スペシャルコラボレーション・マジックショー

  • アラビアンコーストで、一夜限りのスペシャルなマジック対決が!?
    自称偉大なるマジシャン・シャバーンが、踊り子ラティーファの助言でアシームに休暇をプレゼントしました。
    しかし、ちょうどシャバーン宛にマジック対決の果し状が届いてしまいます。そこで急遽ラティーファが踊り子兼アシスタントを務めるのですが……シャバーンのおっちょこちょいのせいでステージは大混乱!果たして対決のゆくえはいかに。

  • アシーム登場
  • アシーム

    うーん!チュロス美味しい〜っ!

    あっ、みなさんどうも!僕は今日、実はお休みなんですよ。なんと、シャバーン様が僕にお休みをプレゼントしてくれたんです!

    さぁー!今日はたくさんパークを満喫するぞぉ!あっ、あれ乗りたいなぁ。『セーフティーバーは、私が降ろす!』ってやつ。あれ?上げるんだっけ?ま、いっか。

    それじゃ、行ってきまーす!

  • アシームがパンフレット片手に退場。入れ替わるようにシャバーン登場。

  • シャバーン

    さて……今日からしばらくアシームが居ないとなると、困ったな。

    マジック対決の話はどうしたもんか。わしが代わりに箱に入るわけにもいかんし……
    いっそ、あの子に頼んでみるか……

  • 背後からラティーファ登場
  • ラティーファ

    シャバーン様!

  • シャバーン

    ぎゃぁっ!

    なんだ、ラティーファか……
    びっ、びっくりするから止めてほしいな……わし、もう若くないんだから……

  • ラティーファ

    あれだけダンスできれば大丈夫よ。

    それより、ちゃんとアシームは休暇を満喫してる?休暇という名の部屋の掃除とかさせてないでしょうね。

  • シャバーン

    うすーい信頼関係……わし、泣いちゃう

  • シャバーン

    そんな酷いことするわけ無いだろ!わっ、わしがどんだけ日頃あいつに優しく接してると思ってるんだ!

    ねぇ、皆さん。そう思いません?ハイ、シャバーンが優しいと思う方手を上げてください

  • パラパラっと上がる手。しかし、ほぼ挙がっていない。

  • シャバーン

    ……皆さんはシャバーンへの理解力がまだまだ浅いなぁ!
    ははははは、ははは……はは……はは……

  • 一縷の望みをかけてラティーファにすがるような顔で視線を送るシャバーン。しかし彼女はフツーに観客へファンサ中。
    ずっこけるシャバーン。

  • シャバーン

    ……って、なんでお前は手を挙げてないんだ!!

  • ラティーファ

    え。

    なんで私が、あなたの嘘に加担しなきゃいけないの?

  • シャバーン

    うーそ!!?

    ……頼むって。今度可愛いブレスレット買ってあげるから。

  • ラティーファ

    要らないです。

  • シャバーン

    えーん

    シャバーン困っちゃう

  • ラティーファ

    強いて言うなら……
    アシームにちゃんと感謝の言葉を伝えるって約束するなら、手を挙げても良いわよ

  • シャバーン

    はぁ!?なんでわしがそんなことをせねばなら……

  • ラティーファ

    みーなさーん!
    シャバーン様はねぇ〜!いつもアシームに脱ぎっぱなしの洗濯物を……

  • シャバーン

    ごめんなさい許してください何でもします麗しのラティーファちゃん

  • ラティーファ

    ……麗しは要らないけど、許してあげる

  • シャバーン

    ほっ……

    あっ、そうじゃない。ちょうどよかった。お前にちょっと頼みたいことがあってな。

  • シャバーンがラティーファに一通の果し状を見せる。

  • ラティーファ

    げっ……このタイミングでマジック対決!!?
    これ、どうするつもりなの?

  • シャバーン

    今から助手を探すしかないな。セルフマジックするわけにもいかんし。

    ……というわけでラティーファ、どこかに知らんか?無償でダンスもマジックも出来るヤツを。

  • シャバーンの視線が左側……ラティーファに注がれる。そしてラティーファも左側を向く。適当にゲストを指し示して納得。

  • ラティーファ

    ああ、あのお兄さんね。
    お兄さん、どう?協力してくれる?

  • シャバーン

    あのね、ラティーファちゃん。こっち向いてください。

  • ラティーファ

    お兄さんならきっとできる!……たぶん出来る。

  • シャバーン

    ラティーファちゃん?

  • ラティーファ

    ささ、早くどうぞ!

  • シャバーン

    ラティーファっ!!

  • ラティーファ

    何よ。スカウト中なんだから静かにしてて

  • シャバーン

    わしは……その……おっ、お前に出て欲しいんだ!

  • 沈黙。
    ようやく事態を理解し、ラティーファが胸を両手で押さえてバックステップする。

  • シャバーン

    わしにこんな恥ずかしいことを言わせるなんて……お前のせいだからなっ!

  • ラティーファ

    (そっぽを向いて)
    ……いいよ。

  • シャバーン

    ほ、ホントか?
    ありがたい!これで今年こそ、フリードとクロちゃんに勝てるぞ!!

  • ラティーファ

    ……クロちゃんは全く別物だからなんとも言えないけど、ハディー・フリードにはさすがに……

  • シャバーン

    そうと決まれば、さっそく練習だ!
    さ、ラティーファ。まずは箱に入ってみよう!

    一度、お前を箱詰めして閉じ込めてみたかったんだ!うふふふふ

  • ラティーファ

    こっ、怖い……

  • 珍しくシャバーンの発言に引いているラティーファ。後退りする彼女と、シャバーンは強引に手を引っ張って退場。

  • ラティーファ

    やっぱ考え直させてええっ!!!(断末魔の悲鳴)

  • 対決当日
  • 広場に続々とマジシャンが集まる。まずはクロちゃんが入場。

  • クロちゃん

    はーい!皆様どうも。黒魔術師のクロちゃんです。

    今日は私の黒魔術で、あの二人を倒してみせましょう!少なくともシャバーンは倒せる自信があるぞぉ!

  • 続いてフリードたちが登場。

  • フリード

    アラビアンコーストの皆様、どうも。ハディー・フリードでございます。

    今日こそは、この手でインチキマジシャンたちを取り締まりますよ。

  • レイハーネ

    シャバーン様とも今日でお別れね……悲しいなぁ

  • ナウラ

    居なかったら居なかったで、寂しそうな人よね。
    それより、ダンス対決なら絶対に負けないわ!

  • フリード

    あれ、クロちゃん。君……

  • クロちゃん

    はい?

  • フリード

    私からアシスタントを借りること前提で、対決に来ないで欲しいんだが……

  • クロちゃん

    てへっ

  • フリード

    (ため息)……仕方がないな。

    レイハーネ。今回もクロちゃんのアシスタントを務めてくれ。

  • レイハーネ

    はーい!

  • そしてシャバーン登場。

  • シャバーン

    はーっはっはっはっはっ!

  • クロちゃん

    また笑いながら登場してる。

  • フリード

    ……重役出勤だな

  • シャバーン

    当然だ!おまえたち、私に負かされるためにわざわざご足労ご苦労さま!

    何しろ、私は偉大なる真のマジシャン・シャバーン様だからな!

  • フリード

    一体、どこからその自信は出てくるんだ……

  • クロちゃん

    ある意味すげぇ……

  • シャバーン

    いやいや、それほどでも……

  • フリード

    褒めてないぞ。

    ところで、今日はいつものアシスタントが居ないようだが……

  • クロちゃん

    ごめん、レイハーネは私と組むから。

  • シャバーン

    はははっ!
    そんなもん、このシャバーン様にとっては想定内だ!

    ……さぁ、今日限定のアシスタントよ!こいつらにお披露目してやりなさい!

  • ダンスミュージック(♪ひと足お先に)とともに、シャバーンとペアルックの衣装を着たラティーファが登場。

    エネルギッシュなダンスを披露してくれる彼女に、会場から拍手が起きる。残りの全員は呆気にとられている。
    途中でシャバーンもダンスに加わり、カオスな現場と化す。

  • クロちゃん

    あれ、誰。

  • フリード

    ……見たことがあるが、誰だっけな……

  • レイハーネ

    私たち以外に踊り子がいるっていうの!?

  • 適度に踊り終え、ラティーファが華麗にお辞儀する。シャバーンにエスコートされるが、逆に彼を抱えて倒してしまう。
    「腕力!!」や「かっこいい!」という客席からの声。

  • ラティーファ

    本日限りシャバーン様のアシスタントを務めます、ラティーファと申します。
    以後、お見知りおきを。

    さて、ハディー・フリード!
    今日のうちのシャバー様は本気なので、驚かないでちょうだい!

  • ナウラ

    今まで本気じゃなかったんだ……

  • フリードとラティーファの間で火花が散る。
    ……が、やはりフリードは彼女に見覚えがあるらしい。

  • フリード

    ……お前、本当に踊り子なのか?

  • ラティーファが一瞬動揺する。シャバーンは彼女の正体がばれないように、必死で言い訳を考える。
    姿勢は相変わらず倒されたままである。

  • シャバーン

    あっ、あっ、あーたり前だろ!
    こいつはわしの、自前の踊り子だっ!

  • クロちゃん

    自前って何……自前じゃない踊り子って何?

  • フリード

    クロちゃん、それは君のような人だと思うけど。
    いや、それよりそういう所有物じみた言い方はよくないんじゃないか。

  • もちろん、言い方を改めるつもりのないシャバーン。むしろラティーファを見せびらかしてなんだか嬉しそうだ。

    しかし、流石に体勢に無理があるらしく、彼は助手の肩を叩いた。

  • シャバーン

    お、おい。ラティーファ、もういいから。姿勢を元に戻してくれ。腰が痛い。

  • ラティーファ

    あら、ごめんあそばせ

  • 戻し方のかっこよさに、思わずレイハーネとナウラが感動の声をあげる。

  • フリード

    さ、ではシャバーンの腰が破壊される前に対決を始めよう。
    ……ってシャバーン、大丈夫か?

  • シャバーン

    普段使わない筋肉使ったからね……

  • ラティーファ

    大丈夫!?

  • シャバーン

    だーいじょうぶ!大丈夫!……ちょっとテンション上げすぎたかも。

  • ラティーファ

    いいのよ、それより少し休んでちょうだい。

    フリード殿、申し訳ないけど最後にしてあげてほしいの。構いませんか?

  • クロちゃん

    じゃ、じゃあお先に……

  • フリードの後は気が引けるので、先に始めたそうなクロちゃん。彼らが黒魔術(?)を準備していると、客席からアシームが現れる。

  • アシーム

    あれ?シャバーン様とラティーファ様だ!

    何やってるんだろ。え、マジックバトル?それじゃあ、僕も応援しなきゃ!

  • クロちゃん

    では、今から私がこのコマを黒魔術で宙に浮かせましょう!

  • どう見ても、大道芸のコマと紐が出てくる。ラティーファはシャバーンを扇ぎながら、初見の反応をする。

  • ラティーファ

    ねぇ、あれって黒魔術なの?

  • シャバーン

    いや、違う。

  • ラティーファ

    ……それは肩書としてどうなの?

  • シャバーン

    アウトだな。

  • フリード

    ああ。相変わらず黒魔術でもないし、何ならマジックですらないな。

  • クロちゃん

    三人とも、聞こえてるよ!
    あと、シャバーンとラティーファ、なんか君たち距離が近いよ!

  • ラティーファ

    えっ!?

  • 大きな声を上げて、ラティーファが遠くに消えていく。ナウラとレイハーネから、「本当にただアシスタントなのかなぁ?」という邪推が上がる。

  • フリード

    怪しいな。お前たち、本当は……

  • シャバーン

    えっ、あら、そんな風に見えちゃう?
    そうそう、実は……

  • ラティーファが、シャバーンの首根っこを掴んで代わりに回答する。

  • ラティーファ

    1日限りのアシスタントです。其れ以上でも、其れ以下でも無いわ

  • クロちゃん

    なんか、ますます怪しくない?
    ってかシャバーン、なんかダメージ受けてない……?

  • シャバーン

    ただのアシスタント……ただの……

  • フリード

    さ、さて。元気のないシャバーンは置いておいて、私からちゃんとしたマジックを披露しよう。

  • シャバーン

    グサッ……

  • 悲しみのあまり、シャバーンがのけぞる。ラティーファはすかさず傍に駆け寄ると、優しく背中を擦っている。

  • レイハーネ

    ……やっぱりあの二人、何か変よ

  • ナウラ

    そうねぇ。
    なんか……ラブを感じるわね

  • ラティーファ

    博愛の精神です

  • シャバーン

    ズキーン

  • さて、フリードの準備が整ったらしい。彼は新作の高難易度なマジックを披露すると、たちまち万雷の拍手を受けた。
    この後にパフォーマンスするのは、かなりハードルが高そうである。

  • フリード

    さて、最後はシャバーン。お前だぞ。
    今日インチキなことをしたら、お前を即刻逮捕する

  • シャバーン

    えーっ!!!!(爆音)

    わしまだ思い残したこともやり残したこともいっぱいあるのにぃ!!?理不尽!りふじーーーん!!

  • フリード

    うるさいなぁ

  • ラティーファ

    シャバーン様、ここは練習の成果を見せないと。私が全力で協力するわ

  • シャバーン

    うえーん、ラティーファ……わしが逮捕されたら毎週会いに来てくれるって約束してくれ……

  • すっかり気弱なシャバーン。ラティーファがすかさず、その背中をバシーンと叩く。

  • ラティーファ

    なーに気弱になってるのよっ!!
    さっさと始めるわよ。

    獅子も幼獣で生まるるって言うでしょ!

  • クロちゃん

    つ、強い……

  • フリード

    その言葉……やはりどこかで……

  • 首を傾げるフリードを置いて、ラティーファが何かを耳打ちする。途端に元気になるシャバーン。一体何を話したのやら。

  • シャバーン

    それを早く言わんか!

    よーし、わしの大魔術を見せてやるぞ!!ミュージック・スタートー!!!!!

  • クロちゃん

    大丈夫?
    なんか無理な約束してない?

  • ラティーファ

    心配には及ばないわ、でもありがとう!

  • ♪アラビアンコーストのテーマ
  • ラティーファのダンスがスタートする。シャバーンが自信満々に呼んできただけはあり、かなり上手い。エネルギッシュであり繊細でもあり、それでいて優美で気品溢れるダンスを見せてくれる。

  • フリード

    ダンス「は」、良い感じだな。

  • クロちゃん

    まだマジックじゃないからね

  • ナウラ

    わーっ、なんだかすっごく……エレガントな感じね

  • レイハーネ

    そうね。
    なんか、貴族っぽい。

  • 音楽が終わり、ダンスも終了する。入れ替わるように、準備を済ませたシャバーンが登場。

  • シャバーン

    さて、それではわしのマジックをご覧ください!

    まずは、種も仕掛けもないアラビアの布を……

    アラビアの布を!!

    アラビアの布を!!!!!

  • ラティーファ

    はいはいはい!
    (小声で)……順序がリハと違う。

  • シャバーン

    えっ、そうだったっけ?
    ま、いいや。

    では、この布を使って、今から不思議な大魔術をお届けします!
    今日は素敵なわしのよ……

  • ラティーファ

    臨時アシスタントの。

  • シャバーン

    ……そういう設定でした。

    失礼しました、この臨時アシスタントのラティーファちゃんに、可愛いお花をプレゼントしたいと思います。

  • そう言うと、シャバーンの布から突然白い百合の花が出てきた。彼の得意なマジックの一つである。

  • ラティーファ

    わぁ、すごい!
    やれば出来るじゃない!

  • シャバーン

    わしはいつでも完璧だよ。

    さて、このお花を……ってあれーっ!!?枯れちゃった!!

  • ラティーファ

    あらら。

  • シャバーン

    しかし、心配なさらず。ここでアシスタントを叱責するのは二流、三流のすること!
    なぜなら、このシャバーンは一流マジシャンです。超一流!はい!超一流!ご一緒に、さんはい、

  • ゲストに超一流を復唱させるシャバーン。

  • フリード

    早く続きをしなさい。逮捕するぞ

  • シャバーン

    はいはい。

    では、このお花にラティーファちゃんへの感謝を込めて……♡

    アーブラカタブラッ!!(爆音)

  • フリード

    うるさいなぁ。

  • しかし、うんともすんとも言わないお花。枯れたままである。なんとなく見ていたアシームも、心配そうに近づいてくる。

  • クロちゃん

    ……感謝が足りないんじゃないの?

  • シャバーン

    んな馬鹿な。感謝と一緒に、わしの愛を……

  • フリード

    では、逮捕でいいな。

  • シャバーン

    だーっ!!たしかにリハーサルの時はちゃんと戻ったの!止めて!ラティーファっ、助けて!!

  • 後ろの方でシャバーンが叫び声を上げる。ラティーファは花を受け取って、いろいろ触ってみるが、使い方は正しそうだ。だが、どうも仕掛けがうまく動かないらしい。ふと、彼女はアシームの姿に気づく。そしてシャバーンとフリードの間に割って入り、こう言った。

  • ラティーファ

    わかった!たぶん感謝を言うべき相手を間違えてるのよ。
    シャバーン様。1日限りのアシスタントなんかより、もっと感謝の言葉を伝えなきゃいけない人がいるはずよ。

    ……もし、その人がステージに上がってくれるって言うなら。

  • ラティーファがそう言うと、アシームは恥ずかしそうにみんなの前に現れた。
    シャバーンは照れくさそうだ。

    彼はしぶしぶ花を持つと、アシームに向き直ってこう言った。

  • シャバーン

    アシーム。いつも……あり……がとう。

    わしとお前は色々あったけど……わしのアシスタントはお前じゃなきゃダメみたいだな。
    休暇が終わったら、また一緒にマジックをやろう。

  • アシーム

    シャバーン様……

  • アシームに花を渡す瞬間、枯れていたはずの花が元に戻る。それどころか、光り輝くキラキラがその場に舞う。

  • ラティーファ

    ……めでたし、めでたし。

    さ、これでシャバーン様を捕らえるのは無しでいい?

  • フリード

    ああ、そうだな。

    しかし、お前やっぱりどこかで見たことが……

  • ラティーファ

    私はラティーファ。謎多きアグラバー1の踊り子。
    そんな感じに覚えておいて

  • ラティーファが、そっと退場しようとする。
    その様子を見ていたクロちゃんが、シャバーンに声を掛ける。

  • クロちゃん

    あのー、シャバーン。
    彼女、帰っちゃうよ

  • シャバーン

    えっ!?
    あーっまてまて!ちょっと!

    お前にも渡したいものがあるんだ

  • そう言うと、シャバーンはアラビアの布をクシャクシャに丸めた。そして次の瞬間、手の中から綺麗な青色のベールを取り出して彼女の頭に載せた。
    珍しくシャバーンの大成功しているマジックに、フリードやゲストたちは拍手をしている。

    しかし、最後の一言で良い雰囲気が結局ギャグになってしまう。

  • シャバーン

    はい、これでわしとお揃いカラー

  • アシーム

    (シャバーンを放置して)ラティーファ様に、シャバーン様。本当にありがとう!

    分かってくれました?僕の苦労。

  • ラティーファ

    ええ、当分アシスタントはこりごり。少なくとも、あなたが必要よ。アシーム。いつも、本当にありがとう。

  • フリードは微笑むと、クロちゃんたちに何かを言ってから前に歩み出た。

  • フリード

    ……こんなに良いマジックを見せてもらったお礼に、最後はみんなでゲストの皆様をおもてなししないか?

  • シャバーン

    えっ、じゃあ逮捕は無し?

  • フリード

    そうだ。まったく、つくづく運のいいやつだ。

  • シャバーン

    やったー!!

  • 子どものように飛び跳ねて喜ぶシャバーンに、苦笑いするアシームとラティーファ

    ラストはゲストを巻き込んだフリードのカード選びマジックで、ショーが幕を閉じた。

  • フリード

    みんな、ありがとう。今日はそうだな……日頃感謝を言えていない人に「ありがとう」を言うことにしようか。ゲストの皆様、ナウラ、レイハーネ、クロちゃん、アシーム、シャバーン、ありがとう。

    そして……ええと……君は……

  • ここでクロちゃんが何かを思い出す。シャバーンが誤魔化そうとしたが、遅かった。

  • クロちゃん

    あーっ!ラティーファって子、思い出した!
    ハイサム前国務大臣様の娘さんだ!

  • フリード

    なるほど、だからハイサム様の御言葉を……

  • レイハーネ

    お嬢だったんだ

  • ナウラ

    なんか、納得。

  • 一線置かれた空気感に、ラティーファが苦笑いする。

  • ラティーファ

    あはは……

    ……ええと。
    でも、今はただのラティーファ。だから、これからもみんなと仲良くしても……

  • ナウラ

    もちろん!アシームの友達なら、私たちの友達だよ!

  • レイハーネ

    ラティーファ可愛いー!!

  • ラティーファ

    みんな、ありがとう……!

  • ナウラとレイハーネがラティーファに抱きつく。外の世界で初めて友達が出来た彼女は、嬉しそうだ。
    そこにアシームも加わり、四人は仲良く手を繋ぎながら退場していく。

    退場時、ラティーファが一瞬シャバーンの方を向くが、彼は優しい笑顔で「行ってこい」のジェスチャーで返した。

  • クロちゃん

    じゃ、私達も行きますか

  • フリード

    そうだな

  • シャバーン

    手繋いで?

  • フリードとクロちゃんは揃って「それは嫌だ」と言う。三人は大笑いすると、結局仲良く三人並んで退場していくのだった。

  • End

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