呪胎戴天
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
2018年 7月
西東京市英集少年院運動場上空
特級仮想怨霊(名称未定)、その受胎を非術師数名の目視で確認。緊急事態の為高専1年生4名が派遣され__
_______内、■名死亡
*
「月詠なら倒せんの?特級」
「いや可能性があるってだけよ。言っとッけどあーし今日術式使うつもりないかんね。この前悟くんにドンだけ大袈裟に説明されたか知らんけど、勝ち確切り札みてーなスゲエ術式じゃねえよアレ」
受刑在院者第二宿舎前。
現在5人の在院者が特級相当に成ると予測される受胎と共に、この中に取り残されている。今回の任務はその5人の生存確認及び救出である。
虎杖の質問に、月詠は虎杖の方を一切向かず、笑いもせずにそう答えた。落ち着かなそうに、トン、トンと黒地の和傘の形をした特級呪具『妖刀・夜桜誘夜』を肩に打ち付けている。
虎杖の質問に対して伏黒が「月詠の呪霊は当たりゃ特級ですら殺せるってだけ。当たらなきゃ意味ねえんだよ、もしその特級に避けられたら終わりだ」と補足する。
「こんなレベルの任務今まで受け持ったことねえからな、月詠の術式もどこまで通用するかわかんねえ。それにコイツ自身術師としてまだ不安定だ。俺も使わせるつもりはない」
「何で白骨ブスへの質問にアンタが答えんのよ」
「うるせえな茶髪ブス、恵くんは無意識にアタシの理解者ヅラ相棒マウント取っちゃうんだよ慣れとけ喋んな。あ、前から言ったろと思ってたけどお前そのアイシャドウバカ程似合ってねえぞ、寮帰ったら捨てな?」
「お前こそよくそんなクソダセエ爪して外で歩けるな。そういうシリアルキラーか?今度オススメのネイルサロン紹介してあげるわ」
「口を開く度に喧嘩すんなッ。後別にマウント取ってるわけじゃねえよブン殴るぞ月詠」
伏黒が怒鳴りながら咎めると、釘崎と月詠の2人は無表情のまんまベッと舌を出してからビタリと黙った。
虎杖はこういう無遠慮な上に我の強い女子の空間にあまり慣れていなかったので、こういうときてんで使い物にならない。止めようと思ってまず手が出るが入れず、その手で腕を気まずそうに摩って「女子怖……」と思いながら黙ってしまうのだった。
今日補助監督として引率した伊地知もどうやらそうらしく、2人の言い合いが済んだ後におずおずと「……では帳を下ろします」と言う。
「闇より出でて闇夜黒くその穢れを禊払え」
伊地知がそう唱えると夜闇色の結界が少年院を覆い始める。初見の虎杖がそれを物珍しそうに眺めた。
伏黒が両手を犬の形に組み、白毛の玉犬を影を媒介にして召喚する。そして釘崎と虎杖に「呪いが近づいたらこいつが教えてくれる」と言った。
月詠は『あーハイハイ』という顔して手持ち無沙汰な様子で零れた髪を耳にかけている。こっちも無意識理解者ヅラ相棒マウントである。
「行くぞ」と伏黒が少年院の扉を開けた。
すると、空間が複雑に捻れたような、管がむき出しの無骨な景色が目の前に浮かび上がる。明らかに二階建ての建物の中の景色ではない。
呪力による生得領域の展開。
しかし未だ学生呪術師である4人が目の当たりにするにはあまりに巨大である。
「扉は」
「ないです」
出入口の有無を確認した伏黒に、一番後ろに立っていた月詠が答えた。あらあ、という顔をして肩を竦める。
「まあ、ワンコちゃん覚えてるっしょ。それに関しては問題ないんでね?」
月詠が玉犬を指差してそう言うと、それに返事をするように玉犬がアヴッと鳴いた。
釘崎と虎杖がパアッと目を輝かせてオーヨシヨシヨシグッボーイ!と玉犬を囲って褒めたたえ始める。緊張感ゼロにも程があった。
しかし問題は、建物全体に作用できる呪力を持ったレベルの呪霊がこの生得領域の主であること。
いつもは緊張感ゼロ担当な月詠だが今回ばかりはそうも言ってられず。腐っても伏黒と同等級である2級。釘崎と虎杖を引っ張る役を共に受け持たなければ。術式に対する期待と贔屓目の階級だとしても、その肩書きに恥じぬように。
月詠が「変化」と唱える。手に持っていた夜桜誘夜がそれに呼応し、巨大な刃を備えた派手な装飾の大鎌に変化する。
釘崎と虎杖がそれを見てあれッと目を丸くした。使わないって言ってなかった?と言う顔である。
「月詠」
「いや念には念を的な。だってもしエンカしたとして、祓える可能性あんのアタシっしょ。わかってる、会わないのが一番よ。これでもあーしなりに皆のこと考えてさあ」
「いや、叱ってるわけじゃない。もしそうなったら頼む」
「OK , Buddy . 」
改めて特級の驚異を思い知った、2級術師ズの判断である。東京で約3ヶ月、2級術師として呪霊を祓ってきた2人の緊張感に釘崎と虎杖がヒエ……と大人しくなった。どうやらそういうレベルらしい。
虎杖がフウ、と息をついてから「流石2級術師。やっぱ2人とも頼りになるな」と笑った。
「いやいやいやいやあーしに期待だけは絶対しないで。アタシ恵くんいないとなんもできんし、助けられてばっかだし。ハイハイその言葉は恵くんにドーゾ」
「あはは、俺も。伏黒には助けられた」
月詠がモノ凄い勢いで謙遜して、あーハイハイハイコッチコッチと夜桜誘夜の刃先で伏黒の方を差したり虎杖がそれを見て緊張が解けたみたいに笑う。
『ね、恵くん凄いよねえ』という顔でニコニコ笑っている月詠に、釘崎が小さい声で「ホントだよブス、少しは役立て」と吐き捨てるとスグに「ああッ?」と悪人面して「テメエだよ3級ブス。二重敬語で話せ」とまた口喧嘩をしだした。そしてそのまま2人とも男共を置いてスタスタ歩いていく。
虎杖は止める暇もなく口喧嘩に発展した2人の背中を「ええ……」と声を零しながら眺め。そしてそのまま共に置いて行かれてしまった伏黒に、屈託のない笑顔を浮かべた。
「ここの人達も絶対に助けようぜ」
虎杖のそれに、伏黒は返事をしなかった。
*
西東京市英集少年院運動場上空
特級仮想怨霊(名称未定)、その受胎を非術師数名の目視で確認。緊急事態の為高専1年生4名が派遣され__
_______内、■名死亡
*
「月詠なら倒せんの?特級」
「いや可能性があるってだけよ。言っとッけどあーし今日術式使うつもりないかんね。この前悟くんにドンだけ大袈裟に説明されたか知らんけど、勝ち確切り札みてーなスゲエ術式じゃねえよアレ」
受刑在院者第二宿舎前。
現在5人の在院者が特級相当に成ると予測される受胎と共に、この中に取り残されている。今回の任務はその5人の生存確認及び救出である。
虎杖の質問に、月詠は虎杖の方を一切向かず、笑いもせずにそう答えた。落ち着かなそうに、トン、トンと黒地の和傘の形をした特級呪具『妖刀・夜桜誘夜』を肩に打ち付けている。
虎杖の質問に対して伏黒が「月詠の呪霊は当たりゃ特級ですら殺せるってだけ。当たらなきゃ意味ねえんだよ、もしその特級に避けられたら終わりだ」と補足する。
「こんなレベルの任務今まで受け持ったことねえからな、月詠の術式もどこまで通用するかわかんねえ。それにコイツ自身術師としてまだ不安定だ。俺も使わせるつもりはない」
「何で白骨ブスへの質問にアンタが答えんのよ」
「うるせえな茶髪ブス、恵くんは無意識にアタシの理解者ヅラ相棒マウント取っちゃうんだよ慣れとけ喋んな。あ、前から言ったろと思ってたけどお前そのアイシャドウバカ程似合ってねえぞ、寮帰ったら捨てな?」
「お前こそよくそんなクソダセエ爪して外で歩けるな。そういうシリアルキラーか?今度オススメのネイルサロン紹介してあげるわ」
「口を開く度に喧嘩すんなッ。後別にマウント取ってるわけじゃねえよブン殴るぞ月詠」
伏黒が怒鳴りながら咎めると、釘崎と月詠の2人は無表情のまんまベッと舌を出してからビタリと黙った。
虎杖はこういう無遠慮な上に我の強い女子の空間にあまり慣れていなかったので、こういうときてんで使い物にならない。止めようと思ってまず手が出るが入れず、その手で腕を気まずそうに摩って「女子怖……」と思いながら黙ってしまうのだった。
今日補助監督として引率した伊地知もどうやらそうらしく、2人の言い合いが済んだ後におずおずと「……では帳を下ろします」と言う。
「闇より出でて闇夜黒くその穢れを禊払え」
伊地知がそう唱えると夜闇色の結界が少年院を覆い始める。初見の虎杖がそれを物珍しそうに眺めた。
伏黒が両手を犬の形に組み、白毛の玉犬を影を媒介にして召喚する。そして釘崎と虎杖に「呪いが近づいたらこいつが教えてくれる」と言った。
月詠は『あーハイハイ』という顔して手持ち無沙汰な様子で零れた髪を耳にかけている。こっちも無意識理解者ヅラ相棒マウントである。
「行くぞ」と伏黒が少年院の扉を開けた。
すると、空間が複雑に捻れたような、管がむき出しの無骨な景色が目の前に浮かび上がる。明らかに二階建ての建物の中の景色ではない。
呪力による生得領域の展開。
しかし未だ学生呪術師である4人が目の当たりにするにはあまりに巨大である。
「扉は」
「ないです」
出入口の有無を確認した伏黒に、一番後ろに立っていた月詠が答えた。あらあ、という顔をして肩を竦める。
「まあ、ワンコちゃん覚えてるっしょ。それに関しては問題ないんでね?」
月詠が玉犬を指差してそう言うと、それに返事をするように玉犬がアヴッと鳴いた。
釘崎と虎杖がパアッと目を輝かせてオーヨシヨシヨシグッボーイ!と玉犬を囲って褒めたたえ始める。緊張感ゼロにも程があった。
しかし問題は、建物全体に作用できる呪力を持ったレベルの呪霊がこの生得領域の主であること。
いつもは緊張感ゼロ担当な月詠だが今回ばかりはそうも言ってられず。腐っても伏黒と同等級である2級。釘崎と虎杖を引っ張る役を共に受け持たなければ。術式に対する期待と贔屓目の階級だとしても、その肩書きに恥じぬように。
月詠が「変化」と唱える。手に持っていた夜桜誘夜がそれに呼応し、巨大な刃を備えた派手な装飾の大鎌に変化する。
釘崎と虎杖がそれを見てあれッと目を丸くした。使わないって言ってなかった?と言う顔である。
「月詠」
「いや念には念を的な。だってもしエンカしたとして、祓える可能性あんのアタシっしょ。わかってる、会わないのが一番よ。これでもあーしなりに皆のこと考えてさあ」
「いや、叱ってるわけじゃない。もしそうなったら頼む」
「OK , Buddy . 」
改めて特級の驚異を思い知った、2級術師ズの判断である。東京で約3ヶ月、2級術師として呪霊を祓ってきた2人の緊張感に釘崎と虎杖がヒエ……と大人しくなった。どうやらそういうレベルらしい。
虎杖がフウ、と息をついてから「流石2級術師。やっぱ2人とも頼りになるな」と笑った。
「いやいやいやいやあーしに期待だけは絶対しないで。アタシ恵くんいないとなんもできんし、助けられてばっかだし。ハイハイその言葉は恵くんにドーゾ」
「あはは、俺も。伏黒には助けられた」
月詠がモノ凄い勢いで謙遜して、あーハイハイハイコッチコッチと夜桜誘夜の刃先で伏黒の方を差したり虎杖がそれを見て緊張が解けたみたいに笑う。
『ね、恵くん凄いよねえ』という顔でニコニコ笑っている月詠に、釘崎が小さい声で「ホントだよブス、少しは役立て」と吐き捨てるとスグに「ああッ?」と悪人面して「テメエだよ3級ブス。二重敬語で話せ」とまた口喧嘩をしだした。そしてそのまま2人とも男共を置いてスタスタ歩いていく。
虎杖は止める暇もなく口喧嘩に発展した2人の背中を「ええ……」と声を零しながら眺め。そしてそのまま共に置いて行かれてしまった伏黒に、屈託のない笑顔を浮かべた。
「ここの人達も絶対に助けようぜ」
虎杖のそれに、伏黒は返事をしなかった。
*