空も風も
衝撃と、疑念と、焦燥と。
いろんな感情がぐちゃぐちゃになって居ても立っても居られなくなった。
その帰り道、俺は彼女に声をかけることを決めた。
いつもの、河川敷。
しかし彼女はいつものように座ってはいなかった。
中腰で、草むらで視線を動かしているように見えた。
「…なに、探してるの?」
当然振り返らない。
少しして、彼女は一輪の野花を見つけて摘み取った。
「あの…」
「俺、同じクラスの…」
そう言いかけて、彼女がしゃがみこんだ先に目がとまった。
土がやや盛り上がって―――
……あ
お墓…?
「もしかして…このあいだの、野良猫の……?」
そこで初めて、彼女は俺に目を向けた。
その動きが正解を意味していた。
初めてちゃんと見る琥珀の瞳――――
深く深くまで引き込まれる・・
「…あ、この前の…。俺、見てたんだ。君が亡くなった野良猫を抱いて行ってしまうのを。だから…」
興味なさげに、彼女は視線をお墓へと戻した。
「ここに埋葬したんだね」
…あの時のことは忘れられない。
人々が避けていた猫に近付いて行った行動の異彩さもあるが、なにより所作が命に対して真摯で…
思わずこちらの背筋も伸びるくらいだった。