それは試練だ。

 その時、俺、ラファエル! の脳裏に、あのひとの言葉が通り抜けた。

「我こそは、ヒーロー! 二子玉川のプリンス! その名ルーラン!!!」

 なんだあ、俺の曲のパクリかなんかなんかあ!

「なんだあ、てめえ、こないだのリアンみたいに、額にシワいっぱい寄せやがって」

「ふ、常にデコッパチが、エンチャントレスの証、たるアンちゃんに、言われたくはないぜ!」

「なんだと。なんだと。ふふふ、別に実に計算ずくに、俺、アンちゃんはデコッパチで、勝利を築いてきたぜ。ルー、貴様に何ができる?」

「僕だってヒーローさ。もう立派な、いろいろなところが、隠したくないのに、割と隠れているヒーローだとも」

「それはなんだ、俺にだってわかることがあるぜ」

「なんだね」

「お前と、リアンで、どっちが上手かったりするんだ、スイートポテトの調理法はよ」

「ああ、あの秋の話だろう」

「そうだともよ」

「たぶん、リアンのほうだよ。僕のは芋きんとんのようだからよ」

 彼、ルーランは、そう語った。いかにスイートポテトと、芋きんとんの差を、あたしたち一般庶民も理解できようかと。

 刹那、アンちゃんはせつなそうに言った。

「ルー、俺に焼き芋を与えてくれないか」
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