海の向こう 前編
―――忘れられない…キスがある。
きっと
ずっと。
【海の向こう 前編】
左右に広がる海岸線。
それに沿って長く続く堤防を、カガリは制服姿で飛び降りた。
大海原は夏の陽を反射して、宝石のように輝いている。
しゃがみ込んで砂を一握り。
「タイムマシン、欲しいな……」
さらさらと手から落ちる砂を見ながら呟いた言葉は…朝の清々しい空気の中に消えた。
・・・この海だけは、ひとつも変わらない。
アスランと一緒に・・無邪気に見ていたあの頃と――――
「カガリ」
ぼーっとしていると、後ろから心地のいい声が聞こえた。
出逢った頃よりは少し低くなっていて、それでもずっと、大好きな声。
振り返って見上げれば、堤防の向こう側から
少し呆れたように笑って顔を出す人物がいた。
「何してるんだ、バス来るぞ」
「…おはよ、アスラン」
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