友よ、はじまりの時間が去り。

 それにしても、なぜ、僕らの大親友、かけがえのない友、レオンは、死んでしまったのだろう。優しい、赤毛の、虎柄パンツが好きな。かけがえのない友、レオンハルト・アッセンバッハと、彼は言った。

 小さな頃から、よい相棒だと言われた、僕とレオンだった。アルフと、僕、そうして、もうひとりの大親友、ラナンは、みんなに、よく出来た子供会のようだ、と呼ばれるほど小さな頃から、仲がよかった。迷うことなく、みんな冒険者の道を選んだ。レオンは、両手で持つ、大きな剣、グレートソードが好きで、なんでも、切り付けるときに「ローリングサンダー!」と叫ぶのが好きだった。

 豪快で、ベーコンを愛し、そうして、海がちなところに住んでいるのに、海が苦手なのが、僕、ツバートと、彼、レオンの違うところだった。僕、ツバート・トランザムは、かるがもを愛する、海フェチで、イカのさしみが好きだったりする。するめではない。さしみだ。と言うと、彼、レオンは、「あたりまえだ」と答えた。そこが何よりも気に入っていた。僕は、さしみに、オリーヴオイルをかけて食べるのが特技で、弱ってくると、たこやきよりも何よりも先に、食べたくなる必需品だったりする。

 レオンは、たこやきが好きだった。

 アルフは、ハンバーグが好きだった。昔は、目玉焼きとセットだったが、最近は、そうでなくてもだいじょうぶなのだと言う。意味がわかりにくいが、目玉焼きがなくても、栄養のバランスがだいじょうぶなぐらいには、大人になったのだそうだ。

 でも、目玉焼き、好きだよ、とぼそっと言ってくれた。それに、この秋も、毎年恒例で、マクドナルドの月見バーガーを食べたという。味が変わってもおいしかった、と、アルフはおじさんじみた風情で、と付け加えながらも、言った。それが僕は、何よりもうれしかった。

「最近はハンバーガーが好きでさー」

 と、うれしそうに教えてくれた。父親の作るレーズンが、最初のごちそうだったと、アルフはいつも教えてくれる。また、赤ワインをちゃんぽんと飲むのが、アルフの好みの飲み方だったりするそうである。

 でも、ロコモコも好きで、よく食べんのよ。

 そんなあたたかな微笑みを、いつものように浮かべ、たこやき魔人と俗に呼ばれた、レオンの死を、永遠の不在を、僕らふたりは悲しんでいた。ラディールさん、みんなラルさんと呼ぶ、はそれを観察するように、じーと見て、こう教えてくれた。

「レオンの代わりに、あたしがたこやき食べるわね。でも、たこやきさんにはあたしという替えがあっても、いや、誰から見ても、レオンくんの代わりなんてものはないわ。いつもぼさこい彼は、あたしのたからものだった。少々下ネタが長かろうが、少々天気予報へ関心が高すぎようが、それがなんだっていうのさ。ステキなボヘミアンだったやん。レオンハルト・アッセンバッハは」

 うん、僕もそう思う。強くやさしい、レオンハルト・アッセンバッハを。

 彼は音楽が好きだった。特に、アルパの響きを愛した。綺麗なオルゴール音楽に、目がなかった。そう言って、いつもと同じように、ラルさんは微笑んだ。ふと、振り向くと、アンちゃんが立っていて、何年経っても慣れることのないように、ラルさんは照れていた。ラルさんは、アンちゃんが大好きなのだが、実はミオンさんと言う亭主がいたりする。けれど、アンちゃんと、ラルさんの絆は、男女の枠を超えた、人間同士というものの、美しい象徴である。

 そう、僕ら、パルケエスパーニャ付近の住民は知っていたりするのだった。

「ラル、レオンなんでいないんだろうなあ。なんでだ!」
「そうだねえ、アンちゃん。レオン…。いたかったのかなあ。なんでだろうね」

 アンちゃん。その名ラファエル・ドヌーヴという。銀髪碧眼のハーフエルフ。特技はペガサスファイト。伝説の男性。ラルちゃんの相棒。みんなアンちゃん、もしくは、ラファエと呼ぶ。

「バス、どうしたらいい。カル、涙とまんねえよー、アンちゃんは…」
「ラファエ、あら、フェニくんも来ちゃった。ホントレオンいないんだねー、フェニくん…。ラル悲しい。フェニくん…」

 フェニックスさんも泣きながら頷いた。

「レオン、帰ってきてくれ! リークが泣いて、止まれないんだ」
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