俺は、悪魔にすら見せない…それはそれは完璧な営業スマイルを浮かべて言い放った。
「You are so shit.Google Is your friend.」
そう言い放つと「Sorry!」と言いながら男は走って人混みに消えていった。
「…グーグルはお友達…しか聞き取れなかったんですけど、どういう意味ですか?」
「ん?アレだよ、ニホンゴで言うところの『ググれカス』って意味だ」
最初の行は彼女が理解する必要はない。聞き取れないように早口で言ったのだから。
あれはナンパだろ、気をつけろ。
わざわざ見た目が欧米人っぽくないお前に、道尋ねるのは有り得ないだろ?
色々言いたいことはあるが、長らく待たせてしまった自分の失態だ。
喉まで出かかった言葉をぐっと飲み込んで、小さく溜息を吐いた。
「知らない人について行くな、って教わらなかったのか?」
「失礼ですね。だからダンテさん来てから相談したじゃないですか」
本当に、コイツは。
いや。善意の塊こそが彼女の魅力だ。
悪魔に向ける過敏な警戒心を少しは人間の男にも向けてもらいたいのは本音だが。
荷物を持った老婆がいれば、荷物を持った上で手を引いて、事務所とは逆方向だろうが家まで送り届けるような女だ。
それで俺が迷惑を被ることはないが、如何せん心配ではある。被りそうになる場合は今回のように必ず俺に確認を取るあたり、ある程度親切のボーダーラインは作っているようだ。
しかし世の中には他人の善意を利用して、騙したり奪ったりする人間はごまんといる。
まぁ、それに関しては俺が露払いすればいい話か。
誰にでもスキだらけ
「ホント、隙だらけだな」
「何ですか突然…」
「少しは警戒しないと、」
白昼堂々、彼女の耳に軽いリップ音を落とす。
本当は唇にしたいが、流石にそれは怒られそうなので控えた。事務所に帰ってからだな。
「こんな風にさっきの男にもキスされるぞ」
耳を押さえて真っ赤な顔で俺を見上げてくる名無し。…そんな顔するなよ、煽ってるのか?
「…以後気をつけます」と恥ずかしそうに言う彼女だが、まぁ期待しないようにしておこう。
性根に染み込んだお人好し体質は中々頑固だからだ。
恋人の俺が気をつければいい話か。簡単なことだ。
title by確かに恋だった
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