それは試練だ。

「ミオンちゃん」

 と、僕ツバラーゼは、相談に乗ってもらいにきた。もちろん、レオンがいなくなって、寂しさのあまり、ひちがれすぎている僕の気持ちを、どうにかする方法を、知りたいからである。レオンはどうして、あんなにがんばって、普通のいなせな男になったのに、消えてしまわなければ、ならなかったのだろう。それを思うと、僕はむなしくて、胸が押し潰されそうに、なる。しかも、アルフのように、大きなことを、して、レオンがいたその証しを、立ててみたい、というような、気力もない。どうしたら、いいのだろう。

「友達がいのあるやつだなあ、と、レオン言うと思うよ」

 と、ミオンのお兄ちゃんは、僕に教えてくれた。いつも、虎柄のパンツが好きで、赤く染めたオールバックのヘアスタイルが、たまらなく理不尽でなく格好よかった。そんなレオンは、もう何処を探しても、残り香さえ、いない。

 今、どう考えても、永遠の彼の不在は、僕たち、志摩市の民にとって、悲しい服従を、強いるものでしか、なかった。そう言ったら、書いたら、彼は怒るだろうか、それとも。

「怒るはずないよ。自分が一番悲しいんだから」

 と、ミオンちゃんは、大粒の涙を拭った。そこに、奥さんのラディールさんが、現れた。

「ツバちゃん、レオンいないの、あたしも寂しいよ。ツバちゃんだけじゃない、街のみんなも、りいくもだけど、きっと世界中の誰もが、寂しいと思う。寂しさは世界に伝染する。きっとそうだと思うよ」

 ラディールさんも、優しかった。

 僕は、なぜ、彼が、消えてなくなるまで、彼が、そんなに危険な、タイトロープダンシングをさせられていることに、気づいてあげられなかったのだろう。

 昔、この志摩市では、戦があった。彼は、市長の息子で、クーデターに負け、必死で逃げた。そうして、いつか、この街へ帰ってきて、政治家の息子でない自分を、確立し、相反するバランスのなか、がんばってきたんだ。

 なのに、どうして、消えるんだろう。なんで、ひとはみんながみんな、必ず、永遠でないのだろう。

 彼が大好きだった、たこ焼き。とか思ったら、泣けてきて、止まれなくて、僕はまた泣いた。理不尽すぎる、現実を踏まえて。
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