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恐らく、違法な手段でパスポートを手に入れたのだろう。
バージルが名無しのパスポートを持ってやって来たのは、事件があった数日後だった。
『すぐに身辺整理して、戻ってきますから』
そう言ったものの、ダンテがあの手この手で日本に帰国する術を尽く潰しにかかろうとしてきたのは本当に困った。
バージルとレディ、トリッシュ三人で叱った後、やっと大人しくなったのだ。
普段はあんなに子供っぽいのに、剣を握れば勇ましく、口付けする時は――
…思い出したら恥ずかしくなったきた。考えるのをやめよう。
必要な荷物は送った。
手荷物はキャリーケースとバッグがひとつ。
私は、今から彼の元へ飛び立つ。
日本に心残りがないわけではないが、大丈夫。飛行機ですぐに来れる時代だ。
生まれ育った地を、改めて離れる。
別れを告げるように小さく一礼して、名無しは飛行機の搭乗口へ歩いた。
彼女の前髪は軽く靡き、まっすぐ前を見据える宝石のような目元を柔らかく撫でた。
spectrum#14
長いフライトは、腰に響く。
うんと伸びをすれば腰の付け根が悲鳴をあげたのが分かった。
初めて正規の方法で異国の地に降り立ち、名無しは挙動不審になったいた。
人、人、人。
道行く欧米人の波に呑まれそうになりながら、キャリーケースとバッグをしっかり掴んで南出口に向かう。
『日本と違ってスリが多いんだから、ちゃんと荷物は持っておくのよ。特に名無しは幼く見えるんだから』
帰国するにあたって、心配したレディとトリッシュに口酸っぱく言われた。幼く見えるのは…日本人だからだ。仕方ない。
『南出口が一番広いからな。そこで待ち合わせするといい』
丁寧に空港の地図を取り出して、教えてくれたのはバージルだ。
さて、肝心のお迎えに来てくれている彼はというと、
「Do you have luggage?」
「の、ノーセンキュー!」
突然背後から声が聞こえて、慌てて拙い英語で返答した。
知っている。これで荷物をよく盗まれる、と。
「……ぷっ。何だ、今の下手くそな英語」
暫く日本に戻ったから鈍ったのか?
そう言って笑うのは、声の主。
ダンテだ。
「わ、笑わなくても、いいじゃないですか」
「悪い悪い。ついな」
ククッ、と楽しそうに笑う彼に悪びれた様子はない。
仕方ない。耳にする英語なんて、一日一回掛かってくるダンテからの国際電話くらいしか聞く機会が暫くなかったのだから。
「その、お久しぶりです」
「おう」
「改めて、お世話になりますが、よろしくお願いします」
「あー、堅苦しいのはなしだ。それより言うことがあるだろ」
眩い銀髪を軽く掻き、ダンテは不満そうに口先を尖らせた。
コロコロと変わる彼の表情を見て、思わず笑みがこぼれる。
「えっと………た、ただいま!」
「おかえり。」
満足したように破顔して、ダンテは笑う。
長身をスっと屈め、掠めるようにキスを落とした。
「っだ、ダンテさん!」
「相変わらず耐性ねぇな。こっちじゃ普通だぞ、キスに馴れろよ」
「騙されませんよ、外国人の人達が再開した時にするのは、ほっぺをくっつけ合う『キス』ですもん」
むぅっとむくれれば、ダンテが心底面白そうに笑った。久しぶりに会った彼はいつもより上機嫌だ。
「正解。だけどな、」
もう一度、降ってくるキス。
「恋人なんだから、こっちでもいいんだよ」
そう言って楽しげに細められたアイスブルーの瞳。
二度目のキスに、顔が熱く火照るのが嫌でも分かった。
「あ…暑いから、早く行きましょう!熱中症になりますよ!」
「ほー。ホテルにか?」
「事務所です!」
ムキになって言い返せば「冗談だって」と笑いながらダンテが荷物を持ってくれた。
…本当に冗談なのか疑わしい。
「さて、帰るか。俺達の家に」
「…はい!」
見上げれば、彼の目のように透き通ったスカイブルーの快晴。燦々と照りつける眩い太陽。
この夏。私は今日から、彼の隣で生きていく。
バージルが名無しのパスポートを持ってやって来たのは、事件があった数日後だった。
『すぐに身辺整理して、戻ってきますから』
そう言ったものの、ダンテがあの手この手で日本に帰国する術を尽く潰しにかかろうとしてきたのは本当に困った。
バージルとレディ、トリッシュ三人で叱った後、やっと大人しくなったのだ。
普段はあんなに子供っぽいのに、剣を握れば勇ましく、口付けする時は――
…思い出したら恥ずかしくなったきた。考えるのをやめよう。
必要な荷物は送った。
手荷物はキャリーケースとバッグがひとつ。
私は、今から彼の元へ飛び立つ。
日本に心残りがないわけではないが、大丈夫。飛行機ですぐに来れる時代だ。
生まれ育った地を、改めて離れる。
別れを告げるように小さく一礼して、名無しは飛行機の搭乗口へ歩いた。
彼女の前髪は軽く靡き、まっすぐ前を見据える宝石のような目元を柔らかく撫でた。
spectrum#14
長いフライトは、腰に響く。
うんと伸びをすれば腰の付け根が悲鳴をあげたのが分かった。
初めて正規の方法で異国の地に降り立ち、名無しは挙動不審になったいた。
人、人、人。
道行く欧米人の波に呑まれそうになりながら、キャリーケースとバッグをしっかり掴んで南出口に向かう。
『日本と違ってスリが多いんだから、ちゃんと荷物は持っておくのよ。特に名無しは幼く見えるんだから』
帰国するにあたって、心配したレディとトリッシュに口酸っぱく言われた。幼く見えるのは…日本人だからだ。仕方ない。
『南出口が一番広いからな。そこで待ち合わせするといい』
丁寧に空港の地図を取り出して、教えてくれたのはバージルだ。
さて、肝心のお迎えに来てくれている彼はというと、
「Do you have luggage?」
「の、ノーセンキュー!」
突然背後から声が聞こえて、慌てて拙い英語で返答した。
知っている。これで荷物をよく盗まれる、と。
「……ぷっ。何だ、今の下手くそな英語」
暫く日本に戻ったから鈍ったのか?
そう言って笑うのは、声の主。
ダンテだ。
「わ、笑わなくても、いいじゃないですか」
「悪い悪い。ついな」
ククッ、と楽しそうに笑う彼に悪びれた様子はない。
仕方ない。耳にする英語なんて、一日一回掛かってくるダンテからの国際電話くらいしか聞く機会が暫くなかったのだから。
「その、お久しぶりです」
「おう」
「改めて、お世話になりますが、よろしくお願いします」
「あー、堅苦しいのはなしだ。それより言うことがあるだろ」
眩い銀髪を軽く掻き、ダンテは不満そうに口先を尖らせた。
コロコロと変わる彼の表情を見て、思わず笑みがこぼれる。
「えっと………た、ただいま!」
「おかえり。」
満足したように破顔して、ダンテは笑う。
長身をスっと屈め、掠めるようにキスを落とした。
「っだ、ダンテさん!」
「相変わらず耐性ねぇな。こっちじゃ普通だぞ、キスに馴れろよ」
「騙されませんよ、外国人の人達が再開した時にするのは、ほっぺをくっつけ合う『キス』ですもん」
むぅっとむくれれば、ダンテが心底面白そうに笑った。久しぶりに会った彼はいつもより上機嫌だ。
「正解。だけどな、」
もう一度、降ってくるキス。
「恋人なんだから、こっちでもいいんだよ」
そう言って楽しげに細められたアイスブルーの瞳。
二度目のキスに、顔が熱く火照るのが嫌でも分かった。
「あ…暑いから、早く行きましょう!熱中症になりますよ!」
「ほー。ホテルにか?」
「事務所です!」
ムキになって言い返せば「冗談だって」と笑いながらダンテが荷物を持ってくれた。
…本当に冗談なのか疑わしい。
「さて、帰るか。俺達の家に」
「…はい!」
見上げれば、彼の目のように透き通ったスカイブルーの快晴。燦々と照りつける眩い太陽。
この夏。私は今日から、彼の隣で生きていく。
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