朧月 ~1週間後~
その日、キラは大学の中庭で親友を見かけた。
すみっこで座り込んで、この世の終わりみたいに項垂れているアスランを。
「……なんか、ついこないだも見た光景だなあ」
やれやれ…と溜め息をついて、キラは近づいていった。
【朧月 ~1週間後~】
「なに? 愛しのお姫様とケンカでもしたの?」
アスランが長年のすれ違いからようやく彼女と想いを通わせたということは、キラも知っている。
数日前にはアスランの家に突撃して、幸せそうな二人にも会って来たばかりだ。
しかし今、積年の想いを遂げた親友がなぜか落ち込んでいるのだ。
「一応きみより恋愛経験ある身として、アドバイスくらいはできるよ」
「……」
「言ってみなよ」
「だめなんだ……もう…」
その死にそうな声を聴いて、さすがにキラも焦った。
「え…、なに……まさか別れるとか―――」
「カガリが可愛すぎて……」
「え˝」
「どうしても手が止まらない……」
予想もできない発言にキラはあっけにとられ、思わずずっこけそうになった。
「え……、えええ~……」
いや、アスランが真面目に言っているということは分かっているのだが。
惚気なのか悩みなのか判別がつかないキラは、どう反応していいか分からなかった。
しかし…この男がまさかこんなことを言うようになるなんて。
なかなか感慨深いかもしれない。
「あー…、少しでも心配した僕がバカだったよ」
一番の親友として、口元を抑えながら苦笑した。