空も風も
彼女は・・・一体どんな気持ちであの酷い嘲りを聞いていたのだろう。
なぜ、何も言い返さないのだろう。
誤解なのに。
もしかしたら、今までの噂も全部、誤解ではないのか――――
売春なんて根も葉もない噂にすぎなかったのだ。
そんなデタラメを2年以上も・・
しかも、みんなが信じ切っているなんて・・。
それから俺は、彼女を目で追うようになった。
彼女には苦しんでいる様子も、悲しんでいる様子も、周りをバカにしている様子も、無かった。
本当に何も感じてないみたいだった。
まるで心が無いロボットのような・・・
けれど、本当に心が無い人が、猫の死であんな表情をするだろうか。
―――気づけば、カガリ・ユラ・アスハという人物は、俺の心の中の大半を占めていた。
気持ちのいい風が通る、河川敷。
草野球をする少年の声が響く。
やはり、彼女はそこに座っていた。
…音楽、好きなのかな。
彼女がよく付けているイヤホン。
輝く金色の髪から覗く、黒色の。
どんな曲を聴いてるんだろう…。
そんなことを思いながらも、話しかけられない。
俺は今日も後ろを通り過ぎるだけだった。