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「綾彦さん本当にごめんなさい……」
「いえ、気にしていませんよ」
眉間にシワを寄せた綾彦さんを前に、気にしてるじゃないか…!とは言えず、僕はひたすら謝り倒すしかなかった。
身を粉にして働く日々の中で、僕と綾彦さんの休日が重なることはあまりない。本来であれば今日、久方ぶりに被った休みを共に過ごす予定だった。調整に調整を重ねてもぎ取った休日。それはもう浮かれていたし、綾彦さんだって少なからず同じ気持ちでいてくれたと思う。
そしてそれを他でもない僕がぶち壊しにしてしまったのだ。
「仕事ですから、しょうがないでしょう」
些か乱暴に背中を押され、玄関まで連れて行かれる。そう、綾彦さんと過ごす穏やかな休日の予定は砕け散り、穏やかとは程遠い休日出勤をしなければならなくなってしまったのである。
簡単に言えば、今度掲載する予定だった記事が関係者の不祥事により使えなくなってしまった。そのため前日の夜から泊まりに来てくれていた綾彦さんを置いて、急遽職場へ向かわなければならないのだ。
にも関わらず、内心どうあれ綾彦さんは一切僕を責めることなく仕事に送り出そうとするのだから、なおさら罪悪感で胸が締め付けられる。
「埋め合わせは必ずしますから」
「いえ、結構です」
ピシャリ。綾彦さんが半ば被せるように僕の言葉を一刀両断する。やはり、相当機嫌を損ねてしまったのだろうか。冷や汗をかきながら、こわごわと恋人の顔を見上げる。そこにはまさに般若と言わんばかり……とは遥かにかけ離れた、優しげな顔をした綾彦さんがいた。
「君をこうして見送るのは、中々気分がいい」
帰ってくるのがわかっているからでしょうか。
口元を緩ませた彼の言葉に、僕は空港で仲間たちに別れを告げたあの日のことを思い出す。あの時一番僕との別れを惜しんでくれていたのは、綾彦さんだった。
「絶対今日中に帰ってきます……!」
「是非そうしてください」
きっと、ヘトヘトになって帰宅した僕を綾彦さんは優しく出迎えてくれるのであろう。まるで結婚しているみたいだと浮つき、職場へ向かう足が軽くなっているのを自覚する。綾彦さんも同じ気持ちだったのかな。わからないけど、同じであればこれほど嬉しいことはないと思う。
「いえ、気にしていませんよ」
眉間にシワを寄せた綾彦さんを前に、気にしてるじゃないか…!とは言えず、僕はひたすら謝り倒すしかなかった。
身を粉にして働く日々の中で、僕と綾彦さんの休日が重なることはあまりない。本来であれば今日、久方ぶりに被った休みを共に過ごす予定だった。調整に調整を重ねてもぎ取った休日。それはもう浮かれていたし、綾彦さんだって少なからず同じ気持ちでいてくれたと思う。
そしてそれを他でもない僕がぶち壊しにしてしまったのだ。
「仕事ですから、しょうがないでしょう」
些か乱暴に背中を押され、玄関まで連れて行かれる。そう、綾彦さんと過ごす穏やかな休日の予定は砕け散り、穏やかとは程遠い休日出勤をしなければならなくなってしまったのである。
簡単に言えば、今度掲載する予定だった記事が関係者の不祥事により使えなくなってしまった。そのため前日の夜から泊まりに来てくれていた綾彦さんを置いて、急遽職場へ向かわなければならないのだ。
にも関わらず、内心どうあれ綾彦さんは一切僕を責めることなく仕事に送り出そうとするのだから、なおさら罪悪感で胸が締め付けられる。
「埋め合わせは必ずしますから」
「いえ、結構です」
ピシャリ。綾彦さんが半ば被せるように僕の言葉を一刀両断する。やはり、相当機嫌を損ねてしまったのだろうか。冷や汗をかきながら、こわごわと恋人の顔を見上げる。そこにはまさに般若と言わんばかり……とは遥かにかけ離れた、優しげな顔をした綾彦さんがいた。
「君をこうして見送るのは、中々気分がいい」
帰ってくるのがわかっているからでしょうか。
口元を緩ませた彼の言葉に、僕は空港で仲間たちに別れを告げたあの日のことを思い出す。あの時一番僕との別れを惜しんでくれていたのは、綾彦さんだった。
「絶対今日中に帰ってきます……!」
「是非そうしてください」
きっと、ヘトヘトになって帰宅した僕を綾彦さんは優しく出迎えてくれるのであろう。まるで結婚しているみたいだと浮つき、職場へ向かう足が軽くなっているのを自覚する。綾彦さんも同じ気持ちだったのかな。わからないけど、同じであればこれほど嬉しいことはないと思う。
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