恋唄 番外編Ⅲ(完結)



カガリがアメリカに来て約1ヵ月半がたった。

環境も、勉強も、俺たちの関係も
いろんなことが日本にいた頃とは違う毎日。



唯一、うちのソファで身体を密着させる…という光景は以前と変わらなかったりするが、

今寄りそってきているのはカガリ。
固まっているのは俺。


俺たちは、すっかり立場が逆転していた。







【恋唄 番外編Ⅲ】







――3時間前――


「じゃあ、お疲れ様です…っ」

俺はコートを片手に急いで研究室を飛び出した。


「おつかれさんー」

「おーおー、そんなに慌てちゃって。さては今からデートかぁ」


後ろから聞こえてくる冷やかしは、アメリカでの研究仲間だ。
前回俺がアメリカに来たときのチームと同じで、つまり…片思いであることを散々いじってくれた面々だった。
その延長で両想いになった今でも俺は遊ばれている。

「今度ここにも嫁さん連れてこいよー!」

最後にとんでもないワードが聞こえたが、俺は振り向かず廊下を走った。



嫁って…。
なんだかものすごい認識の違いを感じる。

そういう呼称は、毎日ベッドを共にできる状況になって初めてそう言えるんじゃないだろうか。
ディアッカとミリアリアのような。
俺とカガリは2~3週間に一度、しかもこれまでにたった二度しか過ごしてないというのに…!

朝まで一緒に過ごしたことも、まだない。
カガリがここに来た初日もちゃんと夜に帰した。

この現実と、周りの認識とにギャップがありすぎて頭が痛くなってくる…。



―――“三度め”となるはずだった日は、突然のキラの出現で潰れてしまった。
(カガリは兄に怒っていたけど、兄妹そろって何も知らせず海を越えてくるなんて、血の繋がりは侮れないと思う。)

それから俺はまた2週間、悶々と肉体的苦痛を伴う日々を過ごして…

それが今日突然、予定されていた実験が中止になって午後からオフになった。
あまり急すぎるとカガリの方が空いてないこともあるが、さっきメールを送ったら大丈夫だと返事が返ってきたところだった。




「…アスラン!おつかれ!」

いつもの図書館前。
外壁にもたれかかって本を読んでいたカガリが、顔を上げて眩しい笑顔を見せてくれた。

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