西野カナの郷、松阪市。

 それにしたって、あなたがいない日々とか世界って、まぼろししか生きられないまがいものなんだと思うよ。だって物理的に太陽の化身なんだから。そういうの、意外とよく思っているのね。人々への思いやりというか。まーた、一生懸命戦って。昔岐阜県で黒馬にまたがって反逆を抑えるために単騎で戦ったことも忘れてないよね。

 最初の頃はミレちゃんと呼ばれる男の子猫で。そのうちロッキーと呼称が変わった。伝説の隼騎士。ミルザの騎士団長。いつも鞍上し、特に隼騎士らしく投げ槍から入る。あの頃バルスの人喰い蛮族と戦い討ち取ったときもそうだった。

 目一杯でも守れないものもあったりする。今それをまさに痛感している。

 けれどもまた始めようと思う。それでも深傷を負った彼はとりあえず眠るしかなかった。結局その後近所の病院の方に来てもらって人工呼吸器までつけてもらった。けれども積年のダメージは重く身体を蝕み、あのマムシの毒矢で射られてから続く発熱の症状も熱かった。

 それでも大丈夫だと彼女セーレス・レードリバーは微笑んでくれた。無理をするなと言われても、無茶しかしないアイヌーブ・レインリバーを縛り付けて、彼女は何が何でもあっても大丈夫よと、頷いてくれた。あたし、ラデイールの敬愛する女医さんである。昔は高村薫という名だった。何処の誰なのかわかる人は多いかもしれない。

 セーレスさま、いつもありがとうございます。あら、どうされたのですか?

「ラデイールさん、しんどそうだから繋いだけど、命に変わりはないから」

 とのこと。安心した。わかっているつもりだけどやっぱり嬉しい。そうして心があたたかい。あ、目開けてあたし見てくれた。嬉しい。

 いつも彼といると嬉しいでいっぱいになる。そこが嬉しい。

 それでも、それにしても、ああ。あ、ペンギンの勇者フェニの息子ミルヴィスくんが来たよ。その名ミルヴィス・グローリー・ローラス。どうしたん?

「また婦女子を襲うレイプ犯が」

 さあっと、二人で血の気が引いた。いやアイヌーブさまが気付いたらどうしたらいい。まずいよ。まずいよ。また鬼哭刀握って切り倒しに行くって叫ばれそうだ。

 アンちゃん、アンちゃん。必ずアンちゃんが止めてやる。ラファエル・アンティウス・エヌファス・ぶひひん!

 あたしの表情は凍りついた。アンちゃん、まさか。

「ふふふならば俺がお付き合いをしたげよう。俺とて無敵無傷の伝説の銀騎士よ」
「いやアンちゃん、無傷に傷がつくかもしれないわよ。でも消去法で言うと」
「その通りさ俺が出かける他に道がない、恐るべき態度でレット・ミー・インだ」

 あたしのアンちゃんは鼻息も荒く叫んだ。

「アイヌーブさまと友達になってからすっかり霞んだ俺の白銀の戦歴よのお。アンちゃんもなかなかだったんだよ。うんラル」

 え、そうなの?(知っているけど)

「俺はな、こう見えても、ペガサスに乗って、でもペガサス流星拳とかじゃなくて、実際にはハルバートという長槍。マイネーミング的には金剛槍と呼んでいたを持って果敢に闘った生き物だったのだよ。誰ももうわかってくれないかもしれないけども。アイヌーブさまのあの細身の槍」
「ああ、ファイヤーエムブレムね。新作たちのことは知らないけども(笑)。果敢な少女時代にはハマって遊んだものだったわ。いつでも君なんだよぐらいだね(笑)」
「にゃーんどでも、にゃーんどでも、僕は生まれ変わっていくだな」

 僕らはミスチル、きっとミスチル。アバンギャルドで行こうぜベイベーじゃない(笑)。伝説のヒーロー、ラファエル・アンティウス・エヌファス。でも多分今の認知度で行くと、アイヌーブさまには敵わないわね、ね、アンちゃん。昔桑栄メイトの中の桔梗屋で食べながら読んでいた、あのマリナちゃんとカミルスくんを書いた傑作を思い出すわ。小さな頃に見た、高く飛んでいくカイトね(笑)。ああ。今日は卵を6個割って食べないとフードロスを出すのに。あ、ミオンちゃんだ。魅惑のミの音、ミオンちゃん。ラルだよお。なんですか?

「ラルさん、お好み焼きにしよう。広島焼でもいいよ」

 遥かなるかつてはお好み焼き屋さんだったあたしたち夫妻よ。6個。構成人員的には許されているかもしれないわ。

「ミオンちゃん、気持ち大丈夫?」

 ぐずり始めるミオンちゃん。あんまりミオンちゃんの泣き顔を見たことがない、あたしラルさんは驚いてしまった。あら、失礼かもしれない。

「アイヌーブさまー、俺のこと大事にしてって上の人に訴えてほしい。悲しい。あまりにも」

 いやミオンちゃん、アイヌーブさま起こさないでよ(涙)。辛い気持ちは理解するわ。尊重する。でもせっかく寝てくれたアイヌーブさまは起こさないで。まだ人工呼吸器つけているんだから。ね、アンちゃん。アンちゃん、渾身のコメント。

「ミオン。あれは酷かったよ。伏字攻撃が真骨頂のこの文章がよりひどくそうなっている」

 魅惑のミオンちゃんのコメント。

「俺が悪いんじゃねえ!!!!!!」

 色々な人が一生懸命闘っている日本の今と裏腹な光景に、度肝抜かしてため息をつく今日のあたしだった。ああ。毎日が誰かのバースデー。今日はアルメちゃんの誕生日だ。こういう時に役に立つ男、タイムカードが似合わないという歌で知られるアルメちゃん。その名、アルメキオ・ドータン。ミオンちゃんを慰め、また根本的に問題を解決するためにも、アルメという援軍は欲しいのに、連絡しがたい状態に違いはなく、彼が泣く状態は悪化していく。

 満月の夜じゃなくても、ラルは空に舞っている。そういう気がする。

 だがしかし、今まさにアルメキオは来てしまった(笑)。呼んでないのに。アルメちゃん、アルメキオさん。相変わらず牡牛座の人らしい律儀な重厚感と軽快なスポーツマンシップを感じさせるナイスガイです。アルメちゃん、一生懸命日々の暮らしを守る中日ドラゴンズが好きな愛知県民のアルメちゃん。どうしたらこの戦乱の世の中、ニコニコとした笑顔で、ニコニコ動画じゃなしに、みんなの笑顔を守ることができるだろう。助けてアルメちゃん。

「あ、らるひめ、アルメでございます」
「久しぶりねえ、アルメ。再就職先で、絶好調で頑張れているみたいで嬉しいわ」
「ええ。アルメは頑張っていますよ。あら、アイヌーブさま大怪我して。大丈夫ですか。またあのおちょぼ稲荷のあの時の黒馬戦闘の時のような殴打が世界を襲っているのですね」

 アルメちゃんのいう通りだよ。あ、ミオンちゃん、アルメだよ。

「アルメ、お久しぶりのミオンちゃんなのだ。元気にしていたか。もはやおじさんの領域ではなく、すっかり笑顔で若々しい実はいくつだか絶対説明したらいけない俺なのに(笑)」

 アルメちゃんの笑顔が愛しい。

「みんな、らるひめも一緒ですよ。ね、アンちゃん」

 いくつかは誰も書かれたくない。あたしもそうです(ラル44歳の初夏)。

「君と僕との間に永遠は見えるのかな、ですね」

 昔の彼女を思い出すミオンちゃん。

「ああ。とっても悲しい。もう俺を侵害するものは決して許したりはしない。とにかくアルメちゃん、必勝を祈願して俺と広島焼だ」

 あのトンチキヤローのステテコどっさいがー。西野カナの故郷三重県松阪市からお送りしていたのが、あいつのせいかなんでか知らんけど(もはや八つ当たり)、伊勢市某所の我が家からになっている。それがとても眩しい。なんでやねん。

 アルメちゃんの一言。

「広島焼にいつ乗り換えたんですか」

 ミオンの一言。

「西野カナの郷に生まれた時からだよ」

 ミオンちゃんの言葉は重い。

「俺は決してあのど畜生に負けたりはしない。例え敵がモスラであっても。な、アルバートの旦那」

 涙が出て仕方ないとアルバートはつぶやいた。そうして。

「必ずあの優しい女性も生きていることを噛み締めたいのです。必ず」

 それがあんまりにも素晴らしい言葉なので、あたしも涙が溢れた。

 ふと気づくと、アイヌーブさまが目を開けていて、あたしはそこでアンちゃんがいないことに気づいた。あ、レイプ犯と戦いに行ったのね、アンちゃん。アイヌーブさま、大丈夫?

「動きたいけど、身体が動かない」

 アンちゃん、無事に帰ってきてね。
8/8ページ