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私は、私の命が大事じゃない。
昔から諦めと妥協が得意だった。

惰性で生きてる。
妥協で選択してる。

まあ最低限があればいいやって、どっちが楽なのか考えて生きてきて、気付いたら呪具握って呪いを祓ってたんだわ。

呪いを祓えたらラッキー。
死んだらそれまで、しゃあないよねって。

だから私は【自分の譲れないものの為に】なんて大層な言葉貰える程、素敵な人間じゃなかった。
譲れないものなんて一つもありゃしない。

顔が欲しいならあげる。その代わり生きてるならいいや。
でもそしたら顔しか取り柄がない私の人生どうなるってんだ。この顔がない状態で将来何してるんだ。この顔があって殆ど上手く事が運んだ人生だったのに。じゃあ、これなくなったらもう死んでもいっか。
苦労して生きるのは面倒だから。

顔を譲った。命を譲った。
私の思考には妥協と諦めしかなかった。
その成れの果てが呪術師の私だった。


わかるでしょ、私すっごいめんどくさがり屋なの。
食べるのに時間をかけるのが。何を食べようって毎日考えるのが。
祓除申請の手続きが。長くて難しい話をジッと座って聞くのが。
苦労して生きていくのが。上手くいかない人生が。人間が最低限持ってるものを失くした人生が。
全部全部全部全部めんどくさくてココ来たの。

楽する為だったら死んでもいい。だってそもそも生きるのってめんどうじゃん。
食べなきゃいけない。綺麗な自分を保たないといけない。学校に行かなきゃいけない。働かなきゃいけない。人の顔色伺って、群れから迫害されないように生きるの。


恵くん、私、譲れないものなんて何にもなかった。
恵くんに会うまで何もなかったの。



私は私の命が大事じゃない。

恵くんだけが大事なの。



君は救いたい人を救う。
救われるべき善人を救う。
普通の善い人が平等を享受できるように、選んで手を差し伸べる。呪いが見えない人間に。

君の苦労が何にも見えない人間に。


なら君のことは誰が救うの。

君だって救われるべき善人だ。
君だって善い人だ。君だって誰よりも優しい。

だから、あの時助けたいって思ったの。柄にもなく。
本当にこんなの柄じゃないんだけど。
恵くんが助けたいものを、私も助けたいって思ったの。

恵くんが見限るんだったら私も見限る。
恵くんが助けた人は私も助ける。

正直こんなことが君の助けになるとは到底思えないけど。こんな私が君の救いになるとは到底思えないけど。
誰よりも優しい君が少しでも救われてくれたらそれでいい。



少しでも多くの善人が平等を享受できるように。

けれど、私は君しか救わない。




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