恋唄 第7話
例えば
高3の俺ならどうしただろうか
カガリがディアッカの部屋に居たとき…
きっと、即座にカガリの手を引いて連れ出した
そして戸惑うカガリを抱きしめて
「男の部屋なんか行くな」って言ったはずだ
今の俺は高3の俺にも負けてる
そんなんじゃ“あいつ”になんて勝てない
【恋唄 第7話】
『明日帰国する』
カガリにそうメールを送った後、俺は搭乗までの時間をフルにプレゼント選びに使うことになった。
「プレゼント貰ってほしい」とか打っておきながら、まだ決まってないのが我ながら情けない。
「やっぱアクセサリーだな! 女へのプレゼントはそれが鉄板だぜ!」
「もういっそ指輪にしちゃえよ~!エンゲージリング!」
「あ、でもサイズ分かんなくない? それなら腕時計とか」
「みんな分かってないな、女には花!これしかないだろ!」
「それ機内に持ち込むのか!?」
「…………あの、みなさん…;」
俺が1カ月間お世話になった、ラミアス教授の研究チームの面々だった。
みんな俺を見送るという口実で、面白がって付いてきているというのが明白だ。
しかもプレゼント選びが面白いというわけじゃなく、俺が片思いしてることを面白がっているのだ。
…日本にいる誰かさんたちと同じだ。
「アクセサリー、私も悪くないと思うわ! 私も昔ロケットペンダント貰ったことがあってね~!」
ラミアス教授まで楽しそうに参加している。
「ですから、あの、俺の場合、恋人じゃないんで…アクセサリーはおかしくないですか…?」
「「「ああ、片思いなんだっけ!!」」」
チームの声が高くハモった。
「なんでみんなそんなに面白がるんですか…。片思いって珍しいですか?」
俺は不満げに呟いた。
恋人がいない人のほとんどは片思いしていると思う。
「いやーそういうわけじゃないけど。ザラ君って完全無欠だと思ってたからさー」
「そうそう。片思いって聞いてなんか親近感がわいたというか」
「……完全無欠なんかじゃありませんよ…」
俺にとって完全無欠な存在は―――
…カガリの兄だ。