呪胎戴天【弐】
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*
「マジで、話が違エ……。制御してるって話じゃねえのかよ……」
宿儺の呪力に吹き飛ばされて、瓦礫の上に転がり込んだ。
その時に頭を打って流れた血を強引に拭った。和傘・夜桜誘夜を杖に立ち上がって、宿儺に向かって頭紙を向けてフラフラとした足取りで必死に走る。
夜桜誘夜の布地は所々剥げてきていた。
と言っても宿儺の呪力を間近で受けたのは最初の一発だけ。その他は戯れみたいな攻撃ばかりで、それなのに防御に特化した特級呪具がこの有様。
ぶっちゃけもう死にたい。
めちゃくちゃ全身が痛いし、もう立ってるどころか呼吸するもしんどいのに何で走ってんだろ。
辛いんだったら死にたい。苦しいなら死にたい。
命にすら執着したことないのに、君への執着がいつまでも消えない。
私が殺されれば次は恵くんと野薔薇の元に行くのだろう。
私が殺されれば恵くんが救った虎杖くんが人殺しになる。
だからどんなに辛くたって死ねない。苦しくっても死ねない。
「まじ、で。いッ、虎杖くん、ッたどりく……、早く戻ってきてえッ!げ、限界なんですけど、限界なんですが……。や、マジで……」
体力の限り聞こえるか定かではない懇願を叫ぶが、ゴボッ、と口から血液が塊になって吐き出される。足元がビシャリと汚れた。咳をする衝撃ですら体に響いてズクリと焼かれるみたいに痛む。
もう立ってるのもやっとな体で、夜桜誘夜を開いたままズルズル引きずりながらなんとか走ろうとするも、もう足が全然動かない。
やっと1歩。
やっと1歩。
やっと、1歩。
そうしてるうちにかったるそうに歩いていた宿儺が追いついて、眠そうに大口開けて欠伸をしながら月詠の足を蹴飛ばした。
月詠がドシャッと、凸凹のコンクリートの上に頭から倒れ込む。骨は折れ、内臓はやられ、皮膚が破け、血を流しすぎてる。
月詠はなんとか起き上がろうとするもすぐにコンクリートに顔をつけた。再び起き上がろうとするもまた崩れる。
起き上がる、また崩れる。
もう起き上がれないならとまだ動かせる右腕を使ってコンクリートの上を這う。
その手を宿儺に思い切り踏みつけられる。
「あヴッ」
「往生際の悪い、諦めろ小娘。芸のない犬との追いかけっこはもう飽きた」
諦めろ、なんて誰かに言われたの初めてなんすけど。
言われる前に諦めてたし。
月詠は踏みつけられた右腕をブンッと奮って宿儺の足を払い、「うるせえ殺すぞ」と宿儺に向かって絶え絶えの息と共に吐き捨てた。
そうして再び前へ前へと動かそうと廃材の上で藻掻く。
そんな無様な格好を見て宿儺は「は〜ッ」とわざとらしいため息をついて、肩を竦める。そうして呆れたような顔をしてからゾッとする程冷たい表情で月詠を見下ろし、月詠の右腕に向かって腕を振り下ろした。
自分の目の前に、切り離された腕がドクドクと血を垂れ流しながら転がるのが見える。
痛みも分からないくらい呆然して、自分の右腕を見ると、右腕腕が二の腕からスパッと鮮やかな断面で切断された。真っ赤で水々しい肉と、骨の断面がハッキリ見えて、その上をグロテスクが赤黒い液体が覆うように流れる。
声も出せずにそれを眺める月詠の背中に、宿儺がドガッと遠慮なく座り込んだ。
「さて、言ったな。次は殺す」
特別大きな声でもなかったその声はやけにハッキリと聞こえた。
月詠は呆然と宿儺の方を振り向いた。その表情は恐怖と絶望に満ちていた。
宿儺はそれを見て機嫌良さそうに笑うが、月詠が零した言葉を聞いて怪訝そうに顔を顰めることになる。
「ごめん」
ぽつり、と消え入りそうな声で確かにそう聞こえる。
この女は殺されることに恐怖を感じているわけでない、とわかって宿儺は不可解そうに顔を顰めた。
不可解な人間だ。
しかし、だからなんだという話。
宿儺は、絶望した面で懺悔をする月詠に。無情にその腕を振り下ろした。
「ごめん、恵く
「マジで、話が違エ……。制御してるって話じゃねえのかよ……」
宿儺の呪力に吹き飛ばされて、瓦礫の上に転がり込んだ。
その時に頭を打って流れた血を強引に拭った。和傘・夜桜誘夜を杖に立ち上がって、宿儺に向かって頭紙を向けてフラフラとした足取りで必死に走る。
夜桜誘夜の布地は所々剥げてきていた。
と言っても宿儺の呪力を間近で受けたのは最初の一発だけ。その他は戯れみたいな攻撃ばかりで、それなのに防御に特化した特級呪具がこの有様。
ぶっちゃけもう死にたい。
めちゃくちゃ全身が痛いし、もう立ってるどころか呼吸するもしんどいのに何で走ってんだろ。
辛いんだったら死にたい。苦しいなら死にたい。
命にすら執着したことないのに、君への執着がいつまでも消えない。
私が殺されれば次は恵くんと野薔薇の元に行くのだろう。
私が殺されれば恵くんが救った虎杖くんが人殺しになる。
だからどんなに辛くたって死ねない。苦しくっても死ねない。
「まじ、で。いッ、虎杖くん、ッたどりく……、早く戻ってきてえッ!げ、限界なんですけど、限界なんですが……。や、マジで……」
体力の限り聞こえるか定かではない懇願を叫ぶが、ゴボッ、と口から血液が塊になって吐き出される。足元がビシャリと汚れた。咳をする衝撃ですら体に響いてズクリと焼かれるみたいに痛む。
もう立ってるのもやっとな体で、夜桜誘夜を開いたままズルズル引きずりながらなんとか走ろうとするも、もう足が全然動かない。
やっと1歩。
やっと1歩。
やっと、1歩。
そうしてるうちにかったるそうに歩いていた宿儺が追いついて、眠そうに大口開けて欠伸をしながら月詠の足を蹴飛ばした。
月詠がドシャッと、凸凹のコンクリートの上に頭から倒れ込む。骨は折れ、内臓はやられ、皮膚が破け、血を流しすぎてる。
月詠はなんとか起き上がろうとするもすぐにコンクリートに顔をつけた。再び起き上がろうとするもまた崩れる。
起き上がる、また崩れる。
もう起き上がれないならとまだ動かせる右腕を使ってコンクリートの上を這う。
その手を宿儺に思い切り踏みつけられる。
「あヴッ」
「往生際の悪い、諦めろ小娘。芸のない犬との追いかけっこはもう飽きた」
諦めろ、なんて誰かに言われたの初めてなんすけど。
言われる前に諦めてたし。
月詠は踏みつけられた右腕をブンッと奮って宿儺の足を払い、「うるせえ殺すぞ」と宿儺に向かって絶え絶えの息と共に吐き捨てた。
そうして再び前へ前へと動かそうと廃材の上で藻掻く。
そんな無様な格好を見て宿儺は「は〜ッ」とわざとらしいため息をついて、肩を竦める。そうして呆れたような顔をしてからゾッとする程冷たい表情で月詠を見下ろし、月詠の右腕に向かって腕を振り下ろした。
自分の目の前に、切り離された腕がドクドクと血を垂れ流しながら転がるのが見える。
痛みも分からないくらい呆然して、自分の右腕を見ると、右腕腕が二の腕からスパッと鮮やかな断面で切断された。真っ赤で水々しい肉と、骨の断面がハッキリ見えて、その上をグロテスクが赤黒い液体が覆うように流れる。
声も出せずにそれを眺める月詠の背中に、宿儺がドガッと遠慮なく座り込んだ。
「さて、言ったな。次は殺す」
特別大きな声でもなかったその声はやけにハッキリと聞こえた。
月詠は呆然と宿儺の方を振り向いた。その表情は恐怖と絶望に満ちていた。
宿儺はそれを見て機嫌良さそうに笑うが、月詠が零した言葉を聞いて怪訝そうに顔を顰めることになる。
「ごめん」
ぽつり、と消え入りそうな声で確かにそう聞こえる。
この女は殺されることに恐怖を感じているわけでない、とわかって宿儺は不可解そうに顔を顰めた。
不可解な人間だ。
しかし、だからなんだという話。
宿儺は、絶望した面で懺悔をする月詠に。無情にその腕を振り下ろした。
「ごめん、恵く
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