Vivid Colors 第1話



目が覚めて、またいつものように淡々とした一日が始まるんだと思った。
色も温度もない…無機質な一日が。

いや。それどころか、
その日は朝からついてなくて最低最悪の一日になるんだとさえ思った。




でも… 君に出会えた。




俺の世界が180度変わったあの数十秒は、“鮮烈”だった――――






【Vivid Colors 第1話】





AM 7:05。

ほんともう…なんでこんなことになるんだ。
朝練の集合時間まであと15分、カギ当番の俺が遅れたら話にならない。
かと言ってこの状況――――




八方塞がりとはまさにこのことだ。

早朝の誰も通らない通学路で、アスランは一人頭を抱えながらしゃがみ込んでいた。
もうこの状態でかれこれ5分はたつ。

学年主席の完璧な頭脳が今は全く役に立たないようだった。
いつもは機械のように平静な男だが、今の彼はめずらしく年相応である。



アスランが今置かれている状況。
それは、朝練に向かう途中で部室のカギを側溝の穴に落としてしまったのだ。
ポチャンと泥水に落ちる音がアスランの耳にはしっかり聞こえた。
しかもその穴は自分の手の厚みより一回り小さい。
拾おうにも手の甲のところで止まってしまう。


あと少しで届くのに……。
もうどうしようもない。




―――その時。




「なんだ? お前、具合悪いのか?」


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