Vivid Colors 第10話
翌朝、点滴が取れて退院できることになったカガリを
アスランは一人で迎えに来た。
カガリ自身、もう身体はなんともないのだが
いまいち素直になりきれなくて、つい俯きがちになってしまう。
今までだってこれ以上ないくらいアスランが好きだったのに、この数日で色々ありすぎて…
もうおかしくなりそうなくらい気持ちが大きくなってしまったのだ。
昨日も…結局アスランとはまともに話せなくて。
どうしていいかわからない。
「…行こうか、カガリ」
アスランはそっとカガリの手を取って歩き出した。
それだけでカガリの心臓の鼓動は加速する。
包まれる温かさに……もう涙が出そうだった。
しばらく手を引かれてアスランの半歩後ろを歩いているうちに、
カガリは向かう方向がおかしいことに気付いた。
「…アスラン? 私のマンション、こっちじゃない…」
「いいんだよ。俺の家に向かってるんだから」
「え…?」
アスランの…家?
「完全に回復するまで、カガリはうちで暮らすんだよ」
アスランは肩越しに振り返って、驚きの言葉をさらりと言う。
回復とは、体調はもちろんのこと、精神的なものも含まれていた。
以前のように…屈託のない笑顔が見れるまで。
「な、なんで……!?」
「心配で一人にしておけるわけないだろ」
当たり前だと言わんばかりに、アスランは少し真面目な顔つきになった。
確かにカガリは1人で倒れたが
まさか退院後にそんな話になるとは思ってもおらず、事態がまるで飲み込めない。
「でも…っ」
「キラにはちゃんと許可取ってるから、大丈夫だ。心配しなくていい」
「キラ…?」
訳が分からずうろたえているカガリを見て、アスランはふっとイタズラな微笑みを浮かべた。
「…カガリと一緒にいたいから、キラをうまく丸め込んだんだよ」