呪われ
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2006年 10月2日
埼玉県■■市■■神社にて、特級仮想怨霊【天狐・天狂】(以下、天狂と表記)を確認。直ちに担当者(高専2年 五条悟)を派遣したが姿は見えず、残穢のみ確認。その後、担当者は天狂の被害に遭ったと思わしき被呪者(月詠誘夜(6))を取り調べ。被呪者の右腕には彼岸花と狐の刺青が掘られており(画像1参照)、少女の証言と残穢から天狂の呪力によりつけられたものだと断定。
尚、天狂の目撃証言はそこで途絶えており天狂捜索は振り出しに戻る。
以下、被呪者の証言__
*
「お前さ、そのキツネになにされた?なんか言われた?覚えてることあったら話して」
「んとね。ハタになったらゆやのお顔、ほしんだって。会いにくるとき、まちがえないよーにね、ここにお絵かきされたの」
「ハタ……?二十歳って言いてえの?」
「ハタチ」
五条悟は広げた右手の親指で眉間を揉んだ。これは彼の親友の夏油傑の癖が移ったものだった。
特級仮想怨霊、天狐天狂。
それは太古よりその存在が確認されている長寿の呪霊。凶暴性や被害件数というより、呪術全盛期を越え今現在まで呪霊として生き長らえてる事実に呪術界はあのバケモノを特級と冠した。
天狂は滅多に人を呪殺しない。代わりに噂されるほど美しい顔を持った人間の前に現れて、その顔を自分のものにするのだ。被害に遭った人間は、まるで顔だけ油を引いて炙り焼かれたようなグロテスクな皮膚と死んだ魚のようなギョロリとした不気味な目玉をした顔に変わり果てる。
と、高専に入りたてに習った。特級仮想怨霊に指定されてる呪霊の授業は呪術高専1年の必修科目である。
……それだけ前の顔が気に入っていたのかここ200年一度も被呪者が出なかった為、正直自分が生きてる時代にあの特級呪霊のイカれた趣味に鉢合わせることになるとは思ってなかった。
被呪者の少女、月詠誘夜はまだ6歳と幼いが確かに整った顔をしていた。このまま育ったらそりゃあもう、堪らない程の美女になるんだろうなアと簡単に想像出来るツラを晒していた。
パッチリと睫毛が伸びた大きな瞳はキラキラと煌めいていて、デキモノを知らない幼い肌は微睡むミルクのように白く、切り揃えられた柔らかな髪は風が吹く度ふわふわと靡く。どこもかしこも煌めいて見える少女だった。宝石の国のお姫様のような。
しかし五条は、まあ確かにカワイイね。と思ってそれきりだった。だって自分も似たような見た目だったので。
月詠が『ココ』と指した右腕には長袖の下から明らかに肌色じゃない色が窺えた。黒で縁取られた赤い花弁のようなものが、手首にビッシリと埋め込まれている。
「なるほどね」と、そういう割に納得してなさそうな声で相槌を打つ。
「とりあえずそれ脱いでキツネの『オエカキ』見せてみろ。写真撮るから」
「じゃあカワイクとってね」
「お前まだガキんちょなのに神経土管みたいだな。怖くねえの?」
月詠がポケッとした顔で要望すると、モゾモゾと羽織っていたパーカーを脱ぐ。パーカーの下は中は半袖だったので、刺青の全貌が見えるように肩まで袖を折ってやってからカメラを構えた。
肩から手首にかけて。ヤクザ者が掘るそれのように、大層立派な四つ尾の銀狐が描かれていた。今にも皮膚を割いて動き出しそうな程にリアルな銀狐が細い二の腕に宿り、その周りに人間の血のようなグロテスクな赤色に染め上げられた大輪の彼岸花が咲き誇っていた。愛らしく幼い面が乗っかる小さな体に掘られたド派手な刺青が、あまりにもアンバランスで思わず顔が引き攣る。
月詠はカメラに向かって天使のような笑顔でニコッと笑ってピースをするが、五条はその腕だけカメラに収めて、「後住所と家の電話番号わかる?あ?わかんない?じゃあ家今誰かいる?」と目線を合わせて聞いた。
「まさるくんいるよ」
「まさるクンって親父?」
「おやじ」
「パパ?」
「うん」
「母親がいないんだ。フツー今の時間って親父がいねえだろ」
「ケーコちゃんはまさるくんがお仕事ばっかしてるからずっとどっか行っちゃったの」
「何してんだよまさる。最後まで愛し抜けよ」
「ケーコちゃんの足にぎゅーってしていっぱいゴメンなさいしてたのに仲直りできなかったの」
「娘の前で情けねえなまさる」
月詠は五条の人差し指だけをキュッと握った。どうやら家まで案内してくれるらしい。
とりあえず、親にも事情を話してこのまま。無理なら明日。高専に来てもらわないとかな。なんて頭ん中でボンヤリ考えながら、少女の小さな足取りに合わせてトボトボ歩く。
「ゆーやちゃんさア」
「なあに」
「さっきも聞いたけど怖くないワケ?6歳っしょ?泣いてもいいと思うよ」
「だってゆや笑ってる方がカワイイもん」
「怖コイツ。俺もうお前のこと大分怖いわ」
「まさるくんが、人は顔じゃないって言ってたから。ナカミで勝負するんだって。それでケーコちゃんとケッコンできたんだって」
「そのケイコ逃げたけど…………」
だからって後12年もしたら自分の顔がなくなるってことを許容できる理由にはならなくね。変なガキ。
五条はンーッと唇を閉じ合わせ、鼻の付け根にギュッと皺を寄せた不細工な表情をしてガリガリと頭をかいた。五条悟は白百合の心臓のように美しいのにも関わらず、自分の美貌に一々遠慮がない。そんな納得してなさそうな顔をして、「えーッ、でもさあ!」と大きな声を出した。
「もしかしたらどうにかできると思わね?二十歳までまだ結構時間あんじゃん。デカくなったら高専来れば?勿論俺らも頑張るつもりだけどさ、ゆーやちゃん自分で祓えるようになるかもよ」
「だってお前、120年ぶりに桜蘭家相伝の術式発現したッつーガキだろ」
埼玉県■■市■■神社にて、特級仮想怨霊【天狐・天狂】(以下、天狂と表記)を確認。直ちに担当者(高専2年 五条悟)を派遣したが姿は見えず、残穢のみ確認。その後、担当者は天狂の被害に遭ったと思わしき被呪者(月詠誘夜(6))を取り調べ。被呪者の右腕には彼岸花と狐の刺青が掘られており(画像1参照)、少女の証言と残穢から天狂の呪力によりつけられたものだと断定。
尚、天狂の目撃証言はそこで途絶えており天狂捜索は振り出しに戻る。
以下、被呪者の証言__
*
「お前さ、そのキツネになにされた?なんか言われた?覚えてることあったら話して」
「んとね。ハタになったらゆやのお顔、ほしんだって。会いにくるとき、まちがえないよーにね、ここにお絵かきされたの」
「ハタ……?二十歳って言いてえの?」
「ハタチ」
五条悟は広げた右手の親指で眉間を揉んだ。これは彼の親友の夏油傑の癖が移ったものだった。
特級仮想怨霊、天狐天狂。
それは太古よりその存在が確認されている長寿の呪霊。凶暴性や被害件数というより、呪術全盛期を越え今現在まで呪霊として生き長らえてる事実に呪術界はあのバケモノを特級と冠した。
天狂は滅多に人を呪殺しない。代わりに噂されるほど美しい顔を持った人間の前に現れて、その顔を自分のものにするのだ。被害に遭った人間は、まるで顔だけ油を引いて炙り焼かれたようなグロテスクな皮膚と死んだ魚のようなギョロリとした不気味な目玉をした顔に変わり果てる。
と、高専に入りたてに習った。特級仮想怨霊に指定されてる呪霊の授業は呪術高専1年の必修科目である。
……それだけ前の顔が気に入っていたのかここ200年一度も被呪者が出なかった為、正直自分が生きてる時代にあの特級呪霊のイカれた趣味に鉢合わせることになるとは思ってなかった。
被呪者の少女、月詠誘夜はまだ6歳と幼いが確かに整った顔をしていた。このまま育ったらそりゃあもう、堪らない程の美女になるんだろうなアと簡単に想像出来るツラを晒していた。
パッチリと睫毛が伸びた大きな瞳はキラキラと煌めいていて、デキモノを知らない幼い肌は微睡むミルクのように白く、切り揃えられた柔らかな髪は風が吹く度ふわふわと靡く。どこもかしこも煌めいて見える少女だった。宝石の国のお姫様のような。
しかし五条は、まあ確かにカワイイね。と思ってそれきりだった。だって自分も似たような見た目だったので。
月詠が『ココ』と指した右腕には長袖の下から明らかに肌色じゃない色が窺えた。黒で縁取られた赤い花弁のようなものが、手首にビッシリと埋め込まれている。
「なるほどね」と、そういう割に納得してなさそうな声で相槌を打つ。
「とりあえずそれ脱いでキツネの『オエカキ』見せてみろ。写真撮るから」
「じゃあカワイクとってね」
「お前まだガキんちょなのに神経土管みたいだな。怖くねえの?」
月詠がポケッとした顔で要望すると、モゾモゾと羽織っていたパーカーを脱ぐ。パーカーの下は中は半袖だったので、刺青の全貌が見えるように肩まで袖を折ってやってからカメラを構えた。
肩から手首にかけて。ヤクザ者が掘るそれのように、大層立派な四つ尾の銀狐が描かれていた。今にも皮膚を割いて動き出しそうな程にリアルな銀狐が細い二の腕に宿り、その周りに人間の血のようなグロテスクな赤色に染め上げられた大輪の彼岸花が咲き誇っていた。愛らしく幼い面が乗っかる小さな体に掘られたド派手な刺青が、あまりにもアンバランスで思わず顔が引き攣る。
月詠はカメラに向かって天使のような笑顔でニコッと笑ってピースをするが、五条はその腕だけカメラに収めて、「後住所と家の電話番号わかる?あ?わかんない?じゃあ家今誰かいる?」と目線を合わせて聞いた。
「まさるくんいるよ」
「まさるクンって親父?」
「おやじ」
「パパ?」
「うん」
「母親がいないんだ。フツー今の時間って親父がいねえだろ」
「ケーコちゃんはまさるくんがお仕事ばっかしてるからずっとどっか行っちゃったの」
「何してんだよまさる。最後まで愛し抜けよ」
「ケーコちゃんの足にぎゅーってしていっぱいゴメンなさいしてたのに仲直りできなかったの」
「娘の前で情けねえなまさる」
月詠は五条の人差し指だけをキュッと握った。どうやら家まで案内してくれるらしい。
とりあえず、親にも事情を話してこのまま。無理なら明日。高専に来てもらわないとかな。なんて頭ん中でボンヤリ考えながら、少女の小さな足取りに合わせてトボトボ歩く。
「ゆーやちゃんさア」
「なあに」
「さっきも聞いたけど怖くないワケ?6歳っしょ?泣いてもいいと思うよ」
「だってゆや笑ってる方がカワイイもん」
「怖コイツ。俺もうお前のこと大分怖いわ」
「まさるくんが、人は顔じゃないって言ってたから。ナカミで勝負するんだって。それでケーコちゃんとケッコンできたんだって」
「そのケイコ逃げたけど…………」
だからって後12年もしたら自分の顔がなくなるってことを許容できる理由にはならなくね。変なガキ。
五条はンーッと唇を閉じ合わせ、鼻の付け根にギュッと皺を寄せた不細工な表情をしてガリガリと頭をかいた。五条悟は白百合の心臓のように美しいのにも関わらず、自分の美貌に一々遠慮がない。そんな納得してなさそうな顔をして、「えーッ、でもさあ!」と大きな声を出した。
「もしかしたらどうにかできると思わね?二十歳までまだ結構時間あんじゃん。デカくなったら高専来れば?勿論俺らも頑張るつもりだけどさ、ゆーやちゃん自分で祓えるようになるかもよ」
「だってお前、120年ぶりに桜蘭家相伝の術式発現したッつーガキだろ」
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